総選挙では、原発再稼働、集団的自衛権、秘密保護法、1年半後の消費税、安倍首相の資質などが問われるべき
■ 唐突な解散
今度の解散総選挙には全く驚きました。
私は秋の臨時国会は女性活躍と派遣法の動きに注目してきましたが、突然廃案にして解散。
特に、安倍首相が自らあれだけ大騒ぎしていた女性活躍の政府方針は、女性たちの間でも賛否両論あったものの、ともかくいろんなところで女性たちの議論が活発になっていたのです。急に解散ということで、女性の活躍推進法の廃案になり、今や一切その話は聞こえてきません。
結局、女性活躍などやる気があったのか? 所詮、全くの気まぐれな人気取り施策だったのでは、と疑念を深めてしまいました。
そして、これは弁護士というより一有権者としての感想になりますが、
●これだけ景気が日に日に悪くなるというニュースが続くなか、政府は巨額を投じて選挙に突入するより、もっと先にやることがあるのではないか。
●消費税10%再値上げ凍結(または中止)に大きく反対している政党もない以上、それを争点として真を問う総選挙とは何なのか。
と極めて理不尽に感じます。
■「争点は政権が決める」菅官房長官発言の傲慢発言
しかし、私が今回一番「これはいかがなものか」と怒りを感じたのは、菅官房長官の以下の発言です。
これはひどい。現政権が明らかに、数の多数におごっている、あたかも国を私物化して思うままに支配しているという意識を示す傲慢発言というほかありません。
総選挙は主権者である国民が政権に対する審判をする、次の政権の枠組みを決めるというものです。
確かに解散権は首相にあるとしても、何を争点とするかを決めるのは、私達主権者・有権者なのです。
東京新聞はこれに反発したようで、こんな見出しから始まる社説を出しています。
「衆院解散 12・14総選挙 争点決めるのは国民だ」(11月22日社説)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014112202000150.html
ところが、、
読売新聞は政府発表に忠実に、以下の見出しです。「衆院が解散、総選挙へ…アベノミクス争点」(11月21日)
http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2014/news1/20141121-OYT1T50064.html
バッシングを受けて最近ますます腰がひけてしまった朝日新聞の見出しは、「衆院選の争点って何? 」(11月22日)
http://www.asahi.com/articles/ASGCP3VT7GCPUTFK009.html
情けない。メディアが批判精神もなく、自ら争点を顕在化させず、このような体たらくのまま、政権の提灯持ちのような報道に終始して、選挙期間が終わるようなことがあってはならないと思います。
本当の争点はもっとほかにあるはずです。
■ 国民の意見を二分する重要課題は何か。
今、解散総選挙をするなら、1年半くらいのスパンの経済政策だけでなく、まずは、将来にわたっての国のあり方に関わる、国民世論を二分する重要問題について堂々と信を問い、議論がなされるべきです。
消費税を10%に再値上げをすることを1年半延期するといえば、歓迎する人は多いだろうし、特に強く反対している政党もありません。それだけに争点を絞り込んで、「是か非か」を問うて、消費税をあげないでほしいという庶民の票を得て選挙に勝とうなんて、国民を欺く「子どもだまし」であり、随分国民も馬鹿にされたものだと思います。
今、総選挙という機会に議論すべき、信を問うべき重要な問題と言えば、やはり、
集団的自衛権と憲法改正、原発再稼働、秘密保護法
などと言った重要問題が山ほどあります。こうしたことについて、きちんと争点化されるべきです。
例えば、一例ですが、8月の時事通信世論調査はこうなっています。
支持率にはその後、増減があるものの、以前として、集団的自衛権・憲法改正、原発再稼働について強い反対意見があることは明らかです。
集団的自衛権の問題・特定秘密保護法の問題については、私もるる書いてきましたので時間のある方はチェックしていただきたいですが、
集団的自衛権について⇒http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20140701-00036922/
秘密保護法について⇒http://bylines.news.yahoo.co.jp/itokazuko/20131117-00029864/
極めてシンプルに言えば、
■ 福島原発事故という未曽有の原子力災害を経験しながら、その反省もないまま、被災者救済も全く進んでいないのに、原発再稼働してしまっていいの?
■ 自衛隊や私達の子どもたちの世代が、海外の戦争に参加して、命を落としたり人殺しをするようなことを認めるの?
■ 国家の「秘密」を増やして、情報公開を閉ざし、「秘密」に近づこうとした報道機関や市民を刑罰をもって威嚇、対処するような
知る権利を奪う法律の強行採決をこのまま許していいの?
