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大学キャンパスの全裸講師依願退職:心や脳の問題を抱える人へのケアとサポート

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

■大学キャンパスに全裸講師 なぜ?

8日午後、キャンパス内で講師が全裸でいるところを発見され、同大学の職員らに保護されたという。講師は深く反省をしており、同日退職届を提出。大学側も受理した。詳細は現在調査中、としている。〜

飲酒や危険ドラッグの服用などは認められなかったため、警察には通報しなかった。大学側は講師について「勤務状況はまじめで、学生の対応も丁寧だった。これまで、学生などから苦情などが来たことも一度もなかった」と〜

出典:大学キャンパスに全裸講師 なぜ? スポーツ報知 1月10日

このニュースに下記のようなオーサーコメントを書きました。

彼の行為は、責任が問われて当然である。しかし、原因は不明。趣味でもなく、性的意図があったわけでもなく、ジョークでも芸術でもなく、アルコールでも薬物でもないようである。学生に強要されたといった噂も真偽不明である。

可能性として、何らかの「精神的な問題」がからんでいたとも考えられる。いずれにせよ、調査終了前に退職で良かったのだろうか。今回は非常勤職だったが、常勤職のまじめな会社員、公務員、教員等が、突然このような原因不明の行動を起こすこともある。多くは今回同様の依願退職だろう。

しかし、診断名がつくような心や脳の問題が潜んでいることもある。加害者側には社会的責任があり、ショックを受けた被害者保護も大切だ。だが、単に犯罪者として責めるだけで良いのだろうか。「ケア」の側面も、忘れてはいけないのではないだろうか。

(碓井 真史2015/01/10 13:09)

*続報を受けて、ページをアップしました。「大学講師、女子学生の要求で全裸に:パーソナリティの偏りと人間関係の歪み」2015/1/10/22:55)

■突然違法行為をする人々

今回の報道以外にも、まじめな中高年の人が突然の万引きしたとか、裸になったといったニュースは時おり聞かれます。公務員や教員等は、特に大きく報道されます。全国ニュースで実名報道されることもあります。犯罪行為自体は大きなものではなく、起訴猶予で減俸処分程度ですんだとしても、大きな話題になってしまえば、依願退職ということにもなるでしょう。

以前、ある女性市会議員が万引きで捕まり、辞職するということがありました。しかし、この人はとてもまじめで誠実な人であり、万引き行為も、商品を隠すこともせず手に持ったまま店外に出ようとしたものでした。

辞職後に判明したことですが、実はてんかんの小発作を起こした上での行為でした。少し寝ぼけたような、ぼうとした状態になり、商品を選んでいる最中にそのまま店外に出てしまったわけです。このケースは、本当に辞職が必要だったのでしょうか。

高齢者の万引き事件では、ある種の認知症がからんでいることもあります。万引きで社会的生命が失われてしまう中高年もいますが、仕事や日常生活を続けながら、実は認知症を発病していたケースもあります。

窃盗よりも、性犯罪の方が、さらに大きな報道や責任追求につながるでしょう。統合失調症のために屋外で全裸になってしまう女性などもいますが、ただこの場合は、明らかに普通ではないと分かりますから、実名報道されることはないでしょう。

通常の仕事を続けていたまじめな中高年男性が突然街中で裸になったりすると、今回のような騒ぎになります。公務員、教員などは、特に大きく報道され、強く責められます。

もちろん公務員でも教員でも公然わいせつ罪を犯す人はいます。未成年者買春で逮捕される人もいます。しかし、人前で裸になったとはいえ、どう考えても意図的犯罪とは思えないケースもあります。認知症でもなく統合失調症でもないのですが、単なる悩みといったことを超えた何らかの心(脳)の問題が潜んでいたと考えられるケースもあるでしょう。

■心病む人へのケアとサポート

今回のケースは、原因不明ですが、心や脳の問題から心ならず違法行為をしてしまう人々がいます。

もしもある男性が、体の不調で気を失い、その時に隣の女性に抱きつく形になったらどうでしょう。女性はびっくりするでしょうが、でも男性が性犯罪者として責められることはないでしょう。体の病気はわかりやすいからです。

しかし心や脳の不調の中には、とても分かりにくいものがあります。行為自体をみれば違法、不道徳、破廉恥なことでも、その意図はなく、本人にもどうしようもないこともあります。

病んでいれば何をしても良いわけではありません。しかしそれでも、病んでいる人に必要なことは、理解とケアとサポートではないでしょうか。

*続報を受けて、ページをアップ。「大学講師、女子学生の要求で全裸に:パーソナリティの偏りと人間関係の歪み」2015/1/10/22:55)

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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