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ロシアのショイグ国防相の訪朝は「要注意」! 露朝軍事同盟は復活するか!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
ロシアのショイグ国防相を空港で出迎えた強純男国防相(朝鮮中央通信から)

 北朝鮮が「戦勝記念日」と称している朝鮮戦争停戦協定70周年の祝賀行事が今夜未明(27日午前0時)にも開かれるようだ。

 行事の目玉は軍事パレードであるが、軍事パレードは今年2月にも人民軍創建75周年を祝って行われているので、目新しいことではない。むしろ注目すべきは北朝鮮の後ろ盾となっている中国とロシアによる代表団(祝賀団)派遣である。

 中国は政治局員の李鴻忠全国人民代表者会議(全人代)副委員長(67歳)が中国共産党・政府代表団を率いている。というのも、北朝鮮は共産党政権の中国とは党と党の関係にあることから労働党と政府の名で中国に招待状を出しているためである。

 一方、ロシアとは国家間の関係上、国防省が招請している。従って、ロシアがセルゲイ・ショイグ国防相を団長とする軍事代表団を派遣するのも至極当然で、北朝鮮も空港で党国際部の幹部ではなく、外交部から欧州担当の任天一(イム・チョンイル)次官が軍幹部らと共に出迎えていた。

 韓国では中国が2018年の建国70周年記念行事には党序列3位の政治局常務委員の栗戦書全人代委員長(68歳=当時)を派遣したのに対して今回は格下の序列15位の李鴻忠副委員長だったことについて「韓国に対する配慮」もしくは「米国を刺激するのを避けた」と分析されているが、10年前の停戦協定60周年行事の時も中国の団長は序列16位の李源潮国家副主席(65歳=当時)だった。

 李鴻忠副委員長は北朝鮮と国境を接している遼寧省瀋陽市出身で深圳市党委書記や天津市党書記を経ており、北朝鮮とは浅からぬ縁がある。行政と経済には長けているが、軍歴はなく、安全保障の問題とは無縁である。従って、北朝鮮とは両党の関係強化や経済協力について話し合っても日韓で囁かれているようなロシアを含めた安全保障分野で役割を担うことはないであろう。

 従って、国際社会の関心の的はショイグ国防相であろう。というのも、ロシアの軍事代表団の訪朝は2015年11月8日のニコライ・ボクダノフスキー第一副総参謀長を団長とするロシア連邦武力総参謀部代表団の訪朝以来であること、またウクライナ戦争の最中の訪朝であることに尽きる。

 ショイグ国防相は今朝、中国代表団よりも一足早く平壌入りしていた。一行の到着を伝えた国営通信「朝鮮中央通信」によれば、空港には強純男(カン・スンナム)国防相、朝鮮人民軍の鄭京澤(チョン・ギョンテ)総政治局長、それに朴寿日(パク・スイル)軍総参謀長の「軍3役」(ビッグ3)が現れ、代表団を迎接していた。

 野戦軍(第671大連合部隊)出身の強純男国防相(大将)は昨年12月の党中央委員会第8期第6次総会で政治局候補委員に任命されると同時に国防相に起用され、今年6月に開かれた党中央委員会第8期第8次総会で政治局員(党序列14位)に選出された出世頭の一人である。

 元国家保衛相の鄭京澤総政治局長(大将)も党序列では強国防相よりも上位(11位)の政治局員である。人事交替が頻繁な軍首脳にあって2017年から国家保衛相の座にあったが、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の信任が厚いことから昨年6月に軍総政治局長に抜擢された。

 同じく政治局員(党序列14位)の朴寿日(パク・スイル)総参謀長(大将)は2018年5月に総参謀第1副総参謀長(兼作戦総局長)に任命されるまで野戦軍の第8軍団長の座にあった。第1副総参謀長兼の任を2019年9月に解かれ、一時的に軍(第1軍団長)に復帰したものの昨年6月に党政治局員候補、党軍事委員、そして治安を担当する社会安全相に任命され、さらに半年後の12月に軍総参謀長に抜擢された生粋の軍人である。

 ショイグ訪朝についてロシア国防省は「ロシアと北朝鮮の軍事関係の強化に貢献し、両国間の協力発展の重要な段階となるだろう」と伝えているが、朝鮮中央通信もまた「反帝・自主の道で固く結ばれた戦略的で伝統的な朝露友好関係を時代の要求に即してさらに新しい高い段階へ強化し、発展させる上で有意義な寄与をすることになる」と報道していた。

 また、空港でロシア軍事代表団を歓迎する儀式が行われ、ショイグ国防相が強国防相に案内され、朝鮮人民軍儀仗隊を査閲したが、朝鮮中央通信は「朝鮮人民軍将兵は帝国主義者の強権と専横に立ち向かって国家の主権的権利と発展利益を守り抜き、国際的正義を実現するために戦うロシア軍隊と人民に対する戦闘的敬意と全面的な支持を表しながら、熱烈な拍手でロシア連邦軍事代表団を迎えた」と伝えていた。

 ロシアと北朝鮮との間には2000年2月にプーチン大統領が訪朝した際に交わされた「ロ朝友好条約」がある。

 「締約一方は、締約相手方の主権、独立及び領土保全に反するいかなる行動、措置も取らない」ことを謳っているが、ソ連時代にあった「一方が外部から武力侵攻を受けて戦争状態に入った場合、他方は直ちにあらゆる手段で軍事的支援を提供する」との軍事同盟条項は含まれていない。

 今回、露朝軍事会談でそれが復活することになるのか、大いに気になるところである。当然、北朝鮮による武器供給も最大関心事の一つであることは言うまでもない。

 それと、軍の交流と合同訓練の可能性も議題に上がるかもしれない。

 露朝間では実際に2011年8月の金正日(キム・ジョンイル)前総書記の訪露直後に海軍代表団による相互訪問が行われていた。

 ハバロフスクに司令部を置く東部軍管区のコンスタンチン・シデンコ司令官が率いる軍事代表団が金正日訪露後の8月22日に訪朝し、2か月後の10月20日には北朝鮮海軍東海艦隊司令官の金明植(キム・ミョンシク)少将(当時)が率いる海軍代表団がカムチャッカ半島を視察し、ウラジオストクでは太平洋艦隊所属の艦船や潜水艦などを視察していた。

 合同軍事演習の問題はこの時から話し合われており、実現しなかったもののロシアのゲラシモフ総参謀長は2015年1月30日に北朝鮮、ベトナム、キューバなどと陸海空軍が参加する合同軍事訓練計画を発表していた。

 どちらにしても、平壌滞在中のショイグ国防相の動向には目が離せない。

(参考資料:「プーチンを支える金正恩」 北朝鮮の対露軍事支援が本格的に始まる!?)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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