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リーグ優勝は「年俸75万ドル未満の兄」か「年俸1500万ドルの弟」か。兄が弟からタイムリー・ヒット

宇根夏樹ベースボール・ライター
オースティン・ノラ(サンディエゴ・パドレス)Oct 19, 2022(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第2戦の5回裏、オースティン・ノラ(サンディエゴ・パドレス)は、1点差に詰め寄るタイムリー・ヒットを打った。相手の投手は、アーロン・ノラ(フィラデルフィア・フィリーズ)。彼らは、32歳と29歳の兄弟だ。

 兄に打たれて気落ちしたわけではないだろうが、アーロンは、続く2人にシングル・ヒットと二塁打を打たれて同点とされ、その次の打者から三振を奪ったところでマウンドを降りた。パドレスは、このイニングに5点を挙げ、8対5で勝利。シリーズを1勝1敗のタイに戻した。

 ノラ兄弟によるレギュラーシーズンの対戦は、通算5打数1安打。この日の最初の対戦は三塁ゴロだったので、レギュラーシーズンとポストシーズンの合計は7打数2安打だ。これだけでは、一方が勝っているように見えない。

 ただ、レギュラーシーズンの1安打も、タイムリー・ヒットだった。また、今シーズンの年俸は、兄のオースティンが72万6900ドル、弟のアーロンは1500万ドル。これらを踏まえると、兄に軍配が上がる(というか、上げたくなる)。ドラフト順位など、兄弟それぞれのキャリアについては、6月に「兄が弟から打点を挙げ、チームを1対0の勝利に導く。兄の年俸は弟の20分の1」で書いた。

 ESPNスタッツ&インフォによると、ポストシーズンにおいて、兄弟が敵味方に分かれてプレーするのは、オースティンとアーロンが6組目だという。ドク&ジミー・ジョンソン(1920年/ワールドシリーズ)、アイリッシュ&ボブ・ミューゼル(1921~23年/ワールドシリーズ)、ケン&クリート・ボイヤー(1964年/ワールドシリーズ)、ディン&ガース・オージ(1985年/リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ)、サンディ&ロベルト・アロマー(1996年/ディビジョン・シリーズ、1997年/リーグ・チャンピオンシップ・シリーズ)に続く。

 これまでの5組は、兄弟のどちらも野手だった。オースティンとアーロンは、ポストシーズンで打者と投手として対戦した初の兄弟、ということになる。ノラ兄弟は、このシリーズで再び対戦する可能性もある。

 ちなみに、過去5組が対戦した計8シリーズ中6シリーズは、兄がいるチームが弟のいるチームを下し、優勝あるいは次のシリーズ進出を果たしている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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