■ そしてこれらの問題について一度も信を問わないということでいいの? 世論調査で反対が多かった問題も国民の意向を尊重しないで強行してしまった、そういうやり方で果たしていいの?
という問題です。
こんな重要な問題について、憲法は戦後69年続けてきた国の方針を変える問題、原発は本当に将来何百年にかかわる問題、とても国民生活や私たちのあり方にとって大切な問題について、「争点ではありません」ということで誤魔化されてはいけないと思います。
また、消費税に関しても、即座の延期・凍結よりも、むしろ1年半後が問題です。安倍政権もさすがに1年半後に再度解散するということはないでしょうし、そんな保証はどこにもないわけです。
今度の安倍首相の方針は、1年半後にいかなる経済状態であったとしても10%に再増税するというのだから、1年半後も見据えて各党の姿勢を問い、投票する必要があると思います。
■ 安倍首相の資質
最後に、もうひとつは安倍首相の政権運営のやり方や、その資質と言ったところも厳しくチェックしていきたいところです。
○ 資質に関して言うと、最近驚いたのが解散を決めた直後の安倍首相の発言。
記者会見を開いて、テレビ生出演を繰り返して熱弁をふるっていますが、ネット上では悪評が見られます。
安倍首相生出演! News 23への反響
News 23映像、ニュースZERO映像はYoutubeで見たのですが、今後あと数年安倍首相に日本を託してもいいかどうか、Happyといえるかどうかを考えてみるのに役に立つ映像ではないかな、と思いました。
特にネット上で批判が大きかったのは、News23での、街頭インタビューへの対応。
インタビューを受けた少なからぬ人が「アベノミクスを実感していない」と生活の苦しさを訴えていたのに、安倍首相が、「これは町の声ですから、(人を)皆さん選んでいると思いますよ」と言ったくだりです。
実際、映像をみると、安倍首相、自分に都合の悪い声は無視し、聞く耳を持たない姿勢がたいへんリアルに見えてしまいます。
首相はこのインタビューに前後してペラペラといろんな数値や指標をあげて、景気は上向きになっている、アベノミクスはうまくいっていると言い募っています自分に都合の悪い情報をシャットアウトして、都合のよい数値だけを話して、「アベノミクスはうまくいっている」と言い続ける首相の姿に、大変不安になります。
こんな主観的なことでいいのでしょうか。都合のよい数字ばかりに頼り、修正がきかずに、取り返しのつかないところまでいくことも懸念されます。それに、自分が実施した景気対策でもやはり生活が苦しいと言う人がいれば、その声にじっくり耳を傾け、施策を考える、一国の首相はそうあるべきではないでしょうか。いまや国民の多くが貧困に苦しんでいるのですからなおさらです。
○ もうひとつは政権運営の強引なやり方をこのまま続けてもらって良いか、ということです。
この2年間、私たちは、集団的自衛権閣議決定や秘密保護法の強行採決という乱暴なやり方、数に物を言わせる傲慢な進め方を見てきました。
世論調査で秘密保護法、原発再稼働、集団的自衛権行使容認について、多くの国民が懸念したり反対していると出ているのに、問答無用で決めてしまう、国民を無視したやり方が続いてきました。 こうしたことに対する反省の姿勢も政権側にはあまり見られません。
自民党が再び圧勝したら、再び信任を得たということで、これからも民意・世論調査の結果を尊重しない政治が続くかもしれない、というあたりも考え、もう少し多数党による歯止めがかかる、チェックアンドバランスがはかられる民主的な国会運営を可能とする国会の構成になってほしいというのが私の私見です。
■ 野党やメディア、そして誰より有権者の役割は重要
今回もし、消費税やアベノミクスだけが争点、という選挙になってしまうとすれば、野党やメディアの怠慢の責任は大きいというべきでしょう。 過去にも野党が重要な争点を訴えても、メディアが取り上げない、争点化しない、ということがしばしばありました。
野党やメディアは、「争点は政権が決める」というプロパガンダ選挙に終始させないためにも、国論を二分する重要な課題について責任ある明確な政策を提起して、有権者の選択肢を示してほしいと思います。
有権者の選択肢をクリアにするために、野党の選挙協力も重要になってきますが、そのためにかえって争点がぼやけて、何が言いたいかわからない政党・合意形成が困難な政党が増えても有権者は戸惑うばかりです。
争点を顕在化し、クリアな選択肢を提起してほしいと思います。
そして、子どもだましに騙されてしまったとしたら、私たち有権者の責任も問われます。
有権者側からも、是非これを争点としてきちんと民意を発信していく機会として、主権者として民意を反映できるせっかくの機会を十分に生かしていかなければと思います。