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書痙の治し方

竹内成彦心理カウンセラー(公認心理師)

こんにちは。
精神医学と性格心理学に詳しい
心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。


今日は、書痙についてお話したいと思います。
書痙とは、字を書こうとする時、または字を書いている最中に、手が震えたり、痛みを感じたりして、字を書くことが困難となる書字障害のことです。

心の病、神経症=ノイローゼの一種です。

症状を訴える人のほとんどは、「ひとりで字を書くときは大丈夫なのですが、人から見られている状況では、手が震えてしまうので困る」と仰います。

原因は、緊張によるもの、交感神経が優位になり過ぎているから、というものなのですが、きっかけは人それぞれです。

結婚式に招待されて、式場に到着して、受付の人の前で字を書こうとしたときに、「字が下手なのは恥ずかしいな。上手に書かなくてはな」と強く思ったら、その結果、「緊張して大変に汚い字を書いてしまって恥かいた。それがきっかけで書痙になった」とおっしゃる人もいらっしゃいます。

ここで、補足説明なのですが、
ひとりで字を書いている時も、緊張していなくて安心した状態でも、「字を書こうとすると手が震える」という場合は、神経症=ノイローゼではない可能性が高いです。でも、こういう人は少ないです。いるにはいるのですが、少数です。ほとんどの人は、心因的なもの、神経症の書痙です。

書痙は、筋肉が緊張し、手が震えている状態なのですが、それは逃走(闘争)反応のひとつです。逃げるため、もしくは戦うための準備運動であり、いわゆる武者震いのようなものです。体が勝手に、逃げる準備、戦う準備をして、筋肉を震わせているということです。

私たちは、現在、大変な文明社会を生きているわけですが、身体そのものは大昔の石器時代とほとんど変わっていません。で、私たちの身体は、今も緊張状態に陥ると、逃走反応を示すのです。心臓をバフバフさせて、血という血を、筋肉に流し、筋肉を震わせ、いつでも逃げるもしくは戦う準備をするのです。

大昔はそれで良かったのです。石器時代の私たちが経験する緊張なんて、マンモスに追いかけられるか、野ウサギを追いかけるかぐらいしかなかったので、それはそれで意味があったのです。

でも、今は違います。私たちが経験する緊張で、筋肉にたくさん血を送って、筋肉を震わせても、何の役にも立ちません。無駄そのものです。でも、身体は昔のままですから、緊張するとそのような動きをしてしまうのです。それが人間という生き物の反応です。

よって、書痙は、緊張から、身体が逃走反応を示し、筋肉が震えることによって、起こるものであるということが言えます。

だから、書痙を治そうと思ったら、緊張しないこと、逃走反応を起こさないことが大切になります。

書痙の治し方ですが、

書痙は、緊張さえしなくなれば、ほとんどの人は良くなります。
よって、緊張を抑える薬、抗不安薬、精神安定剤を飲めば、症状は緩和します。

あと、局所性ジストニアという筋肉の動きに問題が生じることによって、書痙と言う症状を発症させる人もいます。こういう人は、ノイローゼとは言えないのですが、これも、お薬によって、症状が緩和します。詳しくは、医師にご相談ください。

薬は、対症療法ではありますが、薬を使ってでも、手を震わせることなく字をかけるようになれば、それが自信となって、やがては薬がなくても手を震わせることなく字が書けるようになります。書痙の症状は改善します。ですから、書痙を治したい方は、薬の服用も積極的に検討して欲しいと思います。

2番目の書痙の治し方ですが、おおもとである、緊張を排除すればいいのです。

書痙は、「手が震えたらどうしよう?いう焦りの気持ちが自分にプレッシャーを与え、よけいに手が震えるようになってしまう悪循環に陥るわけですから、だから「手が震えてもいいや、それがどうした、文句があるか」と思えれば、緊張から解き放たれ、書痙は良くなります。

逆に、手を震わせないでおこうと頑張ると、緊張が高まり、よけいに手が震えるようになります。そう、努力すればするほど事態が悪化する、努力逆転の法則が働くのです。

よって、手の震えを止める努力はしないほうがいいです。手は「好きなだけ震えろ」と開き直ったほうが、むしろ手は震えなくなります。これが書痙を治すコツです。

3番目ですが、日ごろから瞑想や自律訓練法をやって、
些細なことで緊張したり動揺したりしないよう、精神を鍛練していくことです。

そうすれば書痙は良くなります。今日、瞑想や自律訓練法をやって、すぐに書痙が治るということはないのですが、コツコツ瞑想や自律訓練法の練習を重ねていけば、必ず書痙は改善されていきます。

4番目ですが、人の目を気にしないことです。
「手が震えていると思われたっていいや」と開き直ることです。手が震えることぐらいで、人から嫌われたり馬鹿にされることなんてないし、もしも一部の人から嫌われたり馬鹿にされたとしても、それで「生きていけないことはない」と開き直ることです。

5番目は、ひとりフォーカシングすることです。
これは、手の震えに対して、手を人と見なして、手に優しく話しかけることです。「手くん、震えているね、緊張しているんだね。手くん、大丈夫だよ。誰も君を襲ったりなんかしないから、安心していいんだよ」と優しくさとすことです。
間違っても、手に向かって怒らないことです。「手よ、震えるな!」と命令しないことです。震える手に向かって、震えをしみじみと感じながら、落ち着いた気持ちで、優しく話しかけることです。そうすれば、手の震えは、少なからず収まります。

以上いろいろお話しましたが、書痙は治る病気です。
というか、治らなくても死ぬような病気ではないです。
だから必要以上に悩むことなんてないです。どうぞ、希望を持ってください。

私は、以前、ちょっとばかり症状の重い書痙の人に会ったことがありますが、その人は、自分が書痙であることに対し、全く悩んでないというか、気付いてもいないようでした。だから、その人にとっては、書痙という病気は世の中にないに等しいです。

なかなか、「そういう鈍感に人にはなれない…」と仰る気持ちは大変によくわかるのですが、「まぁ、そういう人も世の中にいるんだな」ということで、少しばかりは気楽に過ごして頂きたいと思う次第です。


今日も最後までお読みくださって、どうもありがとうございます。
心から感謝申し上げます。

      この記事を書いた人は、心理カウンセラー(公認心理師)の竹内成彦です。

心理カウンセラー(公認心理師)

1960年、愛知県名古屋市で生まれ育つ。1997年06月、地元愛知でプロのカウンセラーとして独立開業を果たす。カウンセリングルーム「心の相談室with」名古屋 の室長。臨床歴25年、臨床数15,000件を超える。講演・研修回数は800回、聴講者は10万人を超える。【上手に「自分の気持ち」を出す方法】など、電子書籍を含め、20数冊の本を出版している。カウンセリング講座などを開催し、カウンセラーを育てることにも精力を尽くしている。

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