【名古屋の和菓子】紫幹翠葉。「蕨餅と抹茶」を、坪庭の四季と共に召し上がれ。
愛知県名古屋市は、東西の和菓子文化が絶妙に交差街だと私は思っております。西からの洗練された佇まいや味わい、東からのほっと肩の力が抜けるような甘味と日常に寄り添ってくれるような温もり。その双方どちらも楽しめるだけではなく、お店ごとにどちらの文化も取り入れた和菓子を世に送り出しているように感じられるのです。
その中でもこの季節になると、一層美味しく感じられるのが蕨餅。
蕨餅と申しましても、名古屋の老舗和菓子屋さんのわらび餅は「丸型・きな粉・包餡」というスタイルが多く見受けられるような気がします。賽の目や三角形にカットされた蕨餅に黒蜜やきな粉をかけていただくものではなく、練り切りなどの上生菓子と共に販売されているお店が多数。
その蕨餅を、美味しいお薄(抹茶)と一緒に、静謐な空間でいただくことができたら…なんて願いを叶えてくださるお店のひとつが、昭和3年創業の和菓子屋「むらさきや」さん。オフィス街と繁華街の境目あたりに立地する栄駅からもアクセスしやすいお店で、随所に活けられた四季折々の花たちに心を和ませてくれるような店内も魅力のひとつ。
今回は「蕨餅」とお薄を、お店奥の茶寮にて頂いたのでご紹介。
こんもりと腰高のフォルムが印象的なむらさきやさんの蕨餅。全ての粒子が隙間なくぴたっとその肌に吸いつき、研ぎ澄まされた形ながら温かみも感じられるような気分に。
腰高の秘密は、きゅっと詰まった粒餡。しゃきっとした皮の食感、そして主張しすぎないきな粉の薫香と大豆の味わいにより、重厚感とあっさりとした引き際の良いあんこを味わえてなんともまぁ幸せ。上質なわらび粉特有の、やや癖のある旨味を見つけて味わったあと、抹茶を一口そしてまたわらび餅をぱくり。日本人に生まれてよかったと思うひとときに浸ることができますよ。
むらさきやさんの茶室から眺められるお庭は、手が入り込みすぎていない、自然な形を活かしたひとさじの野趣と、青々しい清涼感が漂う素敵な景観。そのお庭を眺めながらいただく蕨餅もまたお洒落な味。
全体で10席程とおひとりでも入りやすいので、お持ち帰りの和菓子を購入したついでにひとやすみなさるのもおすすめです。
勿論、蕨餅だけではなく名物の水羊羹や生菓子も一緒にいただけます。
ビル群の喧騒と暑さから逃れて、いっときの涼と甘味を味わってくださいね。
<むらさきや>
愛知県名古屋市中区錦2-16-13
052-201-3645
月~金 9時から17時
土 9時から15時
日・祝 定休日