TKO木本氏投資トラブルに学ぶ「たったひとつ、絶対にやってはいけないこと」は何か
経緯:TKO木本氏 投資詐欺に遭い、友人のお金も溶かしてしまう
先々週あたりからワイドショーなどをにぎわせていたTKO木本氏の投資トラブルですが、今まで憶測の域を出なかったところ、『NEWSポストセブン』への本人のインタビューが掲載されて、様相が少しずつ明らかになってきました。
公式なリリースではないものの、おおむね今回のトラブルの全容が見えてきたように思いますので、ファイナンシャルプランナー目線で、コメントをしてみたいと思います。
基本的な流れとしては
- 木本氏、仮想通貨取引にハマる(あまりうまくいかなかった)
- 木本氏、A氏(FX投資)、B氏(不動産投資)と知り合う
- A氏、B氏に自分のお金を渡して代わりに運用をしてもらう
- 友人にも口コミで紹介してA氏、B氏へ投資をするように勧める
- A氏については時々配当のようなものがあったが運用の実態はなかった様子、B氏については支払いはずるずる先送りされ、こちらも運用の実態があったか疑わしい状態
- A氏、B氏ともに運用を業として行う登録はしていない
- A氏、B氏がいくら稼いだのか、いくら手数料を取ったのかはあいまい
- 木本氏本人の主張では、紹介した知人との間に入って手数料等を取ってはいない
- 木本氏は自分に責任があると、自分以外の投資額も含めて資金回収を行うとともに、自分以外の出資者へ返金を行い、返すことを約束している模様
ということのようです。(NEWSポストセブン記事をベースにいくつかの記事を総合して筆者が補筆したまとめ。本文は下記リンクから参照してください)。
NEWSポストセブン
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さて、この流れで「一番ダメ」だったのはどこでしょうか。ハッキリ、ひとつ言えることがあります。
解説:投資がダメ、なのではなく「知人に任せるがダメ」!
ワイドショーなどを見ていて気になったのは「投資がダメ」という印象を与えていることです。最大の問題は「投資がダメ」ということではありません。
今回の事件でもっともダメなところは「投資を知人に任せる」「友人に投資を知人に任せるようすすめる」構図にあります。
報道されているようなFX(外国為替証拠金取引)や不動産投資(を短期で行う)について、個人の運用方法としてはまったくオススメしません。しかし、金融機関にきちんと口座開設をして、きちんと業として登録を受けている相手と、直接取引している限りは全否定するものではありません。
しかし、自分のカネを友人レベルの他人に預けて増やしてもらおうとしてはいけません。
A氏、B氏が法律違反なのは明らかです。業として登録もしていない個人が、他人の金を預かって運用し報酬を得れば法律違反になりますが、前述の2回目記事では「(A氏と)契約書も借用書も交わしていない」と言っており、この時点で彼が未登録であったことを認識していたといえます。
別のところでは、「利益の半分をA氏が取ることになっていて」とカミングアウトしているので、金融機関のようなちゃんとしたルートを介さずに、友達に増やしてもらうという感覚があったのも明らかです。
この手数料の感覚もまったくダメダメで、金融機関と取引したらあり得ない高水準です(一般的には、資産残高の一定率を徴収する。投資信託なら運用残高の年0.5%以下でもおかしくないところを、利益の50%という雑な設定をしている)。
自分が下手だったからと知人にこのようなやり方で預ければお金が増やしてもらえると思っていたのなら、大間違いです。
そして、友達に代わりにやってもらうことが最悪にダメなことは実際にお金がどこにいくらあるかは不明となり、運用の報告は適当になることです。前述の記事でも、ときどき運用状況を聞いていたと述べていますが、A氏は適当にはぐらかし、それを木本氏はそのままにしています。
「今の残高はいくらなのか」「いくら儲かっているのか」が不明なやり方はお金を預かった側がズルをする余地を与えてしまいます。
B氏に至っては、具体的にどのような不動産投資を行うかを隠しています。特別な人しか話せないオフレコ案件なのだ、とそれっぽいウソをつきつつ、かつだからこそ儲かる話なのだと持って行くわけです。なかなか巧みなウソといえます。
とにかく、繰り返しますが「友人に預けて増やしてもらう」とか「友人に紹介された『友人の投資のすごいヤツ』に預けて増やしてもらう」ようなことは絶対にやってはいけません。
対策:自分で証券会社にNISA口座を作って、自分で入金、購入をすること!
