給付金を課税対象にすれば、届けたい人に多めに、届ける必要がない人には少なめに届く
岸田内閣になり、富裕層向けの政策と言われていたアベノミクスから、中間層向けの政策をとっていく方針を発表しました。コロナの感染拡大が抑えられつつある状況で、各党は衆議院選挙を見据えて、給付金について言及しはじめています。私達は、給付金の多寡で投票先を決めるべきなのでしょうか?そもそも、公平に給付金を分配する方法はあるのでしょうか。
■定額給付金は99.4%が受給した
総務省によると、令和2年度に実施された10万円の定額給付金は、99.4%の給付率となりました。当初は所得の多い人や公務員は辞退すべきといった論調もありましたが、蓋をあけてみれば、国民のほとんどが受け取っています。しかも、非課税です。
実は、非課税で給付金を支払うと、得するのは高所得の人たちです。日本は累進課税といって、収入が増えるほど所得税率が増えるようにできています。
例えば、年収5000万円の人は、所得税と住民税の税率を合計すると55%になります。すると、10万円を受け取った場合には、22万円のボーナスを受け取ったのと同じことになります。
一方、所得税と住民税の非課税世帯にとっては、もともと税負担がありませんから、10万円のボーナスを受け取ったことになります。
手取りは同じでも、実質的に受け取ったと金額の価値が変わってきています。ややこじつけがましい計算ですが、高所得者のほうが相対的に得しているのではないかということです。
■定額給付金は7割が貯蓄にまわった
マネーフォワードの調査では、定額給付金は7割が貯蓄に回ったそうです。貯蓄に回すということは、大なり小なりゆとりがあるということ。つまり、多くの人にとって、短期的には定額給付金の対象にする必要はなかった、と考えることができそうです。
(※参照 コロナ禍における特別定額給付金の家計消費への影響-家計簿アプリデータを用いた実証分析- 独立行政法人経済産業研究所)
もちろん、収入が減少する中で、定額給付金に手を付けなかったという理屈も通ります。
しかし、ケアすべきはコロナ対策で保育や学童、臨時休校などの子育て負担で働けなくなったり、収入を減らしたり、職を失った人たちを支えることだと考えると、国民全員に一律給付するというのは、あまりにももったいない使い方です。※その後、対象者を絞った給付金が追加で行われています。
■給付金を課税扱いにすれば、必要な人に必要な額が届く
現実としては、給付金の支給対象者を上手に納得感のあるように区分することは難しいでしょう。収入が減った人に限定した場合、どうやって収入減を把握するかという問題があります。そのため、給料の補填として課税対象の給付金を支払うとどうなるでしょうか。
非課税世帯は10万円を満額使えます。高所得世帯は55%を所得税・住民税として翌年納税することになりますから、手取りは4.5万円となります。
あるいは、今後の給付金支給に備えて、受領した給付金×2倍を所得として計上するような税制改正を行えば、高額所得層は10万円受け取りに対し、2倍の20万円を所得として計上します。その場合、20万円×55%として計算すると所得税と住民税が11万円になるため、受け取ると損、受け取らないほうが得することになります。
もちろん、国民、行政ともに確定申告の手間が膨大になる恐れもありますが、スマートフォンで電子申告できる時代ですので、事務負担の増加は少し緩和されると考えます。
将来的には、収入やお金の動きをタイムリーに把握する必要があり、マイナンバーと銀行口座を紐付かせた人だけに支給するという方法もありそうです。
あるいは、有効期限付きのクーポンを発行して使うことを前提に給付券を配布するなど、昨年よりも納得感のある給付に期待したいところです。
そして、間違っても配布を再委託しないと事業実施できない団体には依頼しないこと。地域ごとに事業者を分散するなどの対策も必要でしょう。無駄な税金をピンはねされないよう、入札の実施要領を再度チェックする必要があるでしょう。