実子への強姦事件、父親に逆転有罪判決 フラワーデモきっかけの一件
【追記】↓判決の詳細記事を12月22日に公開しました。
高裁が被害者の証言に「高度の信用性」を認めた理由ー12歳実子への強姦、父親に逆転有罪判決
12月21日、東京高等裁判所の近藤宏子裁判長は一審を破棄し、懲役7年の判決を言い渡した。
当時12歳の実子に父親が性的虐待を行ったとして強姦罪に問われたが、一審の静岡地裁で無罪判決となった事件。2019年3月に相次いだ、他の3件の性犯罪無罪判決とともに注目されていた。これらの事件をきっかけに同年4月からフラワーデモが始まり、全国に広がった。公判は、新型コロナウイルス感染症の影響で審理が延期となるなど遅れが出ていた。
実子は、当時入所していた児童相談所の職員に被害開示し、小学校5年生の冬頃から頻繁に性虐待に遭っていたと証言していた。
強姦と児童買春・児童ポルノ禁止法違反の罪に問われた父親に対し、一審の静岡地裁・伊東顕裁判長は、実子の証言は全体として相応に具体的な内容と評価する一方で、被害の頻度や曜日について変遷があるとし、「被害者の証言は信用できない」「家族がひとりも被害者の声に気付かなかったというのはあまりにも不自然、不合理」などとして強姦罪を無罪とした上で、児童買春・児童ポルノ禁止法違反について罰金10万円を言い渡していた。
高裁では、検察側が実子Aさんの身体にできた傷について性的虐待によるものだと主張。写真鑑定をした鑑定医が、数年にわたる性虐待があったと思われると証言した。
一方で弁護側の証人となった別の鑑定医は、相当の傷があることは認められるものの、性的虐待によるものとは断定できないと証言。
この他、軽度知的障害や自閉症のあったAさんの精神科主治医が出廷し、「(Aさんは)頻度や曜日についてうまく話すのは苦手」「(Aさんの証言は)作為的とは考えられない」などと証言していた。
弁護側は身体鑑定の写真は一審判決後に撮影されたもので証拠としての価値がないなど、一貫して無罪を主張していた。
判決で近藤裁判長は、一審は被害者の証言を過小評価し、これを減殺する事情を過大に評価しており不合理とし、量刑の理由について、犯行は常習性が認められ卑劣で悪質、反省も認められず責任は重いなどと述べた。
2019年3月に相次いだ4件の性犯罪のうち、検察が控訴を断念した1件以外は高裁で逆転判決となった。
【事件をめぐる経緯】
2017年6月16日頃 被害があったとされる日。その1週間ほど後に、Aさんが当時入所していた児童相談所で職員に被害があったと訴えた。
2018年2月14日 起訴
2019年3月28日 静岡地裁で無罪判決
2020年12月21日 東京高裁で逆転有罪
【2019年3月に相次いだ性犯罪の無罪判決】
3月12日 社会人サークルでの準強姦事件(福岡地裁久留米支部)
…2020年2月5日に福岡高裁で懲役4年の実刑判決。上告中。
3月19日 路上での声かけによる強制性交致傷事件(静岡地裁浜松支部)
…検察が控訴を断念し無罪確定。※裁判員裁判
3月26日 19歳実子への準強制性交等事件(名古屋地裁岡崎支部)
…2020年3月12日に名古屋高裁で懲役10年の実刑判決。上告が棄却され確定。
3月28日 12歳実子への強姦事件(静岡地裁)
…2020年12月21日に東京高裁で懲役7年の実刑判決。