7月とともに水害リスク上昇のおそれ 防災意識を高める必要あり
台風5号は日本の東を北上へ
台風5号は強い勢力とはなっているものの、スケールは小さく、暴風域の直径も100キロに満たないようなかなりコンパクトな台風となっています。
きょう26日(土)夜には小笠原諸島の西を通過し、あす27日(日)夜にかけて関東の東を離れて北上した後、あさって28日(月)には日本の東で温帯低気圧に変わる見通しです。
小笠原諸島や伊豆諸島では高波や強風に注意が必要ですが、本州付近への直接の影響はないでしょう。なお梅雨前線の影響で、関東など太平洋側では本降りの雨となる所もありそうですが、災害をもたらすような大雨となる可能性はかなり小さいと思われます。
ところが来週後半、7月のスタートとともに西日本を中心に、本州付近で水害リスクが一気に上昇するおそれがあります。
梅雨前線は再び南下
台風5号が通り過ぎた後、太平洋高気圧が弱まるため、梅雨前線は再び本州の南に南下するでしょう。その後7月1日(木)頃までは南西諸島付近に停滞する見込みで、雨雲の通り道となる沖縄や奄美では大雨の降りやすい状態が続く見込みです。
梅雨前線は一気に北上へ
ところが2日(金)頃からは太平洋高気圧が強まるとともに梅雨前線が北上し、九州付近から本州の南岸付近が活発な雨雲の通り道となりそうです。
雨雲は中国大陸南部へ長々と伸びており、日本付近へ次々と活発な雨雲が流れ込んでくるおそれがあります。
沖縄や奄美は梅雨明け?本州は梅雨最盛期へ
3日(土)頃になるとさらに太平洋高気圧が勢力を拡大し、南西諸島付近を覆うようになるため、どうやらこのタイミングで沖縄や奄美が梅雨明けとなる可能性が高くなってきたと思われます。
一方、南西諸島で梅雨が明けると、いよいよ本州付近の梅雨は最盛期のステージへ突入することとなり、ちょうど本州付近が活発な雨雲の通り道となっています。
雨雲の発達具合や停滞の仕方によっては大雨の危険度がかなり高くなるパターンとも言え、水害リスクが一気に上昇するおそれがあります。
際立った暖湿気が流入する予想
活発な雨雲を生成する暖湿気の計算をみると、2日(金)は太平洋高気圧の北側を回り込むように中国大陸南部から東シナ海を経て九州付近に流れ込む予想となっています。
数字は大きければ大きいほど水蒸気をたっぷりと含んだ暖かく湿った空気であることを示し、345K以上でも危険度のかなり高い暖湿気と言えますが、それよりもさらに高い350K以上の暖湿気が流れ込む予想で、これは条件次第ではどこで線状の降水帯が発生してもおかしくはなく、集中豪雨とも呼べるような危険な大雨が降ってもおかしくないような暖湿気だと言えます。
昨年、球磨川の氾濫をもたらした暖湿気
上図は、昨年7月4日(土)、熊本県や鹿児島県などに大規模な線状降水帯が発生し、球磨川氾濫に伴う大災害が起きてしまった前夜の暖湿気の実況解析の様子です。
同じように中国大陸南部から九州に向かって345K~350K程度の暖湿気が流れ込んでおり、来週2日(金)と非常によく似た暖湿気の流れ込み方となっているのが分かるかと思います。
もちろんいくら水蒸気をたっぷりと含んだ暖湿気が流れ込んでも、その暖湿気が雨雲を生成しなければ大雨となることはありませんが、来週後半は過去に大きな水害が発生した気圧配置とよく似た気象条件となる可能性があり、十分な警戒が必要です。
また近年の水害、例えば西日本豪雨や九州北部豪雨などの多くは7月早々に発生していることも、時期的に危険な気象条件になりやすいことを示す警戒ポイントとなるかもしれません。
危険度が小さく終われば、それに越したことはありませんが、来週後半は水害に結びつくような大雨がいつ降ってもおかしくないという考えのもと、ハザードマップで危険な場所や避難場所の確認、あるいは防災グッズの確認や用意、また今年避難指示などの修正が行われた大雨警戒レベルの確認などを積極的に行い、防災意識を高めておくことが必要かと思います。
また今般運用が始まった顕著な大雨に関する気象情報(線状降水帯発生情報)などにも目を通しておいて頂いた方がいいかもしれません。