2型糖尿病の方は「偏頭痛」にご用心!心血管系疾患の予兆かも【最新エビデンス】
日本人の5〜10人に1人は「糖尿病が強く疑われる」
日本でも増え続けている糖尿病。最新の統計では男性の5人に1人、女性でも10人に1人が「糖尿病が強く疑われる」と報告されています [厚労省「令和元年 国民健康・栄養調査結果の概要」20頁] 。
でも糖尿病は血糖値が高いだけで、最初のうちは基本的に自覚症状もありません。ではなぜ治療しなくてはならないのでしょう?
答えは「血管がダメになってしまうから」です。 血管は必要以上に高い濃度の糖にさらされ続けると劣化していきます。そうすると血の流れも悪くなり、例えば腎臓や目の網膜が十分な酸素を受け取れなくなると、腎臓の機能は低下し眼は悪くなっていってしまいます。だからそうならないよう、一生懸命、血糖値を下げるわけですね。
糖尿病があると脳梗塞や心筋梗塞などが約3倍に増加。でも安心、予防できる血糖低下薬も。
同じように、脳や心臓(の壁)に血液を送っている血管が劣化して血流が不足すると、脳梗塞*や心筋梗塞のような重篤な脳心血管系疾患(心血管疾患)のリスクが高まります。福岡県久山町住民のデータ(久山町研究)によると、糖尿病患者では糖尿病でない人に比べ、脳梗塞の発生率は3.2倍、心筋梗塞なども2.6倍、有意*に高くなっていました。
でも心配ありません。最近では2型糖尿病患者の心血管疾患を減らせる血糖低下薬も使えるようになっています(後述)。
2型糖尿病で偏頭痛が出たら要注意
さて今回の本題です。
偏頭痛のある2型糖尿病患者では、偏頭痛のない人に比べ、心血管疾患を起こす危険性がさらに高くなっていることが分かりました。韓国で200万人以上の2型糖尿病患者を解析した結果です。以下、研究の概略をご紹介します。「心臓血管系糖尿病学」という学術誌に2022年12月9日付で公開されました。研究を行ったのは翰林大学付属第6聖心病院(韓国)のDae Young Cheon博士たちです。
同博士らは、心筋梗塞、脳梗塞とも起こしたことのない20歳以上の2型糖尿病患者220万人強を対象に診療記録から偏頭痛の有無を調べました。
その結果、偏頭痛の診断を受けていた6%の患者さんでは、およそ7年間で心筋梗塞が2.6%、脳梗塞が3.6%発生していました。それぞれ40人に1人強、30人に1人弱に発生したことになります。
そして偏頭痛のなかった人たちに比べると、心筋梗塞のリスクは相対的に18%、脳梗塞も11%増加しており、さらに心血管疾患で死亡するリスクも有意に14%高くなっていたのです。
でも心配ありません。先にご紹介した通り、現在では心筋梗塞や脳梗塞のリスクを減らせる血糖低下薬も承認されています(日本糖尿病学会「2 型糖尿病の薬物療法のアルゴリズム」Fig. 2「Step3」参照)。心血管疾患が気になるようであれば、今回ご紹介した論文とこのアルゴリズムを持ってかかりつけの先生に相談してはいかがでしょう?
<今回ご紹介した論文>
- 糖尿病の人ではそうでない人に比べ、脳梗塞や心筋梗塞などの発生率が2〜3倍高い(英語)[米国医学図書館ウェブサイト]
- 2型糖尿病の人に偏頭痛があると心血管系病のリスクが高まる(英語)[米国医学図書館ウェブサイト]。
糖尿病については「糖尿病治療薬に認知症リスクの差?ボケたくなければ知っておこう」、「血糖値高めのあなた、エクササイズは「午後」か「夜」に集中がお得。軽くてもOK」という記事も書いています。こちらもこちらも是非、お読みください。ではまた!
【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容はあくまでも「論文筆者」によるものです。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。あくまでもご自身の見解形成の参考としてお読みください。