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阪神タイガース・望月惇志投手のルーキーイヤー 自己採点は30点

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
4月3日、社会人・カナフレックス戦で“プロ初登板”した望月投手。

阪神鳴尾浜球場でトレーニングをしていた選手たちも引き揚げ、そろそろ本格的な“冬休み”に入る阪神タイガース。1年目の選手を中心とした強化練習は20日の午前中で終了し、高山選手、板山選手、望月投手らは早々に実家へ帰りました。まあルーキーたちの帰省は毎年早いものですけどね。

まだ寮に残っている選手や、自宅から通って練習中の選手もいますが、きょう24日でそれも終わり、年明けの新人選手入寮まで虎風荘は静かになります。そういえば20日は、寮や球場の周囲にある木々の剪定が行われていました。揃えるだけでなく、枝を全部はらった木もあってスッキリ。お正月前に必ず散髪させられた子どもの頃を思い出します。

ところで“冬休み”と書いたものの、のんびり休んでいられないのが選手たち。特にことし、金本監督から言い渡されたノルマを携えて帰っていく強化指定のメンバー24人は無休かも…。このノルマ、個々に課せられたスクワットの重さが「自身の体重×2以上」というもの。とにかく休んだら2月1日までに達成するのが困難であろう数値で、権田トレーナーによれば、既にクリアしている選手、近い選手、まだ遠い選手、さまざまだそうです。頑張ってください。

最後が1軍での登板だったルーキーイヤー

さて、この選手はまだ達成していないので、帰省中も必死で取り組むと言っていました。きょうは横浜創学館高校からドラフト4位で入団した、望月惇志投手(19)のプロ1年目を振り返りましょう。

2月の安芸キャンプは別メニュースタートだったこともあり、初めて打者に投げたのは3月15日のフリー打撃でした。“プロ初登板”は4月3日の社会人・カナフレックスとの交流試合(鳴尾浜)。先発で2回まで投げ無安打無失点、最速は146キロ。ウエスタン・リーグ公式戦初登板となった4月16日のオリックス戦(神戸第二)は、中継ぎで1イニング。ここも無安打です。同20日の広島戦(由宇)、さらに5月12日のオリックス戦(鳴尾浜)と中継ぎ登板しています。

初登板初先発は、3月15日のカナフレックス戦。
初登板初先発は、3月15日のカナフレックス戦。

社会人やBCリーグとの交流試合で計4試合の先発(最長5イニング)を経て、6月8日のオリックス戦(鳴尾浜)が公式戦4試合目での初先発。5回を投げ3安打3三振1四球で無失点、初勝利を挙げました。ここから最後まで、すべて先発で投げ続けた望月投手。しかも最終登板だった9月10日の中日戦(鳴尾浜)では9回117球、3安打6三振3四球の1失点で初完投勝利!

ウエスタン公式戦の成績は14試合に登板して63回1/3を投げ、5勝3敗。被安打70(被本塁打3)、奪三振35、与四球22、与死球2、失点40(自責27)、防御率3.84という内容。それにしても失点と自責点の差がすごいですね。

そして9月30日に1軍昇格、翌10月1日の巨人戦(甲子園)で正真正銘のプロ初登板を果たします。これがチームにとって今季最終戦、福原投手の引退試合でもありました。

打線が8回までに6点を取り、岩貞投手、福原投手、安藤投手が無失点リレーを続けて迎えた9回表、甲子園のマウンドへ上がった望月投手。まず5番のギャレット選手に投じた初球は149キロの真っすぐ、これでストライクを取って大きな拍手。追い込んでの3球目が153キロ!スタンドに静かなどよめきが漏れます。

ギャレット選手はカウント2-2から空振り三振で1死、続く代打・亀井選手には左前打を許すも、7番・中井選手は二ゴロ、ついで代打・堂上選手を初球の真っすぐ(150キロ)を打たせて遊ゴロ。打者4人に18球、見事な無失点デビューで、チームは完封勝利のシーズン締めくくりとなりました。

自分の球に納得できなかった1年

では、自身の1年目を採点してください。100点満点で?「何点ですかねえ。うーん、30点」。迷った結果は結構きびしい点数でした。マイナス70点はどういうところ?「最後、秋季キャンプまでしっかりできなかったってのもありますし、あとは1イニングだけでしたけど1軍で投げるのは投げられた、でももっと投げたいという気持ちもあるので」。なるほど。

惑星のようなボール…。イニング間の投球練習中で、ちょうど内野の送球が写りました。
惑星のようなボール…。イニング間の投球練習中で、ちょうど内野の送球が写りました。

「試合の中でも、入団前にスカウトの方から『真っすぐの精度を上げることと、真っすぐを生かせる変化球を』と言われていたんですが、その変化球の精度がまったくでした。自信のある変化球もないし…。まず真っすぐの精度を上げないと。自分でも手応えは全然ありません」と、ちょっと意外な言葉です。

