NiziU 韓国デビュー曲での現地活動期間終える データで見る「1位獲得のホントのところ」
NiziUが韓国でのデビュー曲「HEARTRIS」での活動期間を終えた。
15日に現地で録画出演したNAVER「NPOP」と前後して、14日に日本に出国。今回の韓国での活動はひとまず終了したものとみられる(15日に公式YouTubeで日本での様子を伝えつつ「ただいま」と添えられた動画がアップされた)。
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10月30日に音源および公式MVのローンチにより「韓国正式デビュー」を果たした。韓国語では「カムバック期間」とも言われる。いわばプロモーション期間のようなもので、近頃は2週間から4週間が基準となっている。NiziUは短い部類に入る2週間だった。その間、アイドルたちは朝早くにテレビ局入りし、リハーサルを行った後、収録を行う。タフな日々が続くだけに、初体験となるNiziUは短めにスケジュールを組んだ、ということも予想できる。
この間のデータや資料を基に、韓国での彼女たちの時間を振り返ろう。
データ1 初出演時の「扱い」
まず、韓国では彼女たちの日本での実績(その時点で3回連続紅白歌合戦出場、ドーム公演開催実績あり)によって「優遇」されるようなことは一切なかった。
11月3日、初めて韓国の音楽番組、KBS2の「ミュージックバンク」に出演した際の番組予告にはっきりとそれが現れていた。
カムバック(新曲を発表し、音楽シーンに戻ってきた)した4グループの中に入らない。NiziUの名は小さく表記されただけだった。
NiziUの場合、韓国では彼女たちの知名度を上げたオーディション番組「Nizi Project シーズン1」は韓国で放映されなかった。これが理由だ。この点は逆にNiziUのストーリーの一幕としても大変興味深い点でもある。
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データ2 15回の音楽番組出演「1位以外は苦戦」
こういった状況から始まったNiziUの韓国デビュー。彼女たちはこの回を含め、15回の現地音楽番組出演を果たした。
- 11月3日 地上波KBS「ミュージックバンク」 デビュー日がチャート集計期間対象外
- 11月4日 地上波MBC「音楽中心」…50位圏外(チャート集計期間の対象がデビュー日の10月30日のみ)
- 11月5日 地上波SBS「人気歌謡」…30位圏外(同上)
- 11月6日 (ランキング形式の音楽番組放映なし)
- 11月7日 (ランキング形式の音楽番組放映なし 「THE SHOW」は放映なし)
- 11月8日 ケーブル MBC MUSIC 「SHOW CHAMPION」 1位
- 11月9日 ケーブル Mnet 「M COUNTDOWN」 5位
- 11月10日 地上波KBS「ミュージックバンク」 20位圏外
- 11月11日 地上波MBC「音楽中心」 13位
- 11月12日 地上波SBS「人気歌謡」 30位圏外
- 11月15日 NAVER「NPOP」 ランキングは月刊で発表のため未公開/クイズバラエティも披露
じつのところ、1位を獲得した11月8日以外は「苦戦」だった。特にケーブル系の番組よりも伝統のある地上波では苦しんだ。同じ「HEARTRIS」が11月8日には1位で、二日後には圏外。なぜこんなことが起きたのか。
データ3 苦戦の原因「音源」と「配点」
まずは1位を獲得した「SHOW CHAMPION」について。2012年に始まった新しい番組は独自の採点基準を持っている。
この番組では「1位候補」として5グループが選抜され、再び1位を巡って、プレーオフ方式で別の基準点によるランク付けがなされる。
NiziUの今回の1位はこう言い直すことができる。
「配点が最も高い「音楽配信ダウンロードポイント」が「0点」だったにもかかわらず、獲得した奇跡的な1位」
なぜなら、他の配点でずば抜けたからだ。特に高い数値を示した配点の20%を占める「グローバル投票」でダントツの数値を示した。これは日本のファンが彼女たちのためにアプリを通じて多く投票したということ。10%の「SNS」投票でも日本と韓国のファンが力を合わせてポイントを上げる努力をしたという。また「SHOW CHAMPION」は他の番組と比べこの比率がかなり高い。
ちなみにYouTubeでの「HEARTRIS」の再生回数も今回のNiziUのかなり優れた成績で、K-POPのYouTubeでの公式MV再生回数をランキングで発表する「K-POP RADER」では10月30日のデビュー後からいきなり「リアルタイム1位」を獲得した。
韓国デビュー初日のNiziU YouTubeはロケットスタートで”1位”
「SHOW CHAMPION」の1位獲得では他グループの動向も大きな影響があった。同じく20%を占める「放送点数」では、別グループの動向がランキングに作用した。1位を争うSEVENTEEN、ジョングク(BTS)、IVEが番組を欠席。この点が0点となった。結果、ゴールデン・チャイルドとの一騎打ちとなり、これに勝ったNiziUが1位となったのだった。ここしかないワンチャンスを活かしての1位だった。
その他の番組で苦戦した理由。それはまさに「音源(有料音楽配信プラットフォームでの売上やストリーミング回数)」の弱さに他ならない。地上波系の音楽番組ではこの配点が非常に高い。
KBS「ミュージックバンク」
