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日米の大寒波 不安定な極渦が原因

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
欧州に向かう機上からみた日本海の雪雲
飛行機は成田を飛び立ち、一路ロシアへ(黄色矢印が航路)
飛行機は成田を飛び立ち、一路ロシアへ(黄色矢印が航路)
すじ状雲の出発点(ロシア沿海州)
すじ状雲の出発点(ロシア沿海州)

表紙の写真は欧州に向かう機上からみた日本海の雪雲です。飛行機は成田を飛び立ち、一路ロシアへ向かいました。

気象衛星でみると、この日は日本上空に強い寒気が流れ込んだ影響で、日本海には一面、すじ状の雪雲が広がっていました。

天気予報ではおなじみの画像ですが、実際、雪雲の上を飛んでいくのは初めての経験です。

日本海を北上するにつれて、雪雲が少なくなっていくことがはっきりと分かり、ロシア大陸が見えたころには、眼下に日本海が見えました。

ちょうど、ここがすじ状雲の出発点です。

青森市は世界一の豪雪都市

日本は欧州や北米と比べて、低緯度に位置しながら、世界で有数の豪雪地帯です。青森地方気象台の調べによると、人口30万以上の都市で、積雪が1メートルを超えるのは世界でも、青森市と札幌市だけだそうです。とくに、青森市の最深積雪の平年値は1メートル11センチで、札幌市よりも多く、青森市は世界一の豪雪都市としています。また、昨冬は青森県の酸ヶ湯(すかゆ)で国内最高の積雪5メートル66センチを記録しました。

なぜ、日本は世界で最も雪が降る場所なのか?

その秘密は日本海にあります。日本海の海面水温は真冬でも10度前後あり、シベリアから吹き出す寒波は日本海を吹き渡るあいだに、湿気を帯び、次第に雪雲が成長していきます。機上で見ていると、日本海は一面、雲に覆われていたのに、ロシアでは雲ひとつなく、眼下には凍てつく大地が広がっていました。

もしも、日本海がなかったら、日本の冬は今よりも雪が少なくなる一方で、寒さがより厳しくなることでしょう。ちょうど、韓国の冬のように。

大寒波の原因は不安定な極渦にあり

この冬は日本と北米は寒冬、欧州は暖冬となっていて、北極の寒気は現在、日米の2極化が明瞭です。この「寒気の2極化」を説明するのはとても難しいのですが、北米の大寒波について、米海洋大気局(NOAA)は次のように解説しています。

極渦のかたち(左:2014年1月 右:2013年11月)
極渦のかたち(左:2014年1月 右:2013年11月)

冬の北極は太陽の光が当たらないため、極めて気温が低くなり、「極渦(きょくうず)」と呼ばれる低温の渦が発達します。上右図は通常みられる極渦の様子を示したもので、極渦(紫色)が北極の中心付近にコンパクトにまとまっています。一方、上左図はこの冬の極渦の様子です。極渦が弱く、不安定のため、大気の流れが大きく波打ち、北極の寒気が日本と北米に流れ出しています。

このような不安定な極渦は最新の研究で、「Warm Arctic cold continents」と呼ばれているそうです。直訳すると、”暖かい北極と寒い大陸”でしょうか。専門家は北極が温暖化している影響で、極渦が弱く、不安定な状態になり、その結果、中緯度帯が寒冷化すると説明していますが、まだ確かなメカニズムは分かっていません。

雪の少ないスキー場、ゲレンデの一部で地面が露出(オーストリア)
雪の少ないスキー場、ゲレンデの一部で地面が露出(オーストリア)

一方で、この冬、欧州は暖冬です。スキー場は雪が少なく、ゲレンデの一部は茶色の地面が露出していました。身近な現象だけに注目しがちなのは人の常ですが、世界は広い。

日米の寒冬、欧州の暖冬、すべてを説明できる答えは、なかなか見つかりません。

【参考資料】

Wobbly polar vortex triggers extreme cold air outbreak(米海洋大気局)

青森地方気象台「あおもりゆきだより 2010年第8号」

写真はすべて著者が撮影したものです。(ベルト着用サイン消灯時、デジタルカメラにて)

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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