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婚活を辞めました。一人で生きていく備えをもっと真剣に考えます~お見合いおじさん活動月報(10)~

大宮冬洋フリーライター
イラスト:つぼいひろき

 自分も楽しくて他人の役にも立てる趣味がほしいと思ったのです。恋バナと会食が大好きな僕が見つけたのが、お見合いおじさん活動:略称おみおじ。自分の周囲にいる独身男女に声をかけて引き合わせる活動です。

 僕は友人でもあるイラストレーターのつぼい氏と組んで、2014年の春からおみおじを楽しんでいます(今までの活動レポートはこちらこちら)。僕の人脈をオネット(大宮ネットワーク)、つぼいさんの人脈はツヴォイと称して、男女それぞれ4人の会員に良さそうな独身者を紹介しているのです。

 僕たちのおみおじによって結婚した人は今のところ1人のみ。でも、いまだ独身の会員からも感謝されていますよ。友人知人のお墨付きの独身異性と出会えることって、年齢を重ねるごとに少なくなっていくからです。おみおじで恋愛感度を向上させ、別の場所で見つけた相手と結ばれた「卒業生」は過去4人います。「私は婚活自体に向いていないことがわかった」と去って行った人も4人いますが、それもまた有意義な自己発見ですよね。

 結婚願望がある独身男女に優しくお節介する! 愛すべき隣人の婚活を結婚相談所やネットだけに任せておかない! 全国に広まってほしい「おみおじ」の実例をリポートします。

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「とても条件がいい」年上男性からプロポーズされても…

 我がオネットで退会者が出ました。いわゆる成婚退会ではありません。婚活自体を卒業する、と言うのです。その女性は、僕が住む愛知県で一人暮らしをしている小島尚子さん(39歳)。趣味も多く、飲食好きで、きっちり働いている魅力的な女性です。

 オネットに最も長く在籍している会員さんであり、僕は尚子さんに何人かの男性を紹介して来ました。いずれも恋愛には発展していません。

 行動力のある尚子さんは、オネットの他にもプロの結婚相談所に登録し、何人もの男性と会って来たのです。お見合いパーティーに参加したこともあります。デートする人はできても、交際する気にはなれなかったようです。

 最近、尚子さんはある結婚相談所で出会った「とても条件がいい」年上男性からアプローチを受け、何度かデートをしていました。少し話を聞くと、真面目で穏やかな男性のようです。僕は「結婚したほうがいい。ダメだったら離婚すればいいんだから」と背中を押しました。今思えば、強引すぎるアドバイスだったかもしれません。尚子さんは暗い表情で「でも、恋愛感情が持てない」と何度も言っていたのが印象的でした。そして、こんなメールを送って来たのでした。

 

<最初は恋愛感情がなくても、会う回数重ねれば何かしらそういう感情は芽生えてくるのかなぁと思ったのですが、ダメでした。いざ結婚が迫ってくると、窮屈に感じてしまいました。お相手の方も私がそういう感情を持っていないことに気づいていたので、そこが一番傷ついたと言っていました>

 結婚をしたい理由は人それぞれです。「どうしても子どもが欲しい」「仕事を辞めて家に入りたい」という気持ちを最優先して、恋愛感情を持てなくても安定収入のしっかりした男性と結婚する女性もいます。ただし、「肌を触れ合いたくない」「彼と一緒にいるところを友人知人に見られたくない」というレベルだと、自分が苦しいし相手に対しても失礼ですよね。尚子さんは、最後の最後で「いい人であっても、男性として好きになれないと夫婦になれない」という気持ちに従ったのです。

「結婚しておけば仕事が辛くなったときに辞めやすい」と安直に考えていた

 尚子さんは、30代後半で熱心に婚活していた理由を「結婚しておけば仕事が辛くなったときに会社を辞めやすいと考えていた」と率直に明かしてくれました。出産・子育てに専念することも念頭にあったのだと思います。しかし、来年に40歳になるという年齢に達し、結婚という形にこだわる必要を感じなくなったそうです。

<生涯ひとりで生きていく可能性を考えて、仕事や老後の備えなどもっと真剣に考えていきます。そういう生き方を自分自身が認めていなかったんだろうなと今では感じています。これからの人生を、心身ともに健康で、他人に迷惑をかけないように楽しんでいこうと思います>

 正直言って、尚子さんからこれほど明るくて力強い文面のメールをもらったのは初めてです。尚子さんは今まで「恋愛感情を大切にできない」ことに葛藤しながら婚活を続けていたのだと思います。やることはやり切りましたね。婚活はもういいでしょう。そして、さっぱりと迷いがなくなった今こそ、お互いの自立心を尊重し合える素敵なパートナーが見つかる可能性が高まっている気がします。オネットは離れても、尚子さんと僕はずっと友だちです。

 さて、尚子さんの入れ替わりというわけでないのですが、以前に成婚退会したはずの原田直美さん(37歳)が「オネットに戻りたい」と連絡をくれました。地方在住の研究者男性と結婚するべく会社を辞めたのに、直前になって彼が情緒不安定で話し合いすらできない状態になり、破談になったとのこと。

 長く勤めていた会社を辞めてしまい、現在はIT関連会社で契約社員として働いている直美さん。収入が半減してしまったため、一人暮らしもできずに実家での生活を続けています。さきほど婚活卒業宣言をした尚子さんが危惧していた状況に、いま直美さんは陥っているのです。

 とはいえ、直美さんはまだ37歳。「生涯ひとりで生きていく」と覚悟するには早すぎますよね。かわいらしい外見でもあるので、年上男性から好かれやすいという強みもあります。今回の婚約破棄で得た教訓もあるでしょう。なんとか応援したいです。直美さんとの面談内容は次回にご報告します。

(僕とつぼいさん以外の登場人物は仮名です)

※原田さんの仮名は「尚子さん」でしたが、今回卒業した女性と重複してしまったので、「直美さん」と改名しました。

フリーライター

僕は1976年生まれ。40代です。燦然と輝く「中年の星」にはなれなくても、年齢を重ねてずる賢くなっただけの「中年の屑」と化すことは避けたいな。自分も周囲も一緒にキラリと光り、人に喜んでもらえる生き方を模索するべきですよね。世間という広大な夜空を彩る「中年の星屑たち」になるためのニュースコラムを発信します。著書は『人は死ぬまで結婚できる』(講談社+α新書)など。連載「晩婚さんいらっしゃい!」により東洋経済オンラインアワード2019「ロングランヒット賞」を受賞。コラムやイベント情報が読める無料メルマガ配信ご希望の方は僕のホームページをご覧ください。(「ポスト中年の主張」から2017年3月に改題)

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