「それじゃあ、どうすればいいのだ」という読者には回答を示しておきます。
個別の株を個人がやりとりするのは確かに大変です。そのために、投資信託という商品がきちんと設定されています。1つの投資信託を買えば世界中の株式等をちょっとずつ買うことができる仕組みです。例えば世界中の株式を購入して運用する投資信託を買えば1万円あたり2000円くらいでGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の株主になれます。トヨタ自動車やソニー、任天堂の株主にもなれます(1社あたり数円あるいはそれ以下ですが)。
投資信託なら、購入した金額、口数、日々の時価変動などが常に開示されます。運用がうまくいかなかった場合にもすべてオープンになります。隠し事はできません。資産は信託銀行に置かれ、金融機関サイドが勝手に触れないよう分別管理されます。
実はこの「運用がうまくいかなかったときもオープンにされる」ということは大事なことです。今回の件も、この友人AとBがきちんと情報開示をしないことは、彼らがウソをつき続けることを有利にしていますし、おそらくは意図的に隠していたと思われます。
まず、自分で直接金融機関に口座を開設します。「ネット証券 比較」などで検索し、2~3口座くらいまとめて作ってもいいでしょう。
次に「つみたてNISA口座」も合わせて開設します。これは運用収益が非課税となる口座なので、作らないより有利な条件です。また、購入対象商品も低コストの投資信託のみに限定されており、初心者が利用しやすい作りとなっています(NISA口座はひとり1つしか開設できません)。
金額はゼロ円からスタートします。その代わり毎月数万円の積立を設定してください。つみたてNISAは年40万円まで入金可能なので、月3.3万円までで十分、と考えてみましょう。100万円なくても投資はスタートできますし、むしろ月数千円のように少なくてもかまいません。
つみたてNISAの中で選択できる投資信託ならどれを選んでも困りませんが、「世界中の株式に投資をする投資信託」「アメリカや先進国にのみ投資する投資信託」「日本株だけに投資をする投資信託」「世界中の株式と債券を組み合わせて投資する投資信託(バランス型という)」あたりから、自分の好みに近いものを選ぶといいでしょう。
Yahoo!ファイナンスの「投資信託」カテゴリーにいくと
詳細検索:インデックス(運用スタイル:インデックス、信託報酬:0.5%未満、投資地域:グローバル(日本除く)
という検索用のショートカットがありますので商品選びの参考にしてみてください。
いくつか悩んだらいっそ、「5000円ずつ、4本買ってみる」のようなやり方でもかまいません。
そして、1カ月で倍にする、とか考えないことです。大もうけの期待こそ、「ウソつきな自称投資のプロ」があなたをだましてくる隙を作っているのです。
まとめ:先輩だろうが、絶対うまくいくと言われようが、友人関係でお金は渡さないこと!
今回の件は、投資に対するイメージダウンですが、そもそも「知人・友人レベルで代わりにカネを増やしてもらう」はダメだということを、しっかり肝に銘じておく機会となれば、社会的意義は少なかれあったと思います。
それが「オレ、投資うまいぜ」と自慢する先輩であっても、友人に紹介された自称プロでもダメです。「絶対にうまくいくって!」とかそういうセリフも信じてはいけません。
きちんと契約が存在して、お金の預かりがハッキリしていて、手数料が明確に示されていて、運用の上下についてすべてオープンになっている相手しか、お金を預ける投資対象になりえません。それは絶対に友人レベルでは不可能です。
ゴシップ報道の一部では、ここで追加で入金しておかないと全額戻ってこないかもしれないというような半ば脅しを受けて、追加入金をした後輩もあったといいます(真偽は不明ですが)。もちろん、追加入金することと、最初に預けたお金が戻ることには何の関係もありません。
「今、追加しないとダメになる」のようなパターンは金融詐欺の典型的な手口ですから、絶対に応じてはいけませんし、むしろ強気に出て「今の時価でかまわないから私の持ち分を解約して返せ」と言うべきです。(そもそも預けちゃいけないのですが)
毅然とした態度で返金を求めようとしても、友人関係(ケースによっては先輩後輩の関係)があるため、なかなか手を切れなくなってしまうものです。
とにかく、
「友人に金を渡して運用してもらう」
「友人の友人を紹介されて、金を渡して運用してもらう」
は絶対にやらないようにしてください。
2倍くらいにうまく増えることは絶対になく、たいていの場合、全額回収できず泣き寝入りすることになるでしょう。
もちろん友人関係は消滅することになること確実です。