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伊2部で初の女性主審に選手から「最高の賛辞」 夢実現で次に願うは「名字で…」

中村大晃カルチョ・ライター
1月10日、イタリア女子スーパーカップでのマロッタ(写真:Maurizio Borsari/アフロ)

道を切り開く者には、計り知れない重圧がある。

5月10日のセリエB(イタリア2部)最終節、レッジーナ対フロジノーネの一戦で、37歳の女性審判マリア・マロッタが笛を吹いた。セリエBの試合で女性が主審を務めたのは初めてのことだ。

2016年から国際舞台でも笛を吹くマロッタは、2018年からセリエC(3部)でも主審を務め、今季は13試合を担当。昨年10月のコッパ・イタリア3回戦では、セリエBのコゼンツァの試合を任された。審判として20年のキャリアを持つマロッタは、『Rai Radio』で「夢の実現」と話している。

試合は4-0でフロジノーネの勝利に終わった。だが、『スカイ・スポーツ』によると、敗れたレッジーナのマルコ・バローニ監督は「見事なパーソナリティー。本当に祝福したい」と絶賛。フロジノーネのファビオ・グロッソ監督と一緒に、レッジーナのユニフォームをマロッタにプレゼントした。

監督だけではない。選手もマロッタのレフェリングに感銘を受けたようだ。試合後の『Rai』のインタビューで、マロッタは「ある選手からセリエBで何試合目か聞かれた。初めてだと気づかなかったということ。それこそが、最も素晴らしい賛辞だと思う」と話している。

「自分にとって本当に、感動的で充実した、決して忘れることのない一日だった。本当に、カルチョ界のすべての人に感謝している」

評価も上々だ。メディアは試合中に中継マイクが拾った選手への言葉(「私は敬意をもってあなたと話しています」)も紹介。『ガゼッタ・デッロ・スポルト』の採点は、及第点を上回る6.5点だった。

だが、史上初ということは、重圧も伴う。自分の出来が、後に続く者たちにも影響しかねないからだ。その想いは、本人の言葉からもうかがえる。マロッタは女性の同僚たちに「私と一緒にピッチに」と“後押し”を頼んだと明かした。

「そのおかげで間違えない力を得ることができた。それはまず私のためだけど、彼女たちや、自分に続く人たちのためでもある」

マロッタは、自分が達成した偉業がそれだけで終わらないことを願っている。

「次の試合からは、『女性主審』ではなく、『マロッタ主審』と話題になってほしい。私もすべての女性の同僚たちも、『女性主審』ではなく、名字で言われるようになってほしい」

まず待たれるのは、セリエAの試合で女性主審が笛を吹く日だ。審判協会長のアルフレード・トレンタランジェは、その「夢」を2年以内に実現したいと1月に話していた。

おそらく、そのときはまた「セリエA初の女性主審」が話題になるだろう。マロッタが願う女性主審の一般化は、実現まで遠い道のりかもしれない。だが、何事にも始まりはある。すべてはこれからだ。そして、道を切り開き、第一歩を踏み出したマロッタは、やはり偉大だ。

カルチョ・ライター

東京都出身。2004年に渡伊、翌年からミランとインテルの本拠地サン・シーロで全試合取材。06年のカルチョーポリ・W杯優勝などを経て、08年に帰国。約10年にわたり、『GOAL』の日本での礎を築く。『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿。現在は大阪在住。

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