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なぜ「クリぼっち」という言葉まで作って、クリスマス商戦を盛り上げようとするのか?

横山信弘経営コラムニスト
ひとりぼっちでクリスマスを楽しみたい……(写真:アフロ)

クリスマスを、ひとりぼっちで過ごす人のことを「クリぼっち」と呼ぶそうです。そしてこの市場を拡大させようと、今年はデパートや百貨店が「クリぼっち」向けの新しい商品やサービスを揃えてきたという。正直なところ、「そこまでやるか?」というのが私の個人的な感想です。

20~30代の男女にアンケートをとったところ、半分以上の方が「恋人とではなく、ひとりで過ごす」という結果が出ているそうです。したがって「クリぼっち」のマーケットは十分。それどころか、その総数は「恋人と過ごす」と答えた方の2倍近くにのぼるため、この市場に向けた商材を開発することはマーケティング的には合っているでしょう。

少子化の波は、クリスマス商戦にも深刻な影響を与えています。厚生労働省は先日、2016年に生まれた日本人の子どもの数が、統計を取りはじめた1989年以降、初めて100万人を下回りそうだと発表しました。親が子どもに、また、恋人が相手に買うクリスマスプレゼントの数は確実に減っています。クリスマスのときぐらい、彼氏、彼女とレストランで豪華な食事をしたい、ステキな場所で一緒に過ごしたい、というニーズも減っているのであれば、「おひとりさまクリスマス」の市場に目を向けるのも自然かもしれません。

バレンタインデーの市場も急速にしぼんでいることから、近年は「女子が好きな男子にチョコレートをあげる」という習慣が、「友だち同士でチョコやお菓子を交換する」という習慣に変えられつつあります。こうすることで、当該者(好きな男子がいる女子)以外にもこのイベントを楽しんでもらう工夫を商売側はしてきました。

しかし当然、このような商売側に都合のいい工夫をすることで、バレンタインデー独特のスリル感、ドキドキ感は一気に消失していきます。男子がたまたまデパートに行ったら、好きな女子がそこでチョコレートを買っていた、あれは誰にあげるチョコなんだろうかと、夜も眠られないような日を過ごす、ということもなくなります。滅多にない、女子から男子への愛情表明の機会を奪うことにもなるでしょう。

クリスマスも同じです。「クリぼっち」という習慣が浸透すれば、「クリスマスの日ぐらい誰かと過ごしたい」「クリスマスまでには恋人を作りたい」という意欲を多くの健康的な男女から奪います。昔なら「今年のクリスマスこそ、彼女と過ごしたい」といって、夏から恋人探しをするような男子たちが大勢いました。

クリスマスなど関係ない。自然の流れで素敵な出会いに巡り合いたいと願っている人は、いつまで経ってもその機会に恵まれません。これは「いい商品さえ作っていれば、勝手にお客様が寄ってくる」という妄想を抱く営業パーソンの思考と似ています。何らかの期限や心理的プレッシャーがないと、人はある物事に焦点を合わせにくいのです。

恋人がいてもいなくても「おひとりさまクリスマス」が意外といい、ということになれば、ガツガツした肉食的な思考がさらに若者たちからなくなり、少子化問題はさらに深化していくことでしょう。

恋人がいなくても、好きな人がいなくても、クリスマスやバレンタインデーを楽しく過ごせるように配慮するのは悪くないことです。しかし「今のままでいいんだ」「頑張らなくてもいいんだ」という思考が、もっと頑張ってもらいたい世代に浸透していくことが少し残念なのです。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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