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銚子電鉄で「シニアモーターカー」として再出発! 「角ズーム」南海22000系の波乱万丈人生

清水要鉄道・旅行ライター
銚子電鉄で活躍する22000系

 令和6(2024)年3月29日、銚子電鉄の8年ぶりの新型車両として営業運転を開始した22000系。新型車両で、既存の車両より新しいとはいえ、昭和44(1969)年10月15日の製造から55年を迎える大ベテランだ。

 その前身は南海電鉄が高野山へと向かう山岳路線への直通(大運転)用に製造した「ズームカー」で、平坦路線での高速運転と山岳路線の急勾配・急カーブにも対応した高性能な車両だった。角ばった外観から「角ズーム」の愛称で親しまれ、高野線への行楽客だけでなく大阪都心部への通勤客の輸送でもその性能を発揮した。

多奈川線で活躍していた頃のモハ2252+モハ2202
多奈川線で活躍していた頃のモハ2252+モハ2202

 そんな角ズームの最盛期は短く、後継の2000系「ハイテクズームカー」が登場すると、改造の上で支線区への転用が始まった。大運転での継続使用を企図して改造された2200系、支線区の冷房化用に改造された2230系、貴志川線用の2270系と改造されたが、高野線に残った2200系も2000系の増備により支線に転出した。

観光列車「天空」
観光列車「天空」

 2200系・2230系は汐見橋線、高師浜線、多奈川線、加太線、和歌山港線で活躍を続けたが、このうち2200系2203編成は改造の上で平成21(2009)年7月3日より高野線の観光列車「天空」として運行開始。橋本~極楽橋間で座席指定列車として運行されている。

南海電鉄公式HP 天空

和歌山電鐵2270系「おもちゃ電車」
和歌山電鐵2270系「おもちゃ電車」

 南海の他の路線と接続しない離れ小島で、唯一電圧の違う貴志川線には、ワンマン化やそれに伴う扉位置の変更、非貫通化などの大改造を行った2270系が転用された。貴志川線が和歌山電鐵に移管されてからは、「いちご電車」「おもちゃ電車」「たま電車」「うめ星電車」「たま電車ミュージアム号(おもちゃ電車を再改造)」などユニークな改造を施されたリニューアル列車が続々登場。他にラッピング車もあって、実に多彩な姿となっている。

熊本電鉄200形
熊本電鉄200形

 2200系・2230系・2270系への改造から漏れた4編成は平成9(1997)年から翌年にかけて廃車されたが、そのうち22003編成は熊本電鉄に渡って200形となっている。譲渡に際して西鉄産業で改造を行い、3扉化やライト位置の変更により原型とは似ても似つかない姿となった。熊電ではたった一本の異端車で、基本的には予備車であった。南海に残った仲間たちよりも早く令和元(2019)年7月30日に引退し、同年12月に解体されて姿を消している。

銚子電鉄22000系
銚子電鉄22000系

 唯一他社に渡った熊電200形も消滅し、南海各線と和歌山電鐵に改造車が残るのみとなったかつての22000系。製造から半世紀が経過し、令和4(2022)年10月には、2000系をワンマン化して支線に転用する方針も示された。

 このまま消えゆくものと思われた22000系だが、齢55にしてはるか遠い銚子の地に新たな職場を求めることとなった。車齢こそ重ねているものの、全長17メートルの車体は銚子電鉄にはピッタリで、副電圧対応であることから600Vの銚子電鉄への対応改造も最小限で済むというところが、条件にあっていたようだ。

 22000系時代の塗装と車番を再現した第一編成は早くも銚子の風景に馴染みつつあり、銚子電鉄の新たな主役として活躍している。第2編成も購入済みで、現在は京王重機で改造中だ。第2編成が営業運転を開始すれば、銚子電鉄の保有車両は4編成となり、増便により現在の一時間おきの運転から30分おきの運転とすることも可能となる。

 製造55年目にして、大阪・和歌山から遠く離れた千葉は銚子に新天地を求めた「角ズーム」22000系。その末永い活躍を期待したい。

 

鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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