「1軍で先発したいと思ったけど、それもできなかったので。そういう“結果も”そうですが、自分のボール自体も納得していないから30点ですね」。じゃあ、1年目に1軍で投げたという事実のみの点数なんでしょうね。

印象に残っていることは?「一番は、やっぱり1軍のマウンドですね。パッと浮かぶのはそこですかね」。最速153キロの真っすぐでインパクトは十分でしたよ!しかも0点に抑えたし。最終戦の1イニングだけだったけど、1軍のマウンドを経験できたのは大きい?「はい、本当にありがたいです!使っていただいたこと。来年、生かしていかないと」

パーソナルクエスチョンです

ここで少し中休み。野球以外のことも聞いてみました。食べ物の好き嫌いについて。まず好きなものは何?「たこ焼、ですかね」。へえ~関西の文化といっても過言ではない、たこ焼。それは嬉しいじゃないですか。「もともと好きで」。…あ、そうなの。「こっちに来てからも何回か食べましたよ」。嫌いなものは?「貝類があまり好きじゃないです」

1月の入寮時。持って来た野球ノートを手にする、まだ高校生だった望月投手。
1月の入寮時。持って来た野球ノートを手にする、まだ高校生だった望月投手。

寮の食事で好きな料理ってありますか?「鶏のステーキというか、グリル?いや。鶏のソテー?なんて言うんだろう」。つまり鶏を焼いたものですね。味付けは何だろうとつぶやいたら、逆に「塩コショウ?」と聞かれました。私はわからないんですけど。でもわりとシンプルな感じみたいですよ。メニューとしては何て名前なのかなあ。よく出るの?「あんまり出ないんです」。あら、それは余計に待ち遠しい。

さあ、次は好きな女性のタイプです。「ええっ?えーと…うーん。タイプ、ですかぁ」。これまで何人もの選手に投げかけた質問、ここまで悩む19歳も珍しい。性格でも、外見で細いとかポッチャリとか、髪が長いとか。いろいろ例を挙げてみたところ「背が高くてスラッとしてる人!」という答え。タレントさんや女優さんで好きな人は?「あんまり、この人ってのはいないです」

もらって嬉しいプレゼントは?「横田さんは、なんて答えたんですか?」。実は好きな女性のタイプで、たとえば横田選手は「白い人」っていう、今でも思い出し笑いをしてしまう答えがあったと伝えたからだと思います。あ、色が白いという意味でした。その横田選手は何だったか?もう3年前なので忘れてしまって。

まだ「プレゼントかあ。何だろう?何が嬉しいか」と思案が続くので、過去を振り返って「まあ『もらえるものは何でも嬉しい』という模範回答が多いですね」と助け船を出したら素早く飛び乗ってきた望月投手。「はい!それで」。了解です(笑)。ちなみに、もらって困ったプレゼントはありますか?「そんな、いただいて困るものなんてないですよ」。大変よくできました。そして好きな色は黄色、これは即答です。

最後の質問、クリスマスのご予定は?「…練習」。ちょっとだけ空いた間は、気にしないことにしましょう。

1試合でも多く1軍で投げる!

20日に1年目の選手をはじめとする強化練習を午前中で打ち上げ、午後1時前にはもう板山選手らと鳴尾浜をあとにしました。この日は約30メートルの距離でキャッチボールをしています。本人が「秋季キャンプまでしっかりできなかった」と話していたように、秋季キャンプ途中で右腕の蓄積疲労によりノースローとなった望月投手。今月中旬にキャッチボールを再開したばかりです。

その距離が少し伸びた20日の練習後、こんなふうに言っていました。「ここまで来れているので、すごくいいです。強いボールも投げられましたし。万全の状態にできるよう、トレーナーの方と話し合いながらやっていきたい」。もう肩もヒジも問題ないと明るい声です。スクワットもみんなと同じようにやっていますからね。

初めてのオフは、母校のグラウンドなど場所を見つけながら自主トレをして、年明け8日からもう強化練習が始まるので鳴尾浜へ戻ってきます。「課せられたノルマがすごく高いので、今の数値を落とさないようにやっていきたい」と意気込んでいました。

20日のお昼すぎ、笑顔で帰省していきました。
20日のお昼すぎ、笑顔で帰省していきました。

では最後に2年目のシーズンに向けて抱負をお願いします。「来年は1試合でも多く上で投げること。それが一番の目標です。数字とか、そういうのじゃなくて」。ことしの1月、入寮の日に望月投手が「高校時代、投手の先生に言われたことが印象に残っていて。『打たれるのは甘いボールじゃなくて、気持ちの弱いボールだ』と。その通りだと思ってノートの表紙の裏に大きく書いた」と話していたのを覚えています。

だから、いつも自分に言い訳はしません。また1軍初登板でもお分かりのように、物おじしない真っすぐな性格が、きっと周りにも可愛がられる要因なのでしょう。「大先輩相手でも自然にきちんと会話できるところがすごい」と感心する先輩もいましたよ。体も、そしてピッチングも、のびのびと成長していってほしいですね。2年目のモッチ―に、乞うご期待!

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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