「暫定王座じゃ納得できる訳ない!」ついに、決着戦のリングに上がる銀次朗
今年1月6日、ダニエル・バラダレスの持つIBFミニマム級タイトルに挑んだ重岡銀次朗(23)だが、相手の戦意喪失によって無効試合となった珍事は記憶に新しい。
オープニングベルからリズムに乗った銀次朗は、スピードと的確なパンチでチャンピオンを圧倒した。デビュー前から〈必ず世界を獲る逸材〉と謳われた男に相応しい展開だった。ジャブもボディーブローもカウンターも冴え、バラダレスをキャンバスに沈めるのは時間の問題――と思われた。
しかし、第3ラウンド2分40秒過ぎ、バラダレスは自ら銀次朗に頭突きを見舞う。そして、「頭が痛い、試合続行は不可能」とアピール。レフェリーがドクターチェックを受ける間も、バラダレスは自身の“重いダメージ”を強調した。
当初はドローで王者の防衛と判断されたが、後に覆り、ノーコンテストとなる。試合直後から再戦を希望していた銀次朗だが、バラダレスは「左鼓膜を負傷し、リングに立てない」とIBFに診断書を提出。その結果、元同級王者で3位のフィリピン人選手、レネ・クアトロと4月16日に暫定王座を懸けて戦った。
そのクアトロ戦で、銀次朗は初めてのダウンを経験する。初回に右ストレートを喰らったのだ。ボクシンググローブを嵌めたアマチュア時代から負けを知らない銀次朗は、ここから冷静に試合を建て直し、7回に1度、9回に2度、元世界王者のフィリピン人選手をキャンバスに沈めてIBFの赤いベルトを手に入れた。
そして、来る10月7日、因縁の相手であるバラダレスとのリターンマッチを迎える。
銀次朗は言う。
「自分の納得のいく動きをしたいです。KOで勝てたとしても、自分が満足のいかない内容だったら喜べませんから。自分のボクシングをするために、冷静に戦いたいですね。
4月の試合は、思い返すと力みがあったかもしれません。いつも通りの自分の戦いをしたいです」
現在、銀次朗はフィリピン人の世界ランカーを3名呼び寄せて、激しいスパーリングを重ねている。
「とてもいい練習が出来ています。ケガに気を付けて、万全を期してリングに上がりますよ。今の課題は徹底的にフットワークを磨くことです。
対戦するのがバラダレスだろうと誰だろうと、やることは一緒です。いつも僕は、相手をぶっ潰すつもりで戦っていますから。1月のノーコンテストは、もう済んだことです。ただ、今、僕は暫定チャンピオンで、向こうが正規王者です。"暫定"なんて、いらないですから、正規チャンピオンの座を奪い取るだけですね」
銀次朗は力強く結んだ。
「毎回思うのですが、成長した自分、強くなった自分を見せたいですね。ノーコンテストは、ひょっとしたら神が与えた試練だったのかもって感じました。あの悔しさを乗り越えてステップアップした姿をご覧頂きたいです」
10月7日、大田区総合体育館。銀次朗のハードパンチが唸り声を上げそうだ!