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「モンハン」新作「ライズ」 世界出荷数400万本超え絶好調も“死角”は?

河村鳴紘サブカル専門ライター
「モンスターハンターライズ」のゲーム画面

 世界同日発売されたカプコンの人気シリーズの新作「モンスターハンターライズ」が発売3日間で世界400万本を出荷したと発表されました。絶好調なのは確かですが、せっかくなので、経営目線で少し掘り下げてみましょう。

◇「ライズ」日本なら「ワールド」上回るか

 ゲームの売れ行きを示す数字は、2種類あります。メーカーが販売店に出した「出荷数」と、消費者の手に渡った数を第三者が調査する「(推定)販売数」です。後者は実売数として注目されつつも、新型コロナウイルスの感染拡大のあった昨年からダウンロード販売の割合が急に伸びて、以前ほどの正確な数字の割り出しが難しくなっている実情があります。

 ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するKADOKAWA Game Linkageによると「ライズ」の国内販売数が3日間で約130万本と発表しました。2018年にPS4向けに発売された「モンスターハンター:ワールド」は同じ3日間で約133万本なので、ほぼ同数になります。

 ちなみに同じ3日間の販売数ですが、「あつまれ どうぶつの森(あつ森)」の約188万本には及びませんが、かなりのヒットなのは間違いありません。なお「あつ森」の昨年末時点(正確には2021年1月3日まで)の累計販売数は約647万本となります。ちなみに任天堂が発表している「あつ森」の国内出荷数は919万本(昨年12月末時点、ダウンロードを含む)です。

 そして「ワールド」が出た3年前よりも今の方が、ダウンロード販売が格段に増えていると見るのが妥当です。そうなると日本国内の売れ行きなら「ワールドよりライズが上」という見方もあるでしょう。

◇「ワールド」の1000万本突破は7カ月後

 さて「ライズ」の今後の売れ行きはどうなるかです。“先輩”である「ワールド」の出荷数ですが、カプコンは当時、3日間の世界出荷数を500万本と発表しています。発売から7カ月後にPC版が登場して1000万本を突破。2020年12月末時点で1680万本となります。

 数字を追うと面白いことが浮かびます。「ワールド」をクリアした人の率は約42%です。「ワールド」をクリアした人向けの拡張コンテンツ「モンスターハンター:ワールド アイスボーン」の出荷数(ダウンロード数)は720万本になります。「ワールド」の出荷数からゲームのクリアした率を割り出した数(約706万本)と、「アイスボーン」の出荷数が似通うのです。

 「ライズ」も2022年初頭にPC版が発売されることが発表されています。「ワールド」もPC版の発売時に伸びたので、今後も注目ですね。

◇モンスターハンター:ワールド(PS4、Xbox One、PC)出荷数の歴史

2018年1月26日 ソフト発売

2018年1月29日 世界出荷数500万本突破発表

2018年3月5日 世界出荷数750万本突破発表

2018年8月 PC版発売

2018年8月20日 世界出荷数1000万本突破発表【7カ月】

2018年12月 拡張コンテンツ「アイスボーン」発表

2019年3月末時点 世界出荷数1200万本【決算】

2019年9月6日 アイスボーン発売開始

2020年3月末時点 世界出荷数1500万本【決算】

2020年12月末時点 世界出荷数1680万本(アイスボーンは別に720万本)

◇日本のシェアの高さをどう判断する?

 「ワールド」は、地域別出荷数は開示されていませんが、海外の割合は75%(つまり日本は25%)であるとカプコンは明かしています。1680万本に適用すると「420万本」という数字が出ます。ダウンロード販売やPC版の存在などを織り込み、過去の「モンスターハンター」シリーズの数字と比較すると、妥当な数字ではないでしょうか。

 話を「ライズ」に戻しましょう。世界出荷数が400万本で、上記の「25%」の“方程式”を当てはめると「100万本」になります。ところがファミ通が発表した販売数ではダウンロード版抜きで「130万本」と、日本のパッケージ販売だけで3割を超えるのです。

 このブレについて「スイッチは日本で特に売れているから!」というのは、半分違います。正解は「スイッチは日本でも売れているが、世界でも売れている」です。スイッチの世界出荷数は7987万台(2020年12月末)で、うち日本は1888万台。日本の占める割合は「23.6%」です。「モンスターハンター:ワールド」の海外と国内の割合に似ているのは面白いですね。

 データで導ける結論ですが、「ライズ」は発売3日間の販売状況に関しては、日本市場の占める割合が「ワールド」よりも高いということです。それは「ライズ」は「ワールド」に比べて海外比率が低い……ということになります。

 ゲーマー視点では「日本で売れてハッピー!」で終わりますが、ビジネス視点では、違う考えが浮かびます。モンハンは海外でいかに拡大していくかが重視される戦略タイトルだからです。以前にカプコンの辻本春弘社長に取材したとき、「ワールド」の1000万本突破の話にニコリともせず「まだ売れるはず。いかにして上を狙うか」というのを繰り返し強調していました。

 もちろん、この“死角”ですが、今後海外の数字が伸びて、PC版も売れて、杞憂に終わる可能性もありますが……。今後の動向にも注目したいところです。

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サブカル専門ライター

ゲームやアニメ、マンガなどのサブカルを中心に約20年メディアで取材。兜倶楽部の決算会見に出席し、各イベントにも足を運び、クリエーターや経営者へのインタビューをこなしつつ、中古ゲーム訴訟や残虐ゲーム問題、果ては企業倒産なども……。2019年6月からフリー、ヤフーオーサーとして活動。2020年5月にヤフーニュース個人の記事を顕彰するMVAを受賞。マンガ大賞選考員。不定期でラジオ出演も。

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