バルサの戦術考察。WGの連携力、トライアングル、放置されている課題。
一人の個に頼っていては、強い組織は成り立たない。
2021年夏、リオネル・メッシのバルセロナからの退団が決定した。サラリーキャップの問題をクリアできずにいたバルセロナが、メッシを抱え続けるのは不可能だった。涙ながらに退団会見を行ったのち、メッシはフリートランスファーでパリ・サンジェルマンに移籍した。
メッシがいなくなり、バルセロナは苦しんだ。決定力不足、ゴール欠乏症に悩み、チームは宙をさまよった。指針をなくして、航路が定められなくなっていた。
組織として、得点を奪うパターンを決められたら、良かった。だがロナルド・クーマン監督、シャビ・エルナンデス監督、いずれも解決策は見つけられなかった。そして、この夏、ロベルト・レヴァンドフスキの加入が決まった。
■レヴァンドフスキの得点力
レヴァンドフスキはW杯中断期間前までに、リーガエスパニョーラ14試合で13得点をマーク。バルセロナで期待に応える活躍を見せている。
しかしながら、それは戦術的な構造の問題を根本から解決するものではない。即効薬はなく、チームとして、取組むべき課題が残されている。
シャビ監督は【4−3−3】を基本布陣としている。
重要なのは3トップの形成だ。レヴァンドフスキ、ハフィーニャ、ウスマン・デンベレが指揮官のファーストチョイスになっている。
シャビ監督は1対1の強い選手をWGに置く傾向がある。ドリブルができて、突破力のあるプレーヤーだ。
無論、それ自体が悪いわけではない。だがバルセロナが苦戦するのは、そこをストップされた時である。シャビ監督に「二の手」あるいは「三の手」がないのだ。
■WGの孤立問題
そのことは、昨季、顕著に現れていた。冬の移籍市場で獲得したアダマ・トラオレを、シャビ監督は当初重宝していた。右WGに据え、ひたすら1対1で仕掛けさせていた。
思い返せば、ビッグマッチとなったアトレティコ・マドリーとの一戦で、アダマは輝いていた。対峙したマリオ・エルモソを「チンチン」にして、サイドを制圧。幾度となくクロスを送り、バルセロナのチャンスを演出した。
(昨季のバルセロナとアダマのアイソレーション)
問題は、その対策がなされた際に起こった。
アダマの突破力を警戒するようになったチームは、「ダブルチーム」で彼を止めるようになる。「WG対SB」の1対1にするのではなく、CB、DMF、SMFのいずれかが協働してアダマをストップするようにした。
本来、この時に出番がくるのが、監督であり戦術だ。相手がダブルチームで対応してきているということは、ほかにフリーの選手が出来ていることを意味する。
(相手のダブルチームとフリーの選手)
フリーになった選手を使いながら、時間とスペースを攻略する。突破力のある選手がいるというのが、2倍、3倍の効果をもたらす。そのような戦い方が、必要なのだ。
■必要な連携力とトライアングル
だがシャビ監督は、そういった戦術を施していない。
現実的な解決策として、連携力のある選手の起用が挙げられる。3トップで、片方のサイドに突破力のあるウィンガーを、その逆サイドに連携ができるウィンガーを据えるのだ。
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