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ついにマタニティ・ハラスメント、こんな体質で企業が業績を伸ばせるはずがない

前屋毅フリージャーナリスト

■妊婦にまでハラスメント

企業が業績を伸ばすために、いちばん大事なことは「現場力」である。現場に力のない企業は、どんなに有名だろうが、過去に実績があろうが、衰退していくしかない。

その現場力を支えるのが「人間力」だ。現場力は、現場で働く人たちの力が高い水準になければ強くならない。その人間力は、個人の力であり、チームワークである。

しかし最近の企業では、この人間力がどんどん落ちつつあるようだ。6月22日付『東京新聞』(電子版)は、「働く妊婦いじめ深刻 マタニティー・ハラスメント」という記事を掲載している。

同記事によれば、連合(日本労働組合総連合会)が今年5月に働く女性を対象に実施したインターネット調査で、妊娠経験者316人のうち26%がマタニティ・ハラスメントをうけていたと回答したという。マタニティ・ハラスメントとは、妊婦を対象にした嫌がらせやいじめのことである。

その内容たるや唖然とするしかない。連合の調査によれば、多いのは「心ない言葉」「解雇や契約打ち切り、自主退職への誘導」、さらには「重いものを持たされたり、目の前でたばこを吸われたりした」ということまであるらしい。

■ハラスメントの放置は現場力の低下になる

こんな言動をとる人間が、職場のチームワークを強くする役割を担えるわけがない。結束を強くして業績を押し上げていこうという力になれるわけがない。

人を人とも思わない言動、行為を平気でできる感覚は人間力の欠如でしかない。人と人とが認めあう人間力が必要なチームワークがとれないのだから、現場力も生まれるはずがないのだ。

そもそも、そんな言動を許している現場は結束力が弱い、というより結束力がない。現場力など、ありようもない。

マタニティ・ハラスメントだけではない。セクシャル・ハラスメントにパワー・ハラスメント、最近の企業ではハラスメントという言葉が普通に存在している。

そんなことより、いまの企業にはやらなくてはならないことが山積みのはずだ。それができない欲求不満がハラスメントというかたちをとっているようにもおもえる。

ハラスメントが目立つ、人間力に欠けた、現場力を発揮できない企業の将来性は暗い。それだけはまちがいない。

フリージャーナリスト

1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。立花隆氏、田原総一朗氏の取材スタッフ、『週刊ポスト』記者を経てフリーに。2021年5月24日発売『教師をやめる』(学事出版)。ほかに『疑問だらけの幼保無償化』(扶桑社新書)、『学校の面白いを歩いてみた。』(エッセンシャル出版社)、『教育現場の7大問題』(kkベストセラーズ)、『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『全証言 東芝クレーマー事件』『日本の小さな大企業』などがある。  ■連絡取次先:03-3263-0419(インサイドライン)

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