色彩を食む「Kasane-夏-」に宿された日本人特有の繊細な色合いと夏の甘味を琥珀糖に閉じ込めて
2020年に産声を上げた岐阜県の和菓子屋「柏屋つちや」さん。というと非常に歴史の浅い和菓子屋さんのように聞こえますが、実は同じ岐阜県の創業1755年を誇る特産品の「堂上蜂屋柿」を中心とした和菓子を製造・販売なさる老舗和菓子屋「つちや」さんの9代目ご主人が一念発起をして開業なさったお店。
29歳という若さで9代目当主の名を背負った槌谷さんは、より自由でその時代を反映させたお菓子を作りたいと、2020年新しいステージでもある「柏屋つちや」さんを創業。
非常に物腰柔らかな紳士でもある槌谷さんの手から生み出される和菓子の数々は、麗しさと温かみ、そしてなにより美味しさを兼ね備えた作品ばかり。
今回はその中でも、槌谷さんの代名詞といっても過言ではない寒天菓子「Kasane」より夏限定の味わいをご紹介。
水色・白・黄色の三色で彩られた串団子のような寒天菓子の琥珀糖。とはいえ、水色、白、黄色と述べたものの、もっと複雑で繊細な色合いのように感じられるのは私だけでしょうか。それでいて夏特有のエネルギーに満ち溢れた光や、どこまでも広がっていそうな濃厚な空の色、もしくは海の色が小さな作品に詰まっているではありませんか。
一見飴玉のようにも見えますが、砂糖の衣を纏った寒天は、シャリシャリとした涼し気な食感と寒天特有のほろりとした口当たり。上からライチ、レモン、グレープフルーツといった夏らしいフレーバーを心地よく堪能することができます。私の一番のお気に入りは、一番上のライチ。いずれも柔らかくふんわりと鼻腔を擽るような芳香なのですが、甘美なライチからほんのりビターなグレープフルーツまでの香りのグラデーションにセンスを感じます。
箱を開いた瞬間の、心が跳ね上がり目がキラリと瞬くのが自分でも手に取るようにわかった「ときめき」に、釘付けになってしまうというのはこういうことかと納得。キラキラと輝くお菓子は、どうしてこうも年齢問わず一瞬にして心を奪っていくのでしょうか。
味わいだけではなく、色彩をも口に入れて取り込む…ほんのり幻想的な雰囲気に浸れるような、夢の中のお菓子のような琥珀糖でした。