平野美宇「自分の記事かなり見る」 アイドルから学んだ19歳の意外な思考回路
「自分のことが書かれた記事はかなりチェックします(笑)」
卓球女子団体の東京オリンピック日本代表に内定している平野美宇は、ニュースのチェックを日頃から欠かさない。
「見出しになることを記者に言えば、自分の記事が増える」と考えているからだ。そうした思考になったわけを探ると、「アイドルの影響」だと明かす。
彼女の趣味がアイドルであることは卓球ファンには広く知られている。
しかし、“ただ単にアイドルが好き”なだけではないようだ。4月で20歳を迎える平野の素顔に迫ると、アイドル好きが高じて自己プロデュースに生かす意外な姿が見えてきた。
髪色の話題で知ってもらえればいい
――どんなアイドルが好きなんですか?
「秋元康さんのプロデュースするアイドルグループは幅広く見ていて、乃木坂46が好きなんです。K-POPだとIZ*ONEとかも。Hey! Say! JUMPのコンサートにも行ったことがあります」
――コンサートにも行かれるんですね。
「コンサートに行くと本当にすごいなと思って、力をもらうことが多いんです。例えばドームでコンサートをすると5万人が集まりますよね。後ろから真ん中ぐらいの席だと、舞台にいるアイドルは米粒くらいしか見えません。でも、こんなに感動をさせて、明日からまたがんばろうって思わせてくれる。そう思うと、こっち側(客席)にいるだけじゃもったいないというか……。自分も向こう側(舞台)の人間になれる立場にならないといけないと思うんです」
――アイドルのように影響を与えられる選手に?
「アイドルの力には比べ物にならないけど、自分は卓球でそういう立場になりたいです。たまに、アイドルが好きだとか髪の色がどうとか、ネットニュースでいろいろと言われるんですけど(笑)、最初はそれでもいいんです。そういうところから“平野美宇”を知ってもらうのもありだと思います。でも、卓球選手は卓球が強くないと意味がない。見ている人の心が動くようなプレーをして、たくさんの人に感動を与えたいです」
「見出しにされた方が得じゃないですか」
平野はアイドルをただ好きで見ているだけではなく、自分に立場を置き換えて物事を考えていた。そして、卓球をメジャースポーツにしたいという思いもある。本人は「むしろ私が注目されれば、卓球をもっと人気スポーツにできる。それも一つの役目」と語る。だからこそ、自分の発言がメディアにどのように出るのかも気にしている。
――ネットニュースもチェックされるようですね。
「自分のことが書かれた記事はかなりチェックします。どうやって書かれているんだろうとか、コメントはどこが使われて、どこがカットされているのかを見て、なんでそうなったのかを考えるのが好きなんです」
――ご自身に対するユーザーからのコメントとかも?
「ネットニュースのコメントもよく見ます。確かにそうだなーとか、なんだこれ?と思うこともあります。見過ぎるのは良くないと思いますが、少し見て参考にします。それに、せっかくインタビューを受けているなら、見出しにされたほうが得じゃないですか。10人くらいでインタビューを受けていたら、誰かの言葉が見出しになりますよね。できるだけ見出しになるようなことを言ったら、自分の記事も増えるとか、どれが見出しにしやすいかなとかはよく考えます」
アイドル研究からの「学び」とは
――そうした思考を持つようになったのは誰の影響ですか?
「もともとはアイドルの影響です。アイドルの研究をするのが大好きで、『この子はこうしたらもっと伸びるのに』、『こういう発言をするから取り上げられるんだな』、『なんでダンスや歌はできないのに、総選挙で上位なんだろう』とか、そういうのを考えるのが好きなんです(笑)。バラエティー番組を見ていても、ここでこの発言をすればいいのにとか考えちゃう。クセでそうなっちゃってる部分もあるかもしれません。勝手にそういうふうに見ているんです。だから自分の中でもこの発言をしたら、記者は書くかな、使われるかなと考えちゃうんです」
――ツイッターに「ネットニュースにめっちゃ批判されるやん」と書き込んだのも、そういう思いがあったのですか?
「こういうことを言うと、すごく“計算している女”みたいになっちゃうんですけれど(笑)。自分のルックスを見た時に、めちゃめちゃかわいいわけじゃない。普通に親しみやすい顔だなって。かわいいアスリートだったら、普通の発言をしていれば、注目も人気も上がると思うんです。でも、私くらいの感じだと普通の発言をしたら、かわいい子には負けちゃう。それで、どうしたら影響を与えられるのかと考えた時に、変なことを言う選手はいないので、少しおかしなことでも言ったほうがいいんじゃないかなって。そのほうが自分らしさを発揮できるんじゃないかなと」
20歳で迎える東京オリンピックへの思い
伊藤美誠、石川佳純などのライバル選手と比べても、平野は独特の存在感を醸し出している。ジュニアの頃から切磋琢磨してきた仲間について「ずっとライバルという感じ。だからって、めちゃめちゃピリピリしてるわけでもないですよ」と笑いながら話す。ライバルは力強い味方に変わる。東京オリンピックのシングルス代表の座は伊藤と石川に明け渡したが、その2人とともに平野は団体戦の代表選手に選ばれたのだ。
――4年前のリオ五輪の代表に選ばれなかった悔しさもあるのでは?
「リオのあとは、『次は絶対に出たい』という気持ちがすごく強くなりました。4年に一度のために、みんな毎日がんばっているんだなとすごい思いましたから。卓球選手にとっては、オリンピックは一番特別な大会だと思います」
――その一番特別なオリンピックに向けて、最後にメッセージを。
「これからの半年間を濃い時間にすれば、自信を持って戦えます。1日1日を大事にしながら成長して、東京オリンピックに進化した姿で臨めるようにしたいと思います」
■平野美宇(ひらの・みう)
2000年4月14日生まれ(19歳)。山梨県中央市出身。3歳から卓球を始め、「第2の福原愛ちゃん」と呼ばれ一躍有名に。また、伊藤美誠との女子ダブルスでは「みうみま」ペアで活躍。2016年のリオデジャネイロ五輪は練習相手などのサポート役として同行。代表落選の悔しさをバネに10月には史上最年少の16歳でW杯を制覇。2017年1月には全日本選手権で石川佳純を破り、史上最年少優勝。4月のアジア選手権では中国勢を次々と撃破して、日本人選手として21年ぶりに優勝。6月の世界選手権でも48年ぶりのメダル獲得を果たした。2020年1月、東京オリンピック卓球女子団体の代表選手に内定したことが発表され、初のオリンピック出場を決めた。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】