「デジタル音源(60%)+ 放送回数(20%)+ K-POPファン投票(10%)+ 音盤(5%)+ ソーシャルメディア(5%)」
MBC「音楽中心」
「音源スコア(50%)+アルバムスコア(10%)+動画スコア(10%)+放送回数(10%)+2000人の視聴者委員会投票(5%)+グローバル事前投票(5%)」 このうち1位候補 「生放送中のアプリ投票(5%)+生放送中のテキスト投票(5%)」
韓国の音楽番組では複数の音楽配信プラットフォームのデータが反映されるが、そのうちの最大手「メロン」での「HERATRIS」のデータを。
TOP100/シンプルにその時点での上位100位を示すデータに近いもの。
=一度も100位圏内に入らず。
HOT100/発売日から100日以内のアルバムのリアルタイム順位。
=最高位52位。
近年のK-POPシーンでは、コアファンたちが力を合わせてこの「音源データ(特にストリーミング再生回数)」を上昇させる動きを見せる。時に問題視もされる「総攻(チョンゴン/総攻撃の略)」と呼ばれるもので、当然これは韓国内のコアファン数が多いほうが効果がある。これがNiziUが「音源」での点数が高くない背景、ひいては1位を獲得したSHOW CHAMPION以外での順位が振るわなかった理由だ。
韓国語では「コアファン層」を「ファンダム(現地発音は「ペンドム」)」と言う。K-POPを語る時の頻出ワードだ。NiziUの韓国の熱狂的ファンが最も多く活動するインターネット掲示板の投稿別アクセス数は多いもので数万を超えるものもあるが、平均では1700前後というところだ。
データ4 「NiziUは実際のところどう語られていたのか」
実際に、韓国のコアファン以外でのネット上での言及量もなかなか「伸び悩んだ」。韓国語でのサイト上での言及量を調査できるビッグデータサイト「SOME TREND」で「NiziU」というキーワードを調査してみた。
デビューした10月30日から11月17日の間での関連キーワード上位は以下の通りだ。
- 人気歌謡 (Inkigayo) - 16,458
- ミュージックバンク (Music Bank) - 11,670
- ショーチャンピオン (Show Champion) - 11,421
- リマ (Lima) - 9,761
- 活動 (Hwaldong) - 9,298
- 音楽中心 (Music Core) - 8,776
- ライブ (Live) - 8,064
- ショー音楽中心 (Show Music Core) - 7,933
- リオ (Rio) - 7,917
- カウントダウン (Countdown) - 6,730
- 案内 (Announcement) - 6,384
- ミュージック (Music) - 5,322
- JYP (jyp) - 5,137
- ユーチューブ (YouTube) - 5,055
- 約束 (Promise) - 5,033
上位3位は実のところ…番組の公式アカウントがSNSで流した出演者情報がリツイートされたもの。NiziUの名前が他のグループ名と併記されていたため、それが拡散されたというところだった。
まったく新しい形の「成功」
当然、所属事務所側も今回が韓国デビューとなるNiziUの「韓国でのファンダム=コアファン層」が小さいことは理解していただろう。だからこそデビュー曲の「HEARTRIS」のコンセプトは練りに練られたものだと思う。筆者も個人的に「かなりスゴいところを突いてくる」と感嘆した。
テーマは「私たちはテトリスのようにピッタリ合うはず」という片思いだった。ここ数年K-POPシーンを席巻した「ガールズクラッシュ(かっこいい系)」のコンセプトを外し、かつ日韓両国のレトロブームに合わせたものだった。「少しでも多くの世代が楽しめるように」という狙いがあるように見えた。
しかしコアファンの形成がまだまだこれから、という弱点の克服には至らなかった。この点はここから先、韓国での活動の地盤を築いていくにあたっての課題だろう。
そういったなかでも、上記の「韓国での言及量」のデータのうち、4位の「リマ」はこれまでの韓国での関心度から見ても、大きな「進歩」だった。その個性が認められたものだったからだ。今回の活動期間中もメディアでの報道ぶりが「事務所からのプレスリリース転用」が目立った中、リマに関しては活動期間中のテレビ局の「入り待ち写真」、そして活動期間を終えた後、11月14日に日本に出国する際の金浦空港でメディアの写真に収まった様子が大きな話題となったのだった。
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わざわざほじくり返すこともないデータも多いかもしれない。それでも今回のNiziUの成功(1位獲得)の正確な位置は知らせなくてはならない。
「日本と韓国のコアファンが『番組でのランキング事前投票』『YouTubeの閲覧数』で押し上げて獲得した、針の穴に糸を通すような難易度の1位獲得」
「韓国の一般大衆に大きく認められるのはこれから」
「そのためのコアファン層形成もまだまだこれから」
いっぽうで今回の韓国での活動期間は、「K-POPでの成功」について、我々も少々頭の体操が必要な話でもある。
「K-POPでの成功において、韓国で認められる点は無視ができないが、決して全てではない」
「日本など外国で認められての韓国音楽番組1位だってありうる」
NiziUが既存の形ではない、新しい形をモデリングしているということだ。
【参考記事】