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20年強にわたる携帯電話普及率の実情をさぐる(先進諸国編)(2024年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
人類史上かつてないほどの文化の変動をもたらした携帯電話。その普及率は(写真:アフロ)

国際電気通信連合(ITU:International Telecommunication Union)では定期的に主要国(ITU加盟国)の携帯電話やインターネットに関する統計資料をまとめ、各国の動向を推し量れるデータを公開している。今回はその中から「先進諸国の携帯電話普及率の推移」を2024年の時点で抽出し(収録されている値は2022年分まで)、状況の精査を行う。

「先進(諸)国」との言葉には色々な定義、見方があり、その定義に関して意見の対立も見られる。そこで今回は明確な基準として「G7対象国」を用い、その各国を対象とする。ロシアを加えてG8でもよいが、ロシアの携帯電話普及率の動向は、むしろ新興国のそれに近い。よって同国動向は別の機会に譲ることにする。

まずは現時点で公開されている最新値、2022年における携帯電話普及率。この携帯電話には従来型携帯電話(フィーチャーフォン)以外にスマートフォンなども含む。また、単純に「契約者数÷人口」で普及率を算出していることに注意。後述するが100%を超える値を示す国もある。

↑ 携帯電話普及率(契約数/人口、G7対象国)(2018~2022年)
↑ 携帯電話普及率(契約数/人口、G7対象国)(2018~2022年)

日本の170.0%をはじめ、複数国が100%を超えている。これは「契約数÷人口」から算出しているのに加え、プリペイドの扱いやSIMカード(契約者情報を記録したICカード)の互換性への対応が各国で異なっていることを起因とする。要は一人が複数枚のSIMカードを「契約」し、電話をかける相手によってカードを切り替え、少しでも安い料金で利用しようとする「生活の知恵」的な使い方による。例えば1人が3枚のSIMカードを使い分けているとすれば、契約数は3、人数は1人なので、普及率は300%と算出される。

これを2000年以降の動きについてグラフ化したのが次の図。

↑ 携帯電話普及率(契約数/人口、G7対象国)
↑ 携帯電話普及率(契約数/人口、G7対象国)

ドイツでは2009年から2010年にかけて大きく普及率が減少している。これについてITU側では2010年以降は普及率の計算の際に用いる契約数に関して、非活性化されているSIMカードの契約数は除外したためとしている。ドイツ国内の携帯電話事情に大きな変化が生じたわけではない。また他国でも一部で似たような動きを示しているが、同様の計算方法の変更や、違法SIMカードの取り締まりによる規制強化などが影響している。携帯電話の普及そのものが減少に向かっているわけではない。

グラフのスタート時点、つまり2000年の時点ですでに、少なくとも2割強、イタリアやイギリスでは7割超もの普及率を示している。上昇傾向は各国でさほど大きな違いはなく、先行する形を見せているイタリア・ドイツ・イギリスでは2007年から2008年で早くも頭打ち、上昇率の鈍化を示している。SIMカードの使われ方でやや違いを見せるが、この3国では携帯電話はほぼ飽和したようにも見える(ただしドイツの一時的停滞動向に関しては上記説明の要因も理由の一つ)。特にイギリスでは2009年以降ほぼ横ばいを維持している(こちらは特に特記事項はなく、計測方法の変更による横ばい化ではない)。

一方、フランス・日本・アメリカ合衆国などは、引き続き上昇傾向に。日本では2011年以降は上昇カーブがやや上向きになっているが、多分にスマートフォンの普及浸透が貢献したのだろう。もっとも日本の場合は普及率計算時に通信用データカードもカウントされており、それが値を上乗せしている感も多分にある。

日本やフランスなどでは、どの程度の値が天井値となるのか。そしてその域に達した場合、携帯電話を中心に据えた社会情勢と人々のライフスタイルはいかなる変化を見せるのか。すでに消費性向に大きな変化をもたらしていることから、注目が集まる話には違いない。この数年の動向を注意深く見守りたいところだ。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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