特異点を持つブラックホールは実在しない!?代替天体の可能性と新天体「ネスター」
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どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「ブラックホールの新たな代替天体『ネスタ―』」というテーマで動画をお送りします。
様々な観測事実から、ブラックホールのような強大な重力を持った天体はほぼ確実に実在していると考えられるに至っています。
しかしブラックホールの内部構造には、理論上の問題点があります。
そこでブラックホール内部の問題点を回避するために、外から見た性質はブラックホールと変わらないが、内部構造は異なる、「ブラックホールの代替天体」が提唱されることがあります。
2024年2月には、非常に奇妙な構造を持つ「ブラックホールの代替天体」が新たに提唱されました。
本記事ではまずブラックホールという天体の基本的な性質をおさらいし、その後ブラックホールが存在する証拠と問題点に触れ、その代替天体についても解説していきます。
●ブラックホール内部の基本構造
ブラックホールは、太陽の30倍以上重い星が一生を終える際に、星の核が自らの重力で押しつぶされて、重力に反発する力が存在しなくなってしまい、永遠に1点に向かって圧縮が続いていると考えられている天体です。
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全ての質量が集中すると考えられている場所は「特異点」と呼ばれますが、実際に特異点を含め、その周囲を誰かが確認することはできません。
なぜなら特異点の周囲では想像を絶するほど重力が強くなっていると考えられているからです。
重力が強いほどその場所から脱出するために速い速度が必要になります。
例えば地球程度の重力でも秒速1km程度のとても速い速度が必要です。
ですがある程度ブラックホールの特異点に近づくと重力が強すぎるために、脱出速度が物質の速度の上限である秒速30万kmの光速すらも超えてしまっています。
重力が強すぎて脱出速度が光速と等しくなる領域は、「事象の地平面」と呼ばれています。
その領域以内ではあまりに重力が強すぎるために、あらゆる物質も、光も、情報も、そこから出てくることはないと考えられてます。
一度入ったら最後、完全に一方通行の世界で、光さえ抜け出すことができないので、外の世界から見ると真っ黒に見えます。
また、あらゆる情報も出て来ないので、外の世界からその内部を知ることは理論的に不可能です。
よって今紹介した内部構造も、あくまで理論的に予想されている内容に過ぎません。
●ブラックホールの予言と証拠
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アインシュタインの一般相対性理論において、その基本的な考えを反映した「アインシュタイン方程式」という重要な数式があります。
この数式は端的に言えば「物質の分布によって、どのように時空が歪むのか」を表しており、方程式の右辺は物質の分布を、左辺は時空の歪み具合(曲率)を表しています。
この物質の分布により生じる時空の歪みこそが、一般相対性理論で語られる「重力」の正体です。
アインシュタイン方程式は非常に複雑な方程式ですが、これを解くことで様々な解が得られ、そこから様々な天体や現象の存在が予言されます。
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1916年、ドイツの天文学者シュワルツシルトは、アインシュタイン方程式の解の一つである「シュワルツシルト解」を導きました。
この解から、「ブラックホール」という極めて特異な天体の存在が初めて予言されました。
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そんな仮説上の天体であったブラックホールですが、実際に「これはブラックホールのように非常に高密度で強大な重力を持つ天体が存在しないと説明できない」観測的な証拠が実際に得られています。
代表的な事例に「ブラックホールの周囲を公転する星々の運動の観測」と、「ブラックホールシャドウの観測」が挙げられます。
●ブラックホールの問題点
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理論的な予想と合致する強力な観測的証拠がある以上、少なくとも外から見た姿がブラックホールとほぼ等しい天体は、この世にほぼ間違いなく実在すると言って良いでしょう。
しかしブラックホールの表面と中身には、「事象の地平面」と「特異点」という、物理学上の重大な問題点があります。
事象の地平面は、脱出速度が光速と等しくなる球面です。
この領域以内に一度でも入ると、あらゆるものも、光も、情報も出て来れません。
詳しい説明はここではしませんが、この領域の存在が「ブラックホール情報パラドックス」などの重大な未解決問題が生じる原因となっています。
また、特異点は重力の強さが無限大となる点です。特異点を扱える理論は現状存在しません。
情報が出て来れない事象の地平面の内部に存在しているため、その外を語る上で既存の理論は問題なく扱えますが、事象の地平面以内の領域は深すぎる謎に包まれています。
●ブラックホールの代替天体
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観測的な証拠がある以上、ブラックホールのような性質を持つ天体が実在する可能性が非常に高いですが、その内部に理論的な問題があるのでした。
よって外から見た特徴は観測事実と矛盾がないものの、内部構造においてブラックホールの理論的な問題点を回避した、「ブラックホールの代替天体」が提唱されることがあります。
ここでは「グラバスター」と、2024年2月に新たに提唱された「ネスター」という関連する2つの代替天体を紹介します。
○グラバスター
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一般相対性理論のアインシュタイン方程式から導かれ、2001年に提唱された仮説上の天体「グラバスター(Gravastar)」は、「gravitational vacuum star(重力真空星)」を省略した名前です。
ブラックホールとほぼ同じくらいコンパクトであり、その周囲にはブラックホールとほぼ同等の重力的な影響を及ぼすため、仮にブラックホールの正体がグラバスターでも、これまでの観測に矛盾はありません。
しかしその中心部には特異点ではなく、宇宙の加速膨張の原因とされる「ダークエネルギー」が存在しています。
その斥力によって、天体が自身の重力で無限に圧縮され、特異点が形成されるのを防いでいます。
また、普通の物質から成る限りなく薄い皮で包まれており、事象の地平面を持っていないそうです。
よってグラバスターは理論上の問題点である、事象の地平面と特異点を回避しています。
○ネスタ―
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アインシュタイン方程式を解くことで、非常に特殊な構造を持つ仮説上の天体を新たに発見したと、2024年2月に発表がありました。
新たに存在が示唆された天体は、「グラバスター」がマトリョーシカのように入れ子(nest)構造で連なっているそうです。
このような性質から、「ネスタ―(Nestar)」と命名されています。
しかも理論上はグラバスターを幾重にも重ねることができるそうです。
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今回紹介したブラックホールの代替天体を含め、アインシュタイン方程式で導かれた未確認の天体は、あくまで「この世に存在してもおかしくはない仮説上の天体」に過ぎず、必ずしも実在しているとは限りません。
とはいえブラックホールのように、最初は信じられていなかった天体が実在していると信じられるようになる事例も確かにあります。
グラバスターやネスターのような天体が実在していたら本当に面白いですね。
そして今回の関連で、ブラックホールが実在すると信じられている観測的な根拠についてもあわせて紹介します。
https://iopscience.iop.org/article/10.1088/1361-6382/ad2317
https://aktuelles.uni-frankfurt.de/forschung/ein-stern-wie-eine-matrjoschka-puppe-neue-theorie-fuer-gravasterne/
https://www.space.com/the-universe/stars/black-hole-like-gravastars-could-be-stacked-like-russian-tea-dolls
サムネイルCredit: Daniel Jampolski and Luciano Rezzolla, Goethe University Frankfurt, edited