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PDCAはもはや「意識高い系ワード」に成り下がった

横山信弘経営コラムニスト
PDCAの「P」は、何だったか……。(写真:アフロ)

PDCAはもはやバズワード?

ここ数年、多くのベストセラーが世に出たおかげで、古典的なビジネスツールである「PDCA」というワードが脚光を浴びています。

しかしながら流行りすぎたせいで、現場ではよくわからず使っている人が多く、PDCAは、もはや「意識高い系ワード」のようなものに成り下がっています。いわゆる「アサイン」「エビデンス」「イシュー」「コンセンサス」「スキーム」……等と一緒。使っていると意識が高そう、「できるビジネスマン風に見られそう」という印象を抱かせる言葉の一つになってしまいました。

似た言葉に「イノベーション」があります。この言葉もベストセラーのタイトルにも使われ、ビジネス現場で大流行。「組織にイノベーションを起こそう」などと軽々しく使う経営者が増えています。しかし本当の意味でのイノベーションをするなら、組織形態をリセットするほどの覚悟が必要です。

PDCAとは?

PDCAは、本来とても有効なビジネスツールです。

PDCAとはPlan(計画)・Do(実行)・Check(検証)・Action(改善)のこと。このサイクルを正しくまわすことで問題が解決したり、目標が達成していきます。ビジネスの現場のみならず、日常の生活にも役立つツールで、ダイエットするにも、資格勉強するにも使える考え方です。

私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。目標を絶対達成させるわけですから、当然、クライアント企業の現場では、大きなものから小さなものまで、いろいろなプロジェクトのPDCAサイクルを細かくまわしています。

簡単に解説しましょう。

まず、PDCAをまわすには、Plan(計画)を正しく設定することが大事。期限と数値目標はセットです。「積極的にやっていこう」「できる限り徹底してくれ」というのはPlan(計画)ではありません。そして「みんなでやっていこう」という曖昧な訓示もご法度。いつまでに、誰が、何を、どの状態にまでにするのか。細かいところまで落とし込まないと、前へ進むことができません。

Do(実行)は、やり切ることが基本。中途半端に行動をしているなら、次のCheck(検証)ステップへいきようがありません。

Check(検証)は、必ず数値でやること。印象論を排除することが大事で、最も難しい部分です。なぜ外部の人間がコンサルティングしたほうがPDCAサイクルを正しく回せるかというと、私情や現場の状況を考慮しないからです。クールに数字だけを使って検証するには、物事を客観視できる、ある種の冷徹さが求められるのです。

Action(改善)は、Plan(計画)と同様。期限と数値目標はセットです。

このようにPDCAサイクルをまわすのは、簡単そうで、実際はとても難しい。面倒な作業パーツをひとつひとつ組み合わせて、チーム全体でやっていかなければならないからです。

現場ではどのように使われているか?

上記の理由から、PDCAサイクルをまわせない人・組織がとても多いのが現実です。

「PDCAを意識しながら、やっていこう」

などと部長や課長は口にしますが、だいたい口で言っているだけです。組織のマネジャーの大半が、どうやったらPDCAサイクルをまわせばいいかもわかっていません。面白いことに、PDCAサイクルがまわっているかどうかの「検証」さえできないのです。

実際に現場でどのように使われているかというと、

1) Planもないまま何となくの現状把握 

2) 抽象的な改善案の提示

3)「PDCAをまわしていこう」の声掛け

この3ステップです。例文を書きますと、

「営業の商談情報は、システムを使ってちゃんと部下と共有しているんだろうな」

「はい。時間があるときに共有して分析しています」

「時間があるときにじゃなくて、定期的にやっていこうか、定期的に」

「わかりました」

「部下の話はちゃんと聞いているのか」

「意外と、指示することのほうが多いです」

「今の若い子を指導するときは、ちゃんと話を聞いてやらないとダメだぞ。何度も言ってるじゃないか」

「はい。心掛けます」

「今年もあと少し、社長もしっかり結果を出せと言っているから、PDCAをまわしてやっていこう。いいな」

「はい。PDCAをまわしていきます」

現場では、こういう会話が大半です。99%がこのスタイル。何の目的で、いつのタイミングに、誰が、どのような方法で、どんな情報を共有するのか、決めていないまま「ちゃんと共有しているか?」と上司は現状を確認しにいきます。会話のスタートがおかしいので、その後もずっとおかしいままです。

何となく会話が成立しているように見えますが、客観的な視点で、そして冷徹に観察すると、何のための会話かよくわかりません。

お互いの関係を構築するための表面的なコミュニケーションを目的とするなら「〇」ですが、マネジメントという観点からなら「×」です。

「言葉遊び」はもうやめよう

実行力がなく、意識ばかり高くて、情報をインプットしてばかりの人は、「PDCAではなく、DCAPなのでは?」「GをつけてGPDCAがいいらしい」「ActionじゃなくてAdjustだよ」などと講釈ばかり口にします。

どうでもいいことです。基本ができていないのに新奇性の高い情報をキャッチし、知識をひけらかす人は痛々しいだけ。

多くのビジネスツール・技法が開発され、書籍やブログで公表されていますが、現場では相変わらず「ロジカルシンキングしよう」と感覚的に言うマネジャーや、「組織改革をしよう」と言っても、まったく「改革」などできない経営者が大半なのです。

言葉に踊らされず、基本を押さえること。何事も「守破離」の精神が不可欠です。「守破離」の『守』のステージで最も大事なのは、その言葉の定義を揃えることです。PDCAを正しくまわしたいのなら、まずはひとつひとつのアルファベットに込められた言葉の定義を正しく捉えることからはじめましょう。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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累計40万部を超える著書「絶対達成シリーズ」。経営者、管理者が4万人以上購読する「メルマガ草創花伝」。6年で1000回を超える講演活動など、強い発信力を誇る「絶対達成させるコンサルタント」が、時代の潮流をとらえながら、ビジネスで結果を出す戦略と思考をお伝えします。

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