前線停滞で雨の季節 秋雨前線の走りというより梅雨前線の末期に似ている
猛烈な暑さ
東~北日本の広範囲に大雨と暴風をもたらした台風9号から変わった低気圧が日本の東海上に去りました。
このため、8月11日(水)は北海道と東北北部を除いて、台風が持ち込んだ暖気に強い日射が加わって猛烈な暑さとなり、熱中症の危険性が非常に高くなっています(図1)。
この猛烈な暑さは11日までで、12日からは例年並みの暑さの日が続く見込みです。
北海道と沖縄を除いて、ほぼ傘マーク(雨)の日が続きますが、これは、西日本を中心に前線が停滞するためです(図2)。
梅雨前線と秋雨前線
日本は四季(春・夏・秋・冬)ではなく、春から夏に移り変わるときの梅雨、夏から秋に移り変わるときの秋雨をいれ、六季(春・梅雨・夏・秋雨・秋・冬)という見方もあります。
夏が過ぎると、北から寒冷前線が南下して寒気をもたらし、だんだん南に後退してゆく太平洋高気圧との間に前線が停滞しやすくなります。
これが秋雨前線による秋雨(秋霖)です。
太平洋高気圧が次第に張り出してくる春から夏にできる梅雨前線は、前線活動が西日本から中部日本で顕著であるのに対し、秋雨前線の活動は北日本や日本海側の地方で顕著になるという差もあります。
また、だんだん暖かくなる梅雨は、大気中に含まれる水蒸気量が増えてくる末期に大雨となりますが、だんだん寒くなる秋雨は、末期に大雨ということはありませんが、増えてくる台風接近によって大雨となることがあります。
太平洋高気圧の西日本への弱い張り出し
令和3年(2021年)の梅雨明けは、沖縄・奄美地方と四国地方で平年より遅かったものの、その他の地方は平年より早くなっています(表)。
ただ、梅雨明け後の太平洋高気圧の張り出しは主として北海道で、西日本への張り出しは弱いものでした。
このため、梅雨明けしたといっても日本列島に北から寒気が流入しやすい状態が続き、大気が不安定となって局地的に激しい雨が降る日が多くなっていました。
晴れて気温が高い日が続いていましたが、優勢な太平洋高気圧に覆われるという典型的な夏とはなっていなかったのです。
令和3年(2021年)の立秋は、8月7日ですので、8月12日頃からの停滞前線は、秋雨前線ということになるのでしょうが、今後、太平洋高気圧が西日本へ張り出してきますので、実態は梅雨前線の末期に似ています。
つまり、前線の活動が西日本から中部日本で顕著となり、梅雨末期のような大雨が降る可能性がでてきました。
コンピューターでは、8月11日から13日までの72時間に、九州を中心に300ミリを超える雨が降るとの予想もあります(図3)。
気象庁は、早期注意情報で、5日先までの警報級の可能性を「高」「中」の2段階で表示しています。
これによると、大雨警報を発表する可能性が「高」なのは、8月11日に鹿児島・富山・青森の各県、12日に九州北部と鹿児島県、13日に九州北部です(図4)。
このほか、「中」の県も多く、図は省略しましたが、15日も九州北部と山口県で「中」です。
しばらくは、西日本を中心に大雨に警戒が必要となります。
次の台風発生は
台風に関して言えば、気になる動きがあります。
中部太平洋から日付け変更線を越えて熱帯低気圧が入ってくることです。
タイトル画像の右端にあるLが低圧部(周囲より気圧が低いものの中心がはっきりしない領域)ですが、この入ってくる熱帯低気圧に対応しています。
この低圧部または熱帯低気圧が、西進しながら発達して台風となり、日本に接近する可能性がでていることです。
まだまだ先の話であり、不確実性が高いのですが、日本付近で前線が停滞しているところに台風接近という最悪の事態まで考えられます(図5)。
まずは、12日(木)から来週にかけての停滞する前線に関して警戒が必要ですが、次に発生する台風、台風12号に対する注意も必要です。
タイトル画像、表の出典:気象庁ホームページ。
図1、図2、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。