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プラスチックごみが島のように太平洋に浮かぶ「7&8番目の大陸」。EUでプラスチック規制に進展

今井佐緒里欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者
魚の形をしたプラスチック容器ごみ。タイの浜辺に打ち上げられた。何があったのだろう(写真:ロイター/アフロ)

「7番目の大陸」という表現をご存知だろうか。海中でプラスチックが粒子化したゴミが自然と集まってスープ状になっている、大陸のように広大な集積体のことだ。

北太平洋には米国の3分の1の大きさの「大陸」がある。

「7番目」とは、ユーラシア大陸・アフリカ大陸・北アメリカ大陸・南アメリカ大陸・オーストラリア大陸・南極大陸の6つの陸の次に来るという意味である。

「8番目の大陸」もある。こちらは太平洋の北東にある。

このマイクロ(極小)プラスチックごみの集積体は、1997年北太平洋で、太平洋横断ヨットレース開催中に偶然にみつけられたのが最初である。この話を聞き、現場に赴き存在を確認したフランス人探検家パトリック・デイクソンは、精力的に海洋保護のために活動した。

現在では、世界の大洋には主に4カ所「大陸」があることがわかっている。

国連による制作ビデオ。死んだ鳥のお腹にはプラスチックごみの固まりがある。

今年、ニューヨーク州立大学フリードニア校の研究によって、11の主要な国際ブランドのペットボトル入り飲料水の93 %に、マイクロプラスチックと呼ばれる微小な粒子が含まれていることが発表された。

参照記事(ニューズウイーク日本版):ペットボトル入りミネラルウォーターの9割にプラスチック粒子が

水や魚を通して、極小プラスチックごみは、既に私達の体内に入っているのに違いない。

2016年のダボス会議では、2050年までに海洋中に存在するプラスチックの量が、魚の量を超過するとの試算が報告された(重量ベース)。

世界に先んじて規制が進む欧州

海洋汚染が広がるなか、欧州連合(EU)のプラスチックのごみ対策は、世界をリードするものとなっている。

12月19日、欧州委員会は、欧州議会の交渉官や加盟国との話し合いで、ストロー、フォークやスプーンなどの食器類、綿棒の柄、風船の持ち手といった使い捨てプラスチック製品や、発泡スチロールの容器を禁止する新しい規則にGOサインを出して、仮合意した。

これは、10月24日に欧州議会で圧倒的多数の賛成で可決した法案の、続きの手続きである。

これから2019年春までには承認手続きを終わらせ、2021年初頭には実施したいとしている。この法案によって、欧州の海岸を汚すごみが70%減るとされている。2029年までにペットボトルを90%回収することも盛り込んだ。海洋汚染対策に、大きく前進した。

毎年、EUだけで2500万トンのプラスチックのごみが出ている。カルメヌ・ベッラ欧州委員(環境・海洋・漁業EU大臣)は、今回の合意を受けて、「使い捨てプラスチックを経済から、海から、究極的には体内から減らす方向へ大きな一歩を踏み出した」と歓迎したという。

日本はどうなっているのか。

環境省の海洋ごみの実態把握調査(マイクロプラスチックの調査)によると、調査対象となった日本周辺海域(東アジア)の場所では、北太平洋の16倍、世界の海の27倍のマイクロプラスチック(個数)が存在したという。これらの日本周辺海域の場所は、マイクロプラスチックのホットスポットであると言える、と報告は伝えている。

既にプラスチック袋が禁止のフランス

フランスでは既に、2016年7月から、レジでのビニール袋配布の禁止が始まっている。以前は日本と同じで、大手スーパーでは有料でビニール袋を買える所がほとんどだったが、今は消滅した。ただし、生物分解可能な成分が50%以上の物ならば許可される。

もともとは、2015年には欧州議会で、1回のみ使用のビニール袋を、段階的に廃止することが議決されたことから始まっている。これを受けてフランスはビニール袋禁止を法制化したのである。イタリアと並んで世界の先陣を切る国となった。

同国では、プラスチックのコップだけで年間47億3000万個がゴミとなっている。これは1秒に150個捨てているという。たった1国、しかもコップだけでこれだ。いかに恐ろしいスピードでプラスチックごみの汚染が広がっているか、想像がつく。

激変したライフスタイル。卵を手に持って帰宅

スーパーのビニール袋がなくなり、生活スタイルは劇的に変化した。

筆者の生活はいまどうなっているのか紹介しよう。

良く行くスーパーではレジで、小さめの紙袋と、直径約60センチの大きい横長の物が2種類売っている。2種類とは、生物分解可能な成分でリサイクル可のビニール袋と、かばんのように丈夫な物だ。また、マイバッグもレジ近くで売られている。こちらは200円くらいと安い上に、デザインが豊富でおしゃれだ。

レジの下に売られている横長の袋
レジの下に売られている横長の袋

紙袋は小さめだし、強度が心配なので買ったことがない。数点の買い物なら、かばんに詰め込む。牛乳や卵パックを手に持って帰宅したこともある。そんな人はあちこちに見られるようになった。さすがに先日、鶏肉のパックを二つ手に持ってバスに乗っていた男性がいたのは驚いた。近くの女性が笑いながら話しかけていた。

横長の袋は大きすぎて、筆者には不便だ(縦長の大きいものを売っているスーパーもある)。こうして、常にマイバッグをかばんの中に入れるのが習慣となった。

まとめ買いが格段に増えたが、「スーパーの会員になると、××ユーロ以上お買い上げで宅配無料」というサービスが普及しているので、困らない。

不便なのは、ゴミ用のビニール袋が激減したこと。特に困るのが水分を含む生ゴミだ。食べ終わったパンやお菓子の袋、届いた郵便の封筒などを大事に活用している。今までならゴミ箱直行だったものを、とっておいて大切に使う。意外になんとかなるものである。

日本に帰ると、あちこちでビニール袋のゴミが捨てられていて、時には道路で風に舞っていて、スーパーに行くと嫌というほど無料でくれて(温かいものと冷たいものとか、やたらに分けてたくさんくれるのがサービスだと思っている)、「がさがさがさがさと、なんてあちこちでビニールの音がうるさい国だ!」と思うようになった。

日本も急いで法制化を

日本でも、すかいらーくホールディングスが、2020年までに国内、海外の全店舗でプラスチック製ストローを廃止することを目標にすると発表するなど、少しずつ変化が始まっている。

でも、まだまだ遅れていると言わざるをえない。日本も一刻もはやく法整備をするべきだと思う。

欧州/EU・国際関係の研究者、ジャーナリスト、編集者

フランス・パリ在住。追求するテーマは異文明の出会い、平等と自由。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使のインタビュー記事も担当(〜18年)。編著「ニッポンの評判 世界17カ国レポート」新潮社、欧州の章編著「世界で広がる脱原発」宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省機関の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

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