200年に一人の天才ボクサーが語る「井上尚弥の”スーパー度”」
WBAバンタム級チャンピオン、井上尚弥vs.フアン・カルロス・パヤノ(ドミニカ)戦まで、残すところ5日となった。
16戦全勝14KOの戦績で3階級制覇中の井上は、今回も圧勝が予想される。しかし、彼は常々「負けることは怖くない」と話す。
本コーナーでお馴染み、元WBAジュニアウエルター級1位、同級日本&日本ウエルター級王者だった亀田昭雄に、井上の言葉について訊いてみた。
「『負けることが怖くない』という井上尚弥の言葉は、トップ中のトップだからこそ吐けるものです。並みの世界ランカーが一度世界タイトルに挑んで負けてしまったら、なかなか2度目のチャンスは与えられない。僕もそうでした。挑戦者っていうのは、そんなもんですよ。
でも、井上のようなトップ選手は、もし負けても次の試合を組んでもらえます。井上レベルの価値を持つ選手は、まだまだリングに立てるんです」
井上は達観し、更にこんな風に語る。
「もし負けたとしたら、今までの練習内容と敗戦後のメニューが変わると思います。負けから色々学ぶでしょう」
亀田は続ける。
「繰り返しになりますが、一流選手というのは負けてもリターンマッチを戦えます。モハメド・アリも、ジョー・フレージャーもジョージ・フォアマンもシュガーレイ・レナードも、マイク・タイソンもそうだったでしょう。“終わり”じゃないんですよ。
ところが下からやっと上がって来た選手は、世界戦で負けると二度とタイトルに挑めない。井上は3階級で世界を獲るところまで自分自身を積み上げた男なんです。そういう井上だからこその発言ですよ。負けたって、『あぁ、●●が通じなかったのか』『それならば〇〇の練習をしよう』と反省して考えられる。だから、負けることが怖くないんでしょうね。僕なんかには、とても言えないですね。負けたらもう、二度と立ち上がれないんだから…」
亀田は、井上のリングパフォーマンスだけでなく、同発言にも脱帽していた。
「井上は日本ボクシング史上、ベストボクサーでありながら、まだまだ伸びしろがあります。伸びている自覚があるから『敗北から学べる』という発想になるんです。100%の自分を作った選手が全力を尽くして負けてしまったら、立ち上がれなくなりますよ。でも井上は、まだMAXという意識が無いんでしょうね」
亀田はジュニアウエルター級史上最強とされるアーロン・プライア―に挑み、6回KOで敗れた。
「格が違いました。再戦しても勝てないのはわかっていました。でもね、そんな相手に対してだって、試合後、ああすればもっと苦しめられたかな。こうすれば、自分のパンチが当たったかなと思うものです。まだ負けを知らない井上が、“負けから学べる”と把握しているなんて、メンタルも底知れないものを感じますね。10月7日のパヤノ戦はもちろん、井上の将来には、本当に期待大ですね」
ついに始まるWBSS(ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ)で、井上はどんなMonsterぶりを見せるだろうか。