値上がりが続く有料道路に車の運転者が怒り爆発 ノルウェーでの車増加・環境対策
ノルウェーでの「気候・環境のための車政策」に、運転者から不満と憤りが爆発している。
1日、首都オスロでの政策を担う自治体議員が働くオスロ市庁舎と、国会議員が働く国会前では大きなデモが催された。
地元警察によると、足を運んだ人の数は3000~4000人。途中から参加する人などもいたため、通常のデモよりも正確な数がでていない。
デモは国会前では頻繁に開催されているが、今回のものは年齢層や国籍問わず、様々な社会階層の人々が集まっていた。値上がりが続く有料道路の政策に、「高すぎる」、「あまりにもひどい」と運転者がしびれを切らした。
現場はブーイングに包まれ、通常のデモよりも乱暴な言葉が市民から投げられていた。
10月1日より、オスロではラッシュアワー(6:30~9:00、15:00~17:00)に有料スポットを通過する度に、一般自動車であるガソリン車とプラグインハイブリッドカーは54ノルウェークローネ(およそ753円)、ディーゼル車は59ノルウェークローネ(823円)を支払うことになる新料金体制が始まった。ラッシュアワー以外の時間帯は、ガソリン車44ノルウェークローネ(614円)、ディーゼル車49ノルウェークローネ(683円)。ディーゼル車に対してはこれまでよりも、一気に24ノルウェークローネ(335円)の値上がりとなる。貨物自動車(大型車)の料金はさらに値上がる。
2019年にはオスロ市内だけで60か所の新しい有料スポットが増設される予定。
環境に優しいとされる電気自動車と水素自動車は課金の対象外。
オスロやベルゲンなどでは特殊な地形と冬の寒い天気のために、冬に大気汚染が悪化する問題が発生している。原因は主に排ガスを出す自動車とされている。
バスなどの交通機関や歩く市民に比べて、道路空間を車は占領しすぎることもあるため、電気自動車も含めて、「車の数を減らそう」という動きがでている。
車での移動に慣れていた人々は簡単に生活スタイルを変えることはできない。金銭的に余裕のある運転者だけが走り続けられる制度だとして、子どもがいる家族、電気自動車を購入する余裕のない運転者などからは不満の声があがっている。
一方で、この流れを批判すると、「大気汚染で呼吸困難に苦しんでいる子どもたちのことを考えていない、身勝手な人たち」、「では対応策を提示してほしい」と政治家や賛同派からは切り返されやすい。
「代替案は政治家が考えることだ」とする感情が高ぶっている運転者らは、議論で呆れられる傾向にもある。結果、Facebookなどに不満がたまった批判コメントやヘイトスピーチが溢れるというスパイラルが発生している。
オスロでは統一地方選挙で快挙を遂げた「緑の環境党」が集中的に批判を浴びているが、実際は右派・左派ともに、大多数の政党が同意して道路政策は実行されている。
憤る運転者らの声はこれまでテレビ局などの報道やSNSでは伝えられていたが、国会前に集まって大規模なデモが行われるのは異例だ。政治家に罵倒を浴びせる人々の光景は、「誰もが満足する政策は無理」という現実を反映していた。
Photo&Text: Asaki Abumi