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猫を愛する全ての飼い主に捧ぐ 世界が猫好きだけならいいけれど...外に出すリスクとは?

石井万寿美まねき猫ホスピタル院長 獣医師
(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

大学の獣医学部の同級生で、行政で働いている獣医師のAさんからメールが届きました。

「猫の飼い主って、近所の人にウチの子は、受け入れてもらえると思っているのかな」と。行政には、猫を外に出すことの苦情が多く届くので、本当のことを知ってほしいとAさんは訴えた。そこで今日は愛猫を外に出すと近所の人はどう思っているか、考えてみましょう。

英ウェールズのブリジェンドに住むクリスさんと恋人は、4歳になる白いベンガルとロシアンブルーの雑種猫“ガンダルフ(Gandalf)”を飼っている。英時間10日、いつものように外出したガンダルフは1時間ほど屋外を散策し、飼い主のもとに戻ってきた。(略)

飼い主が袋を開けると、そこには驚きの内容を綴った3枚の手紙が入っていた。

「どうかあなたの猫を、家の中から出さないでください。この猫はほとんど毎日私の家に来ています。テーブルの上の食べ物を奪い、ソファで爪を研いだりノミをばらまいたりしています。」

「窓を開けっぱなしにすることができません。もうこりごりです。もしこの猫を家の中で見つけたら、次は猫を遠い場所へ連れて行くと約束します。」

「あなたの猫は夜も私の家の中にいて、キッチンで寝ているのです。ちゃんと餌を与えた方がいいですよ。」

ガンダルフの飼い主クリスさんは、この手紙を見てかなりの衝撃を覚えたという。

出典:【海外発!Breaking News】外出したペットの猫、差出人不明の手紙を首輪に付けて帰宅「次は猫を遠い場所に連れて行く」(英)

なぜ、猫を外に出すと問題か(近所編)?

上記の記事は、イギリスですが、日本でも同じようなことが起きています。

動物好きの人(私を含めて)は、動物は愛おしくて、こんなかわいいものは素敵、と思っています。その一方、世の中には、動物、その中でも猫が苦手な人がいます。そして、猫アレルギーの人もいます。ですが、猫 好きの人は、そのことを忘れがちです。

家で猫にちゃんとご飯をあげているし、寝ているのだから、ちょっとぐらいと外に出すのは、いいよね、と思いがちです。そこで、近所での問題点を考えてみましょう。

・ウンチやオシッコを近所の家の敷地でします。

家で排泄をしているから、外でしないと思っているかもしれませんが、猫はテリトリーのために、尿でニオイつけをする場合もあります。この糞尿の問題が、一番のトラブルです。

・家の中に入ってきて、ノミなどを落とす。

・家の中に入ってきて、テーブルなどの食べ物を食べる。

・家の敷地に入ってきて、毛を落とす。

・敷地内にいる犬に喧嘩を売る。

などがあります。猫の飼い主からすれば「愛猫なので、それぐらい許してよ」と思うかもしれないですが、これが現実です。

なぜ、猫を外に出すと問題か(猫編)?

上記は、ご近所との問題でしたが、猫について考えてみましょう。猫が外に出たがるので、仕方がないと思っていませんか。猫を外に出すと以下のような危険なことがあります。

・猫が交通事故に遭う可能性があります。

・猫が伝染病である猫エイズや猫白血病に感染するリスクがあります。

・猫が、人混みの多いところに行けば、新型コロナウイルスに感染する可能性もあります。

・愛猫が、猫同士の喧嘩に遭うかもしれません。

・猫嫌いな人に、虐待されるかもしれません。

このようなことに遭う可能性がありますので、猫を完全室内飼いしてあげてくださいね。

猫が外に出たがるのをどうすればいいか?

ご近所に迷惑になるので、室内飼いをしようと思うけれど、脱出するので、どうすればいいか問題ですね。根気よく以下のことをしてあげてくださいね。

・避妊・去勢手術をしましょう。

避妊・去勢手術をしていないと、発情があるので、交配相手を探しに、外に出ます。

・運動不足になるので、上下運動を中心に遊んであげましょう。

上下運動だと、結構、短時間でエネルギーを消費します(関節炎を持っている猫は、かかりつけ医と相談してくださいね)。

・猫とスキンシップをして、猫を安定させましょう。

・どうしても、出たがる場合は、かかりつけ医に相談して、安定剤がサプリメントから薬までありますので、内服も考えてくださいね。

猫を外に出さないメリット

私たちの病院で、20歳以上生きている子は、全員、完全室内飼いです。そして、全部の子が、避妊・去勢手術をしています。完全室内飼いのメリットを考えてみましょう。

・猫同士の伝染病である猫エイズや猫白血病になる確率が低いです(母子感染がないと、ほぼならない)。

・猫が24時間家にいるので、様子がよくわかります。

食事の食べ方が悪いとか、寝ないでウロウロしているとか、オシッコの量が増えたとか、水を飲む量が増えたとか、細かい点がわかります。

・外に出していると、猫の具合が悪くなって自宅に帰って来られないことがありますが、室内飼いはそういうことはありません。

外と家の生活の2重生活をしていた時代は、猫は忽然と姿を消すと言われていましたが、このためなのです。

まとめ

この地球中には、いろいろな人が住んでいます。猫が苦手な人もいることを理解して、飼いましょうね。ウチの近所は、理解のある人ばかりだと思っているかもしれませんが、ただ、飼い主には言い難いだけなのかもしれないのです。行政で働いている獣医師のAさんのところには、苦情が寄せられているのですから。愛猫が、他の人にそのように思われないように、完全室内で飼ってあげてくださいね。愛猫が、ご近所で迷惑がられているってよくないですからね。

まねき猫ホスピタル院長 獣医師

大阪市生まれ。まねき猫ホスピタル院長、獣医師・作家。酪農学園大学大学院獣医研究科修了。大阪府守口市で開業。専門は食事療法をしながらがんの治療。その一方、新聞、雑誌で作家として活動。「動物のお医者さんになりたい(コスモヒルズ)」シリーズ「ますみ先生のにゃるほどジャーナル 動物のお医者さんの365日(青土社)」など著書多数。シニア犬と暮らしていた。

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