文京区の名店。初夏の和菓子「葛焼き」を、一炉庵さんならではの瓢箪型で召し上がれ。
お砂糖と葛の旨味に思わず目を閉じてしまうほど二十四節気ごとに上生菓子の意匠をかえることでも有名な「一炉庵」さんでは、上生菓子だけではなくその季節ならではの和菓子も勢ぞろい。上品かつ優しい口当たりの和菓子が多く、ところどころに職人さんの技がひかります。
そんな一炉庵さんの五月後半から販売される葛焼きは、お店の暖簾にも描かれている瓢箪型。葛焼きは直方体もしくは立方体が多く、上下側面の六面に上用粉などを直接まぶして焼くのですが、一炉庵さんの葛焼きは側面が湾曲しているため焼き目も控え目。その分葛の瑞々しさがダイレクトに伝わってきます。
一炉庵さんの葛焼きは、葛のみのもの・大納言入り・こしあん入りの3種類の品揃え。
一般的な葛焼きは葛にこし餡を溶かした羊羹のような仕上がりのものが多く見受けられますが、一炉庵さんの葛焼きはいずれも水仙系(水仙=葛製の透き通った和菓子)と、温度だけではなく見た目からも涼を感じられるのも素敵。
葛粉のみ、葛やお砂糖のバランス一本勝負のものは、心地よい甘さの中に葛粉の風味をしっかりと感じられます。なんとも言えない不思議な弾力を、三つのフレーバーの中で最も楽しめました。
大粒で立派ながらも、ふんわりとした軽やかさと素朴な味わいを感じられる大納言、噛んだ瞬間じゅわりと湧き出してくるようなこしあん、いずれも素材は共通しているのもののタイプが異なる個性なのですが、個人的には葛のみのものが最も好みです。
昔は、「あんこありき!こしあんが最も手間がかかってるんだからこしあん一択!」と思い込んでいた時期もありましたが(おそらく25,6歳の頃)、一周回ってその個性に目を向けられるようになりました。
葛焼きは表面への日入れ具合で、日持ちや味わい、歯ごたえや風味もかなり変化がついてまいります。同じ葛焼きでも、こうして同じお店の味わいと拘りを食べ比べできるのは嬉しいですね。同じ種類の和菓子でも微妙な差異で好みがわかれるのも面白いところ。
また、葛焼きは8月上旬や半ばあたりまで販売されるお菓子です。グラスに汗をかくような冷たいお茶と一緒に、そのお店の個性がまっすぐに伝わる旬の和菓子はいかがでしょうか。
<一炉庵>
東京都文京区向丘2-14-9
03-3823-1365
月~金 9時~18時
土日祝 9時~17時
定休日 火曜
東京メトロ南北線「東大前」駅より徒歩5分