博多ラーメンではない豚骨ラーメン 意外と知らない「長浜ラーメン」の魅力とは?
魚市場で働く人のお腹を満たした「長浜ラーメン」
長浜ラーメンと聞いて、ピンとくる人がどのくらいいるだろうか。長浜ラーメンとは豚骨スープに細麺を合わせた豚骨ラーメンで、博多漁港に面する長浜エリアで生まれたラーメンのこと。かつては長浜の屋台街などを中心に人気を博していたが、今は路面店として営業している店も多い。
1952(昭和27年)に開業した屋台『元祖長浜屋』(福岡県福岡市中央区長浜2-5-25)が長浜ラーメンの発祥と言われている。競りなどで忙しく時間がない魚市場の人たちのために、麺は細麺で茹で時間を短縮して素早く提供出来るようにした。伸びやすい細麺は大盛りに出来ないため、一杯の麺の量は少なくして麺のお替わりである「替玉」が生まれた。
長浜ラーメンの特徴である白濁した豚骨スープに細麺という組み合わせは、博多ラーメンとほとんど同じ。福岡でも博多ラーメンと長浜ラーメンの明確な差異はなくなっているのが現状だ。しかし元々博多の豚骨ラーメンは麺もそれほど細くなく、替え玉ではなく大盛りの店がほとんど。時代とともに長浜ラーメンの良いところを博多ラーメンが取り入れていき、現在の博多ラーメンのスタイルになったと考えられている。
シンプルで安いファストフードとしてのラーメン
長浜ラーメンは基本的にファストフードであり見た目もシンプルだ。長浜ラーメンの原点とも呼べる『元祖長浜屋』のラーメンは、軽めのスープにラードを浮かべ硬めに茹で上げた自家製の中細麺を合わせたもの。そこに塩気の強い肉とネギが乗るだけ。メニューもラーメンのみで、あとは好みで「替玉」「替肉」を追加するだけだ。
メニューが一種類しかないため提供はすこぶる早い。入店して来た客の数を把握して、注文を聞く前に人数分の麺を茹で釜に投入する。注文時に麺の硬さや油の量を伝えることになるが、聞かれる前に食券を渡しながら「ベタ(油多め)ナマ(麺とても硬め)」などと言えたら、一連の流れが止まることなく格好いい。
博多ラーメンをはじめ、他のラーメンは庶民の食べ物でありながらも、食事としての満足度も高い店が多い。しかし長浜ラーメンは本来屋台のラーメンであり、魚市場で働く人のためのラーメンだ。したがって『元祖長浜屋』では餃子も焼飯もない。長居は不要。ただラーメンを啜ってお腹を満たしてサッと立ち去るのみだ。
居酒屋としても使える長浜ラーメン店もある
ファストフードとしてのラーメンという存在でありながら、ラーメン居酒屋としての機能を持っている長浜ラーメン店もある。長浜ラーメンは屋台で生まれたラーメンなので、おでんや串焼きなど屋台で楽しめるメニューを揃えている店も少なくない。路面店の中には鉄板を置いたり屋台では出せない刺身などを出す店もある。そういう店ではお酒と一品料理だけを楽しみ、ラーメンを食べない客も珍しくない。
しかしながら、居酒屋ではないのでお通しも出なければ、ラーメンだけを食べて帰るのもOK。ラーメン店としても居酒屋としても使うことが出来て、専門店のように肩肘を張らずとも気軽に使える敷居の低さがある。長浜ラーメン店の中にはいまだ500円台でラーメンを提供する店もある。
博多ラーメンをはじめ、昨今のラーメンは使う材料も良くなり、使う量も増えて麺料理として進化している。その結果、ラーメン一杯1,000円でも利益が出にくい設計になっている。食事として満足度の高いラーメンもあって良いし、気軽にサクッとお腹を満たすためのラーメンがあっても良い。長浜ラーメンはラーメンの原点である庶民の食べ物という意識が色濃く残っているラーメンなのだ。
※写真は筆者の撮影によるものです。
【関連記事:正しく理解しておきたい「長浜ラーメン」の基礎知識】
【関連記事:博多ラーメンと何が違うの? 今さら聞けない長浜ラーメンの秘密】
【関連記事:博多ラーメンと長浜ラーメンはなにが違う? 『博多一風堂』創業者と考える】
【関連記事:絶対に食べておかねばならない 福岡の長浜ラーメン「基本」3軒】
【関連記事:絶対に食べておかねばならない 福岡の長浜ラーメン「必須」3軒】