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U20日本代表HC『打倒!ウェールズ』

松瀬学ノンフィクション作家(日体大教授)

ことしはラグビーのワールドカップ(W杯)イヤーである。日本代表が9月開幕のW杯イングランド大会に勝負を挑む一方、4年後のW杯日本大会にもつながる『ジュニア・ジャパン』(Uー20=20歳以下=日本代表)は6月にイタリアで開かれるUー20世界選手権(JWC)にチャレンジする。

日本は昨年、下部トーナメントからJWCへの昇格を決めた。1次リーグの相手は、イングランド、フランス、ウェールズと格上ばかり。中竹竜二ヘッドコーチ(HC)は25日、「ユース世代の集大成として臨みたい。ウェールズに本気で勝ちにいく」と、“打倒!ウェールズ”を宣言した。

中竹HCは3年前、ウェールズに7-119で大敗した。「すべてにおいて甘かった。からだ作りにしろ、集中力にしろ、ファイティングスピリットにしろ。選手だけでなく、スタッフも甘かった」と反省する。

それから3年。強化体制は整備され、日本協会の支援もアップした。「目標はウェールズに勝つこと。ウェールズに勝つチームを目指せば、おのずと(大会の)結果はついてくる」と言い切る。

これまでの合宿では、専門のメンタルコーチを招いたりして、まずマインド・チェンジに努めてきた。日本代表のエディー・ジョンズHCのサポートも受け、テストマッチで通用する基本スキルの強化や体力アップを図ってきた。強化ポイントが「トランジッション(切り替え)」である。

「アタックとディフェンスの切り替え。日本人が最も弱いとされているこの部分を、圧倒的な練習量と意識で変えたい。からだ(の大きさ)で勝つことは難しいので、ジュニア・ジャパンはスピードとアジリティ(瞬発力)、集中力で勝負していきたい」

目指すラグビーのスタイルは当然、日本代表の「ジャパン・ウェイ(日本流)」に準じている。セットプレー(スクラム、ラインアウト)を安定させ、シェイプ(連動した攻撃)を重ねて相手防御網を崩し、トライを目指す。「まずは基本のところが大事です。正確なパスができるか、踏み込んでタックルできるか」と中竹HCはいう。

ジュニア・ジャパンはJWCに先立ち、環太平洋地域6カ国の準代表クラスが参加するパシフィック・チャレンジ(3月10~23日・フィジー)に出場する。この日、そのメンバー30人も発表された。

とくに期待される選手が、フッカー堀越康介(帝京大1年)やSO野口竜司(東海大1年)、WTB桑山聖生(鹿児島・鹿児島実業高3年)、FB尾崎晟也(帝京大1年)ら。

ジュニア・ジャパンはまた、初開催されるU-20オセアニア選手権(5月・豪州)にも参加し、ニュージランド、豪州、サモアとも対戦する。この大会を経て、JWCメンバー28人が決定されることになる。

2019年W杯日本大会を見据え、強化が進む日本ラグビー。とくにUー20世代の強化と経験値アップが最大の課題となっている。できれば、ジュニア・ジャパンにも注目を。選手やコーチたちは、切磋琢磨を続けていくことになる。

ノンフィクション作家(日体大教授)

早稲田大学ではラグビー部に所属。卒業後、共同通信社で運動部記者として、プロ野球、大相撲、五輪などを担当。4年間、米NY勤務。02年に同社退社後、ノンフィクション作家に。1988年ソウル大会から2020年東京大会までのすべての夏季五輪ほか、サッカー&ラグビーW杯、WBC、世界水泳などを現場取材。人物モノ、五輪モノを得意とする。酒と平和をこよなく愛する。日本文藝家協会会員。元ラグビーワールドカップ組織委員会広報戦略長、現・日本体育大学教授、ラグビー部部長。著書は近著の『荒ぶるタックルマンの青春ノート』(論創社)ほか、『汚れた金メダル』『なぜ、東京五輪招致は成功したのか』など多数。

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