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コメよりもミサイル! 北朝鮮のミサイル開発費用は一体いくら?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
ミサイルなど最新兵器が展示された国防発展展覧会(労働新聞から)

 金正恩(キム・ジョンウン)政権は今年上半期(6月5日時点)でミサイル発射を17回(33発)も行っている。その費用、資金は半端な額ではない。

 北朝鮮の国内総生産(GDP)は300~400億ドルと推定されているが、国防費は年間およそ50億ドル(世界軍事力ランキング2022年によると75億ドル)が計上されてきた。韓国の国防費457億ドル、日本の防衛費491億ドル(世界軍事力ランキング2022年版)に比べるとはるかに規模が少ないが、近年は核とミサイル開発につぎ込んできた。

 韓国国防部によれば、金正恩総書記が執権した2011年12月から2017年7月まで北朝鮮は弾道ミサイルだけで31発発射していたが、その費用は9700万ドルと推定されていた。1発約312万ドルの勘定となる。

 米軍事専門家として知られているブルース・バネット・ランド研究所専任研究員が今年2月9日に米政府系放送「ボイスオブアメリカ」に明らかにしたデーターによると、短距離ミサイルの価格は300万ドル、「火星12型」のような中距離弾道ミサイルは1000万ドルから1500万ドル、大陸間弾道ミサイル(ICBM)は2000万ドルから3000万ドルと推定されていた。また潜水艦弾道ミサイル(SLBM)は韓国国家情報院によると、350万ドルから790万ドルと推定されている。

 今年上半期だけで北朝鮮が発射したミサイルは計33発。そのうち短距離ミサイルは21発である。1発300万ドルで計算すると、6300万ドルとなる。

 ICBMは6発なので1億2000万ドルから1億8000万ドル。さらに中距離弾道ミサイル「火星12型」を1発発射しているので1000万ドルから1500万ドルを消費したことになる。これだけで総額で1億9300万ドルから2億5800万ドルを海に捨てたことになる。

 これに極超音速ミサイル「火星8型」2発、長距離巡航ミサイル2発、ミニ「SLBM」1発を含めると、その額はさらに膨れ上がる。SLBMは500万~1000万ドル相当と見積もられているが、北朝鮮が開発し、試射したばかりのミニ「SLBM」の価格は不明である。

 ちなみに2020年末に公開された北朝鮮の武器密売の実態を暴露したドキュメント映画「The Mole(潜入)」によれば、北朝鮮が闇市場での武器取引で顧客に提示した短距離ミサイルの価格は5発で1400万ドルだった。

 ミサイル発射に連動して核実験の可能性が取り沙汰されているが、韓国情報当局では1回の核実験に3億ドルの資金が投じられているとみている。核実験にかかる費用が3億ドルならば、金正恩政権下ですでに2013年に1度、2016年に1度、2017年に2度の計4度実施されているので約12億ドルをつぎ込んだ計算になる。

 核・ミサイルとは別途に北朝鮮は西側が長距離弾道ミサイルの発射とみなしている「人工衛星」を開発し、発射実験を繰り返しているが、韓国情報当局は打ち上げに失敗した2012年4月の「衛星」について8億5000万ドルの資金が投じられたと発表していた。

 北朝鮮はこの年の12月に「衛星」を再発射しているので、2012年だけで17億ドルも人工衛星の発射に使われていた。北朝鮮は2016年2月にも発射しているので、「衛星」発射だけで25億5000万ドルの資金が投じられていたことになる。この他にも東倉里発射基地建設費に3億8000万ドル(4832億ウォン)の費用が投じられている。

 北朝鮮ミサイルの開発・製造費用はいずれも市場経済の西側の相場に基づくもので、社会主義体制下の北朝鮮の場合は、人件費や土地・建物建設費用はタダ同然で、例えば「衛星」発射には実際には5000万ドルから6000万ドルしかかかっていないのではと、ロシアの科学アカデミー宇宙研究所では分析しているようだが、どちらにせよ少なくとも1億ドルの資金があれば、食糧不足に瀕している全国民(約2580万人)が1~2か月は食べられるだけのトウモロコシは購入できる。

 ちなみに、金正日(キム・ジョンイル)政権時代の2000年に北朝鮮はミサイルの問題でクリントン政権と交渉した際、ミサイル開発を中止する条件として3年間で30億ドルの支援を要求し、人工衛星については「米国が代わりに打ち上げてくれれば、発射しない」との条件を提示していた。

(参考資料:北朝鮮は米国のレッドラインを越えるか?北朝鮮が保有する主なミサイル 短距離からICBMまで)

(参考資料:刻々と迫る北朝鮮の7回目の核実験  過去6回(2006年~2017年)の核実験を検証する!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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