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藤井聡太挑戦者(19)早くも用意の研究手を披露? 叡王戦五番勝負第2局始まる

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 8月3日9時。山梨県甲府市・常磐ホテルにおいて第6期叡王戦五番勝負第2局▲豊島将之叡王(31歳)-△藤井聡太二冠(19歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

 両対局者は前日、次のように語っています。

豊島叡王「1局目の将棋は序盤でやや失敗してしまったのと、中終盤のところでなにかありそうかなという感触としては合っていたんですけど、具体的な手順の組み合わせがちょっと発見できなかったっていうところがありましたので。そういったところを修正していけたらと思います。(藤井挑戦者は)以前から指してて手強い相手だなというのは思っていましたし。最近の将棋もなんていうか、チャンスは作れていて、そこでこちらがうまく指せていないという形なので、相手がどうこうというよりも、自分がうまく指せるようにやっていけたら、という感じで思っています」

藤井挑戦者「こちらは挑戦者という立場なので、あまりスコアのことは考えずに、気負わずに臨めればというふうに思っています。やはり豊島叡王は本当に序中盤の精度がとても高いので、それに対してまずこちらが対応できるかどうかというのが、一つのポイントになってくるのかな、というふうに思っています。その上で最後まで、どちらが勝つかわからないような熱戦にできればというふうに思っています」

 午前9時。

青野「定刻になりましたので、豊島叡王の先手番ではじめてください」

 立会人の青野照市九段が声をか、両対局者は「お願いします」と一礼。持ち時間4時間(チェスクロック方式)の対局が始まりました。

 豊島叡王は初手、7筋の歩を突き、角筋を開きました。

 藤井挑戦者はまずグラスに注がれた冷たい緑茶を飲みます。そのあと2手目、飛車先の歩を突きました。

 関係者や報道陣が退出する中、豊島叡王は3手目、飛車の前の歩を一つ進めます。一分未満切り捨てのストップウォッチ形式と違い、すべての消費時間がカウントされていくので、そうゆっくりともできません。

 戦型は角換わり。互いに攻めの銀を手早く繰り出す「早繰り銀」に出ました。

 先に動いたのは藤井挑戦者。銀を五段目に進めます。豊島叡王は銀取りに歩を打ち、収めようとしました。

 32手目。藤井挑戦者は自身の銀を引かず、4筋の歩を相手の銀取りに突きます。早くも盤上に緊張が走るような、見慣れない進行です。その一手に藤井二冠が消費した時間はわずかに2分。すぐに指したところから見ても、十二分に用意のある研究手と推測されます。

深浦「初めて見ました。初めて見たんで自分の中で解析するんですけど、なかなか難しい手ですよね」

 ABEMA解説の深浦康市九段はそう述べていました。

 豊島叡王は早くも30分を使いました。そして四段目に出ていた銀を三段目に引きます。このやり取りは一見、藤井挑戦者の主張が通ったようにも思われます。しかし形勢に差がついたというわけでもなく、戦いはこれからです。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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