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豊島将之九段、銀損の猛攻! 藤井聡太王位、しのげるか? 王位戦七番勝負第1局開始

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 6月28日。愛知県犬山市・ホテルインディゴ犬山有楽苑において第63期お~いお茶杯王位戦七番勝負第1局▲豊島将之九段(32歳)-△藤井聡太王位(19歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 本局の記録係は折田翔吾四段。七番勝負開幕前に先立ち、折田四段が振り駒をした結果、表の「歩」が2枚、裏の「と」が3枚出て、先手は豊島挑戦者と決まりました。

「定刻になりました。豊島挑戦者の先手番でお願いいたします」

  朝9時、立会人の小林健二九段が声をかけて、両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間各8時間、2日制の対局が始まりました。

 豊島九段は初手、飛車先の歩を突きます。対して藤井王位はいつものようにお茶を飲んだあと、いつものように、飛車の前の歩を一つ進めました。

 戦型は角換わり腰掛銀に進みました。38手目、藤井王位は中段に桂を跳ねて先に動きます。対して豊島九段はその桂を腰掛けている銀で取り、その桂を藤井玉の上部に打ち捨てました。驚くよりない、銀損の攻め。1日目午前にして、すでに盤上は中盤も跳び越し、終盤にも見えるような状況になっています。豊島九段の時間の使い方からして、準備周到な予定と見るのが自然でしょう。

 48手目。藤井王位は下段に桂を打って、自玉の上部をケアします。12時30分、昼食休憩に入りました。

 前日の記者会見。両対局者は次のように語っています。

藤井王位「前期の王位戦を振り返ると、結果は幸いしましたが、内容としては押されている、苦しい将棋が多かったのかな、というふうに思っています。今期はそのことを踏まえて、よりよい内容にしていかなくてはいけないのかな、というふうにも思っています」「調子がいいかわるいか、というのは難しいですけど(笑)。これからまた、明日から王位戦も始まって、徐々に対局も増えてくると思うので、それに向けてしっかりコンディションを維持して戦っていきたいなというふうに思っています」「今年もまた王位戦七番勝負、愛知県からのスタートということでうれしく思っています。同じ愛知県出身の豊島九段との対戦ということで、やはり地元のファンの方に大変多くご注目していただいていると思いますので、その期待に応えられるような将棋、またシリーズにできればというふうに思っています」「豊島九段とは昨年、王位戦や叡王戦、竜王戦のタイトル戦の番勝負で対戦する機会があって。その中でいろいろな課題が見つかったと思うので、今回の王位戦七番勝負でそれを、そういった見つかった課題をいかしていきたいなと思っています」「(7月19日に誕生日を迎えると20歳)二十代になるということで。二十代の半ばぐらいまでの期間というのは本当に、すごく大事な時期なのかな、というふうには考えているので。引き続きしっかり取り組んでいきたいな、というふうに思います」

豊島挑戦者「(藤井王位の印象は)一番感じたのはやはり中終盤の読みの正確さですけど。序盤戦術も非常に新しいものをうまく取り入れて指されているという印象です」「去年に続いてですけど、自分としては今年が始まってからまた新しい気持ちで将棋に取り組んでいて。タイトル戦に、無冠になったので出れるかどうかもわからない状況で。出れるとしても、もうちょっと時間かかるのかな、というふうに思いながら取り組んでいたんですけど。こうして、またタイトル戦に出られることになって、うれしく思っているので、それを盤上に出していって、自分なりにせいいっぱい指して、いい勝負ができたらというふうに思っています」「タイトル戦は特別な緊張感はあって、そういうのは感じています。まあでも(前年の竜王戦以来)わりと半年で出られたので。前に20歳のときに王将挑戦をして、そのあとしばらくタイトル戦に出られなかったので。そのあとで王座戦に出たときにはなんか、けっこう場の空気に慣れるまでに最初の方は時間かかってしまったんですけど、そういうことはなく指せるのかな、というふうに思っています」「弟子(岩佐美帆子女流2級)を取って自分もしっかりしないと、という気持ちになりましたし。あとそうですね、師匠(桐山清澄九段)は本当に、引退にはなってしまったんですけど、最後まで闘志を持って戦われている姿を見て、そちらも、自分ももっとよりいっそうがんばらないとな、という気持ちになっていて。まあでも、それがすぐに結果に反映するとも限らないですけど。モチベーションは高く将棋に取り組めているのかな、というふうには思います」

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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