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日本代表、アジアカップ初戦で再認識したカタールW杯以降の成長点

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 アジアカップ初戦、対ベトナム戦の日本は、いいのか悪いのか評価の難しいサッカーをした。多数派はその4-2の勝利を苦戦とする声だ。トルシエ・マジックに原因ありと、現ベトナム監督=元日本代表監督を持ち上げた。しかしベトナムのサッカーは本当によかったのか。

 日本とベトナムは、2019年アジアカップ準々決勝で1-0、2022年カタールW杯アジア最終予選では、アウェー戦1-0、ホーム戦1-1と過去3戦、スコア的に僅差の争いをしている。特に2022年3月に対戦した最後の試合は、消化試合だったとはいえ苦戦を認めないわけにいかない内容だった。急速に向上したベトナムの選手の個人技に、手を焼いたものだ。

 今回、2点奪われたことは確かにショッキングな出来事で、確かにベトナム選手の個人技量を持て余す瞬間はあった。しかし日本は前半のうちにリードを奪うと勝利を動かぬものとした。その時点で日本は苦戦に終わりを告げた。ベトナムの後半の戦いぶりに特段、怖さを抱くことはなかった。

 前半に許した2ゴールもセットプレーで、流れの中から崩されたわけではない。反省する必要はあるが、出会い頭の事故として処理することもできる。やられた感はない。むしろ過去3戦より安心してみていられた。トルシエ・サッカーに深刻なダメージを与えられたわけではないのだ。

 トルシエと言えば、5バックになりやすい3バックを専売特許とする監督で、ベトナム監督としても相手ボール時には5バックで構える3-4-2-1で臨んできた。

 引いて守る相手をどう崩すか。これこそが日本に課せられたテーマだった。

 前半10分、日本はその鉄則通りサイドを突いた。左ウイング中村敬斗とのコンビネーションで大外を走った左サイドバック(SB)伊藤洋輝は、相手の右ウイングバックの裏を走った。ライン際からの折り返しは相手に跳ね返されたが、南野拓実の先制弾は、その産物として得た伊東純也が蹴ったCKから生まれた。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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