70得点し、フランチャイズ新記録を樹立したMVP男
先制点は西地区最下位に沈むサンアントニオ・スパーズが挙げた。
現地時間1月22日にペンシルバニア州フィラデルフィアで行われたゲームは、1Q終了時、34-35でフィラデルフィア・セブンティシクサーズがリードを許していた。ジョエル・エンビードは、その時点で24得点。
東地区3位のシクサーズは、首位ボストン・セルティックスを4ゲーム差、2位のミルウォーキー・バックスを0.5ゲーム差で追っていた。TipOff時点でシクサーズは28勝13敗。スパーズは8勝34敗と、徐々に実力差が表れる展開となった。
シクサーズのエース、ジョエル・エンビードは、ハーフタイム時点で34得点。シクサーズは2点差(41-39)で僅かにスパーズを上回っていたが、下位チームの思いがけぬ善戦が光っている印象だった。
しかし、エンビードが千両役者ぶりを発揮する。
3Qに入ると、シクサーズのホームであるウェルズ・ファーゴ・センターを埋めた20,511人の観客は、エンビードの活躍にヒートアップした。シクサーズの背番号21がフリースローを打つ度に「M!」「V!」「P!」「M!V!P!」の大合唱がアリーナに木霊する。昨年に続き、今シーズンもMVPを狙えというファンの願いが、ウェルズ・ファーゴ・センターを揺さぶる。
同Q残り4分58秒にフリースローで50得点、その27秒後にジャンプショットで更に2点を加えると、俄かに“記録樹立”を意識したファンの期待が会場を包んでいく。
エンビードは3Qをフル出場し、15本のシュートを放って10本成功。同Qが終了する7秒前には鮮やかに3ポイントも決め、3Qのみで25点を叩き出した。最終Qを迎えるにあたって、1994年3月16日生まれのカメルーン人センターは59得点していた。
4Qスタート時、ニック・ナース監督はエースをベンチに下げ、温存策を取ったかに見えたが、残り6分38秒で再投入され、5分16秒のプレーでシュート成功が6分の3、フリースローは6本中5本を決め、11得点。
結局、エンビードはトータルで36分38秒コートに立ち、70得点、18リバウンド、5アシストをマーク。この活躍で彼は、ウィルト・チェンバレンが1967年12月16日に達成した1試合におけるシクサーズの最多得点である68を上回った。シクサーズ自体もスパーズを133-123で下した。
試合後、コート上でメディアからインタビューを受けた折、チームメイトから祝福のシャワーを浴びせられ、エンビードは笑顔を見せた。その姿は、2014年に全体3位でシクサーズにドラフトされて以来、ずっと同チームに在籍して研鑽を積んできた男が成し遂げたものの大きさを物語っていた。
プロになってからの丸2年は、ケガに苦しみ、出遅れた。当初、身体が細かったエンビードは、いつしか仁王のような出で立ちとなった。
「ウィルトはNBA、そしてバスケットボール全般の歴史ですべて勝ち取った人。その人と比べられるなんて、素晴らしいことだよ」と語った背番号21。カメルーン人エースは、選手としてだけでなく、人として多くを伝えていた。