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「日韓首脳会談拒否」 攻守所を変え、今は日本が主張!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
前回の日韓首脳会談(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 来月大阪で開催されるG20サミット(20カ国・地域首脳会議)での安倍総理と文在寅大統領との首脳会談を日本政府は見送る方針と伝えられている。

 理由は、元徴用工の訴訟問題などで文大統領が日本側の求めに応じ、善処しないことに尽きるようだ。レーダー照射の問題や福島や茨城など8県産の水産物禁輸措置撤廃に向けた協議にも応じる構えがないことも一因のようだ。

 文大統領が日韓関係改善に向けて前向きの措置を取らないことから安倍総理は文大統領と会談をしても得るものがないと判断しているとも伝えられている。

 攻守所を変えると、今の日本の立場は4~5年前の韓国の立場の再現でもある。

 当時、韓国の大統領は今獄中にある朴槿恵氏であった。朴大統領は2015年11月に安倍総理との初の首脳会談に応じ、翌12月に慰安婦問題で日本と合意を交わすまでは日本国内で「反日大統領」「告げ口大統領」とのレッテルを貼られていた。そのバッシングは今の文在寅大統領の比ではなかった。

 それもそのはずで、竹島(韓国名:独島)に上陸した李明博大統領(当時)の後を継ぎ、2013年2月に大統領に就任するや翌3月1日の独立記念日の式典で「(日本と韓国の)加害者と被害者という歴史的立場は千年の歴史が流れても変わることはない。日本が歴史を正しく直視し、責任を取る姿勢を持たねばならない」と述べ、「慰安婦問題」への日本の対応を問題にしたからだ。

 翌月訪米した際にはオバマ大統領(当時)との会談で「北東アジアの平和のためにも日本は正しい歴史認識を持たねばならない」と日本の歴史認識を槍玉にあげ、米議会での演説では「歴史に目を閉ざす者は未来を見ることができない」と安倍政権の対韓姿勢を辛らつに批判してみせた。

 さらに、翌年の2014年11月のBBCとのインタビューでは「元慰安婦などの問題が解決しない状態では、首脳会談はしない方がましだ。首脳会談をしても得るものがない」と安倍総理との首脳会談に拒絶反応を示していた。この年の12月に訪韓したバイデン米副大統領(当時)に対して慰安婦問題が解決されない限り安倍総理と会談する意思がないことを伝えていた。

 朴大統領の頑なな立場は日本側にも直接伝えられていた。バイデン副大統領の訪韓2カ月前にソウルを訪れていた日韓議員連盟の額賀福志郎会長らに対して朴大統領は「(首脳会談には)慰安婦問題で日本が誠意を示し、環境を整えることが重要である」と強調し、「前提条件を付けるべきではない」とする安倍総理の無条件開催呼び掛けを拒否していた。朴大統領のこの姿勢は年が替わり、日韓国交正常化50周年にあたる2015年になっても変わることはなかった。

 朴大統領は新年辞で日韓首脳会談の条件として「何よりも日本の姿勢転換、変化が重要だ」と日本側による環境整備を求め、2月13日に訪韓した自民党の二階俊博総務会長(当時)一行に「元慰安婦の名誉回復を図る納得できる措置が早期に取られなければならない」と再三に亘って日本に注文を付けていた。

 「日本が善処しなければ、首脳会談には応じられない」との朴槿恵大統領の対応に、では、当時の安倍総理の立場はどうだったのか?

 韓国の「前提条件付」について「課題があれば、首脳同士がまず会って話をすべき」と、「無条件対話」を譲らなかった。一貫して「日韓に問題が、懸案があるからこそ、首脳同士が向き合って話をする」ことが重要との立場だった。

 安倍総理は今、北朝鮮に対しても「日朝間における相互不信の殻を打ち破るためには私自身が金正恩委員長と直接向き会わなければならない決意だ。条件を付けずに金委員長と会って、虚心坦懐、話をしたいと思っている」と無条件対話を呼び掛けている。何はともあれ、直接会って、率直に話をしてみなければ何事も前に進まないと考えている。

 朴槿恵大統領の場合は、2015年11月2日、それまでの立場を一転させ、安倍総理をソウルに招請し、初の首脳会談に応じている。

 翻意した理由については歴史問題などで対日共同歩調をとってきた中国が一足先に日本との首脳会談に応じたことへの焦りや日本の投資の鈍化や貿易の停滞、観光客の大幅な減少など経済的な側面、それに北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐる安全保障上の理由が挙げられていた。「日韓関係緊張は負債」(ラッセル米国務次官補=当時)と日米韓の協調体制を急ぐ米国からのプレッシャーを無視することができなかったことも理由の一つとされていた。

 元徴用工問題で「韓国が解決策を示すべきだ」(菅官房長官)「文大統領が責任をもって対応すべき」(河野外相)と再三にわたって韓国側に適切な対応を求めている安倍政権は朴槿恵政権とは異なり、文大統領との個別会談を拒否し、最後まで「毅然たる姿勢」を貫くことができるだろうか?

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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