島野製作所対アップルの特許裁判の判決文が公開されました
社員350名の下請けメーカー島野製作所が時価総額世界一位の企業アップルを特許侵害で訴えて話題になっていた裁判の第一審が島野側敗訴になったことについては既に書きました。その後、島野側が控訴したことが報道されていますが、両社とも裁判の内容についてコメントしていなかったこと(および、裁判記録に閲覧制限がかかっていたこと)から、情報がほとんど得られませんでした。
しかし、先日、裁判所のサイトに判決文が(一部省略の上)公開されましたので、地裁での争いの全貌が明らかになりました。ちなみに島野側代理人には「下町ロケット」の神谷弁護士のモデルとも言われている鮫島正洋先生が入られています。
前回の私の記事では朝日新聞の報道をベースに共同出願違反が争点になっていた(アップルと島野の共同発明によるものか島野単独の発明によるものなのか)と推理しました。確かにそれも争点にはなっていたのですが、実際の判決に結びついたのは、その点ではなくアップルによる侵害が認定されなかったことでした(共同出願違反については、裁判所は判断すらしていません)。
非侵害の詳細については、特許訴訟で典型的なクレーム解釈にかかわるテクニカルな話なので、ここでわかりやすく解説するのはちょっと難しいです(時間があれば解説記事を書けるかもしれません)。ひとことでいうと「押付部材」(下図の23)の全体が球でなければならないのか、一部が球面であればよいのかという話です。裁判所は、島野の特許は押付部材全体が球であるピンのみを権利範囲としており、左図のアップルが使用しているピンの形状はその範囲に属さないと判断しました。
なお、問題となった特許権は5449597号なのですが、これにはアップルによる無効審判が請求されており、その審決予告が2月12日に出ているところまではわかっているのですが、内容はネットからではわかりません(特許庁まで行って閲覧請求をすれば(閲覧制限がかかっていないものについては)中身を見られます、どこまで見られるかは特許庁まで行かないとわからないようです)。こちらの方も気になるところです。もし、無効になっていたとすると、その審決取消訴訟も提起しないといけないので島野側は結構大変です。