鳥取県の中部で発生した地震と緊急地震速報
鳥取県中部を震源とする地震が10月21日14時7分にマグニチュード6.4の地震が発生し、最大震度6弱を観測しました(図1)。その後も余震が続いており、気象庁では1週間位は余震に警戒をと呼びかけています。
中国・四国の内陸部の地震
中国・四国の内陸部では大地震が少ないのですが、日本海側ではときどきマグニチュード7.2程度の地震が起きています。昭和18年9月10日に鳥取市付近で発生したマグニチュード7.2の鳥取地震により、鳥取市の中心部では壊滅的な被害が発生し、死者が1000人を超えています。ただ、太平洋戦争中の地震であったため、地震被害についてはほとんど報道されず、その時の観測資料や被害状況に関する資料もあまり残されていません。地震の規模は、今回の地震より大きかったのかもしれません。
緊急地震速報は予知ではなく地震発生後の速報
地震予知ができれば、それに越したことはありませんが、地震が発生したあとでも、大きな揺れが来る前に情報が入れば、被害を軽減する対応をとることができます。これが緊急地震速報です。
緊急地震速報は、平成16年に一部運用を開始し、平成19年10月より運用を開始していますが、このような地震速報は世界初の試みです。
ただ、誤解がかなりあります。
緊急地震速報は、地震発生後の情報ですので、予知ではありません。
緊急地震速報は、地震が発生してからの速報ですので、海溝で発生する巨大地震など、震源地から離れた場所に対して有効な情報です。
今回の鳥取県中部の地震のように、直下型の地震では、地震発生から大きな揺れがくるまでの時間が非常に短く、緊急地震速報が間に合わないという弱点を持っています。震度4を観測した大阪市や広島市では強い揺れの約40秒間の緊急地震情報の発表ですが、震源地に近い震度5以上の地域は、ほとんどが発表の5秒以内、あるいは、強い揺れが来たあとでの発表です(図2)。
一般向けの緊急地震速報と高度利用者向けの緊急地震速報
一般向けにテレビや携帯電話などを通じて提供されるのは、推定した震度が5弱以上のときだけで、その効果は最初から限定的です。
しかし、直ちに行動をとる高度利用者へは、推定震度が4以下である場合も含めて各地の震度や到達時間などの詳しい情報が提供され、直ちにコンピュータ制御を行って防災行動に入り、新幹線やエレベーターは直ちに停止の信号が出て止まります。とにかく停止をさせ、安全を確認して再開という行動は、費用対効果が非常に大きなもので、利用が急速に進んでいます。
つまり、テレビや携帯電話で緊急地震速報が伝えられるときには、すでに、高度利用者によって対応がとられ、効果がでています。
鳥取県中部で14時7分に発生した地震では、9回の緊急地震速報が高度利用者向けに発表されていますが、1回目は地震波を最初に検知した3.8秒後で、鳥取県中部が震度6弱というものでした。2回目は10.2秒後で、鳥取県中部で震度6弱から6強程度と少し強めになっています。そして、3回目は12.1秒後で鳥取県中部で震度6弱から6強程度で、これが緊急地震速報(警報)として、その概略が一般向けに発表されました。
災害に備えて
テレビや携帯電話で緊急地震速報を入手したとき、それが正しければ、すぐに大きな揺れがきます。自分の頭を手で守るなどやれることは限られていますが、それでも、死ぬところを重傷に、重傷を軽傷にするという、かなりの利用価値があります。
緊急地震速報は直下型では間に合わないことがある、あるいは、震度が1位の誤差があるという弱点を持っていますが、考える時間的余裕はありませんので、まず、緊急地震速報を信用して行動をとることが大切です。誤報でなければ命に関わる情報で、すぐに対応が必要です。
また、鳥取県、岡山県のうち震度5強以上を観測した市町村については、地盤が脆弱になっている可能性が高くなっています。雨による土砂災害の危険性が通常より高いと考えられますので、各気象台が発表する大雨警報・注意報の発表基準などは通常の7~8割に引き下げられました。被災地では、余震に対する警戒だけでなく、週明け以降に予想されている雨(図3)に関する警戒も必要です。