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アザール加入のレアル・マドリー。高まるマドリディスタの期待値と、ペレスの打算。

森田泰史スポーツライター
ドリブルを仕掛けるアザール(写真:ロイター/アフロ)

逆襲に向け、レアル・マドリーが着々と補強を敢行している。

2018-19シーズン、マドリーはチャンピオンズリーグ決勝トーナメント1回戦でアヤックスに敗れ、ベスト16敗退に終わった。若手が台頭するアヤックスに欧州王者マドリーが敗れるという構図は、凋落への一途を印象付けた。

■改革

コパ・デル・レイでは準決勝で敗退。リーガエスパニョーラでは、優勝したバルセロナに勝ち点19差と大きく水をあけられ3位でフィニッシュして主要3タイトルにおける無冠が決定した。

大胆な改革が必要だ。大半のマドリディスタが、そう理解した。タイトル獲得の可能性が消滅してから、メディアではビッグプレーヤーの名前が踊り、補強の必要性が叫ばれた。公式会見においても、ジネディーヌ・ジダン監督に選手獲得に関する質問が集中砲火の如く浴びせられた。

不快感を示すジダン監督をよそに、フロレンティーノ・ペレス会長は水面下で動いていた。ロドリゴ、エデル・ミリトン、ルカ・ヨヴィッチを次々に引き入れると、ついにマドリディスタの期待値が最大限に高まるような補強が敢行される。エデン・アザールの加入である。

リールでトップデビューを果たした16歳の頃から将来を嘱望され、2012年からチェルシーで主力として活躍し続けてきた選手である。18-19シーズン、公式戦52試合で21得点17アシストとチェルシー加入以降最高の数字を残して、夢に見ていたマドリーへの移籍を実現させた。

マドリーはアザール獲得に際して、1億ユーロ(約122億円)にボーナス3000万ユーロ(約36億円)を加える移籍金で合意に至ったようだ。1億ユーロを超える移籍金は2013年に加入したガレス・ベイル以来のものである。

■補強費と変更の可能性

補強費に関しては、昨夏と比較しても違いは明らかだ。ヴィニシウス・ジュニオール(4500万ユーロ)、ティボ・クルトゥワ(3500万ユーロ)、アルバロ・オドリオソラ(3000万ユーロ)、マリアーノ・ディアス(2150万ユーロ)、アンドリー・ルニン(850万ユーロ)獲得に総額1億4000万ユーロ(約170億円)を支払った。

この夏はミリトン(5000万ユーロ)、ロドリゴ(4500万ユーロ)、ヨヴィッチ(6000万ユーロ)、アザール(1億ユーロ)と、現時点で総額2億5500万ユーロ(約311億円)を支払っている。

過去4年のマドリーの補強費は3億3340万ユーロ(約406億円)だった。その期間に、同都市に拠点を置くアトレティコ・マドリーは5億7000万ユーロ(約695億円)を投じ、テレビ放映権の分配を均等に行い競争力を維持しているプレミアリーグでは、マンチェスター・ユナイテッドが6億2200万ユーロ(約758億円)を投じている。ペレス会長は明らかに支出を抑えていた。

今後、気になるのは新戦力の起用法である。ロドリゴはヴィニシウスのような活躍ができるのか。ミリトンはセルヒオ・ラモスとラファエル・ヴァランとの競争に、ヨヴィッチはカリム・ベンゼマとのポジション争いに挑む。

また、基本的に4-3-3を採用してきたジダン監督だが、補強次第でシステム変更をする可能性があると示唆している。

アザールの適性ポジションは4-3-3なら左ウィング、左右インテリオールだ。4-4-2(中盤ダイヤ形)なら左右MFとトップ下だろう。これまで、ジダン監督は4-4-2を採用した試合ではイスコをトップ下に組み込んできた。

この数年、大型補強を行わずに夏を過ごしてきたマドリーだが、無冠に終わった意味は少なくない。迅速に動くペレス会長と、そこから生まれるダイナミズムがレアル・マドリーの再構築を加速させる。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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