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【オートバイのあれこれ】時勢に淘汰された悲運の名車。

Rotti.モトエンスー(moto enthusiast)

全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。

今日は「時勢に淘汰された悲運の名車。」をテーマにお話ししようと思います。

現在も「ヨンフォア」や「フォーワン」といった愛称とともに高い人気を誇る、ホンダの絶版バイク『CB400FOUR』。

▲今からちょうど50年前に登場した「ヨンフォア」。半世紀を経て、その価値はグングン上がっているようだ
▲今からちょうど50年前に登場した「ヨンフォア」。半世紀を経て、その価値はグングン上がっているようだ

(現在の目線からすると)古風なルックスで、またボディサイズが比較的小ぶりで親しみやすいということもあり、旧車に興味を持ち始めた人や女性ライダーからも注目を集めているようですね。

そんなCB400FOURが登場したのは、1974年(昭和49年)のこと。

ドリームCB750FOUR』に端を発するCBシリーズのうちの一つとして作られた『CB350FOUR』の後継モデルとして誕生しました。

▲こちらがCB350FOUR。CB750FOURの弟分として1972年に登場
▲こちらがCB350FOUR。CB750FOURの弟分として1972年に登場

ヨンフォアの見どころは、やはりその外観。

それまでの日本車には全くと言っていいほど見られなかった、グリップの低いハンドル、尻上がり状のシート、集合マフラー等が標準装備され、ブリティッシュ・カフェレーサーのようなスタイルに仕立てられていたのです。

パワーユニットは、先代の350FOURに搭載されていた空冷SOHC並列4気筒エンジンをベースに、排気量を347ccから408ccまで拡大。

同時にクラッチ容量を大きくするなどの改良も施され、堅実なアップデートが図られていました。

▲英国車のようなカフェレーサースタイルが特徴的だった
▲英国車のようなカフェレーサースタイルが特徴的だった

デビューを果たすと、ヨンフォアはそのカフェレーサーライクな佇まいから世間の注目を集めることとなりました。


しかし、そんなヨンフォアに早くも不運が訪れます。

「不運」とは、デビュー翌年の'75年に運転免許制度が改定され、中型限定区分が新たに設けられたこと。

この改定で生まれた中型二輪限定免許では、排気量が400cc未満のバイクにしか乗ることができず、それ以上の排気量のバイクに乗るためには、合格率が1%とも言われた限定解除試験をクリアしなければならなくなりました。

ヨンフォアの排気量は(惜しくも)408ccでしたから、大多数の「中免ライダー」は合法的にヨンフォアへ乗ることができなくなり、これによって販売実績が急落してしまったというわけです。

ただ、ホンダもこのルールチェンジを看過することはなく、新制度への対抗策として398cc版のヨンフォアを別途生産。

▲新しい免許制度に合わせ、ホンダは398cc仕様も用意。サイドカバーの色などが408cc版とは異なっていた
▲新しい免許制度に合わせ、ホンダは398cc仕様も用意。サイドカバーの色などが408cc版とは異なっていた

とはいえ、そもそも4気筒モデルのヨンフォアは製造コストが高く、そこへ398cc版も追加でこしらえたことはいっそうコスト高を助長することになり、結局ホンダは商品として採算が悪化しきったヨンフォアの生産を'77年で止めることになってしまいました。

法律の改定という不可抗力によってモデルライフを断ち切られてしまったヨンフォアは、ひとえに悲運のオートバイだったと言わざるを得ないでしょう。

しかしながら、ヨンフォアが短期間で消えたことにより、世間では「400マルチ」の再登場を望む声が上がり始め(ヨンフォアが生産終了したことで、新車で買える中型の4気筒モデルは消失してしまった)、この世間の動きが後の『Z400FX』や『CBX400F』の誕生へとつながっていきました。

▲ヨンフォア消滅から約4年後の1981年、『CBX400F』にてホンダ製400マルチが復活!
▲ヨンフォア消滅から約4年後の1981年、『CBX400F』にてホンダ製400マルチが復活!

ヨンフォアは、たしかにその境遇のみを切り取れば不運ということだけで片付けられてしまうかもしれませんが、次の400マルチモデルが作られる潜在的因子(背景の一つ)となり、そして、そこから生まれたバイクたちが'80年代前半の二輪市場を大いに沸かせたという事実まで含めて考えれば、ヨンフォアは「無くてはならない存在だった」というふうにも言えるのではないでしょうか。

画像引用元:本田技研工業

モトエンスー(moto enthusiast)

バイクを楽しむライター。バイク歴15年で乗り継いだ愛車は10台以上。ツーリング/モータースポーツ、オンロード/オフロード、最新バイク/絶版バイク問わず、バイクにまつわることは全部好き。

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