東北楽天ゴールデンイーグルス・岡島豪郎選手は新背番号4番で、出塁率4割を目指す!
■脱 真面目宣言
「ボク、いいかげんになります」。春季キャンプを前に、東北楽天ゴールデンイーグルス・岡島豪郎選手が“脱 真面目宣言”をした。「いい意味でいいかげんに、考えすぎないようにしようと」。元来が真面目な性格だ。こと野球のことになると、突き詰めて考えてしまう。
そこで現状を打破しようと、たどり着いた結論が「いいかげんになる」ことだった。そんな岡島選手の今季に懸ける意気込みを聞いた。
■自分の型に嵌めすぎてしまった
滑り出しから好調だった昨シーズン。1月の自主トレで「この時期にこれだけ打てるのは、過去になかった」というくらいバットが振れた。そしてオープン戦の好調をそのままシーズンに持ち込み、5月までは首位打者争いを繰り広げた。4月に故障もあったがすぐに復帰し、その後もヒットを量産した。
その頃、こんなことを口にしていた。「バッティングフォームが固まった。悪くなったらそこに戻ればいい」。その当時は戻れると思っていたし、実際、戻ることができていた。体の調子も良かった。
しかし、そこに“落とし穴”があった。
「戻ることができなくなった。戻そうとはしていたけど、やっぱ、いうこときかなかったというのが事実かな」。それに気づいたのがオールスター前あたりだったという。「ヒットはちょこちょこ出ていたけど、『う〜ん』という感覚があって…」。結果は出ても、どこか納得いかないバッティングに気づき始めていた。「自分の型に、固定観念に嵌めすぎてしまっていた」。体は思うとおりには動いてくれなかった。
原因は、シーズン当初とは変わってきた体のコンディションだ。岡島選手自身は疲労を感じていなかったという。しかし「感じていなくても出ているというか。『疲れてんな、おまえ』って人に言われたりして、『いやぁ、そんなことないっすよ〜』って感じなんですけど、人から見たら疲れてんのかなぁって。ほんと自分では感じてはいなかったんだけど」。自覚はなくとも、ちょっとした動きに出ていたようだ。
7月の月間打率は1割台に落ち込み、最終的に・252の打率、・338の出塁率でシーズンを終えることとなった。
■体の変化に合わせてバリエーションを増やす
そこで考えた。「戻らないなら戻さなければいい」と。「体のコンディションは日によって違う。それを知って、その中で(その日の自分に)合う引き出しを探していければ」。決まった型に嵌めるのではなく、変幻自在に対応していくことが必要だと感じた。
そう気づいた後半は、様々なことを試した。「バットの角度にしてもタイミングの早さにしても、試すことはいくつでもあった。構える位置やステップ幅も。それを実戦でどう使っていけるか。この日はこれを引き出して…ってできるかというのが鍵になるかなって思う」。不調だった後半、苦しんだ中から探り出した様々な引き出し。今季はその中から、その日の自分に最適なものを使う。
「タイミングをほんのちょっと早くしてみるとか、そのちょっとが大事なんで」。つまり今後、「岡島豪郎のバッティング」のバリエーションが増えるということだ。143試合、日々変化する体の状態に対して、今季はフレキシブルに対応できるだろうと自分自身に期待している。
■いい意味で「適当に」「いいかげんに」やる
また、これまでの自分と向き合い、精神面でも新境地に達した。昨季は不調に陥ったとき、考えすぎてより深みに嵌ってしまった。「戻そう、戻そうとして『どうだったかな』ってビデオを見たりして。もちろんそれも重要なんですけど、それが悪い方に嵌っていってしまったっていうのがある」。ビデオを見ては、どうしたら戻せるのか、そればかり考えていた。
「考えすぎてダメになることも経験してわかった。そこを今年は気をつけたい」。生真面目に突き詰めすぎる。考えすぎる。必死になりすぎる。そんな自分をもっと解放してやることが大切だと気づいたのだ。
「いい意味で適当にやれれば。言葉は悪いけど、いいかげんにやるっていうかね。真剣に入りすぎてドツボに嵌るよりは『どうせ打てないんでしょ』みたいな感覚でやった方が、いいものが出るんじゃないかなっていう思いがある」。
もちろん真面目にやるし、考えるし、必死にやる。しかし「すぎない」ことが大切だと気づいたのだ。
■充実した二段階の自主トレ
今年の自主トレは1月前半を栃木で行った。基礎的なことを中心に反復練習に力を入れた。
その内容を尋ねると、左足に重心を乗せていくつかの動きを見せながら、「左足の軸でバランスをとりながら、間を作る。ためたものを逃がさないというイメージで…」と説明してくれようとしたが、「言葉で伝えるのは難しいっすね」と断念した。言葉では説明しづらいが、自身の体の感覚にはしっかりと刻み込まれている。
後半は京都市内に場所を移し、藤田一也選手の自主トレに加わった。会得した感覚を応用して、バッティングの技術練習に取り組んだ。
目を引いたのはティーバッティングだ。普通に打つ前に行っていたのが、グリップエンドでボールを打つ動きだ。打つというより、ボールにグリップエンドをぶつけているような感じだ。
これはバットを最短距離で出すこと、内から出すことをイメージするためだという。「あとは返すだけ。でもまぁ、なかなか内からは出ないんで。意識づけですよね」。軌道を体に染み込ませるよう、何度も何度も繰り返していた。このあと、バッティングをすると「ヘッドが走っているな、ボールが乗るな」と感覚が変わるそうだ。
「これも遊びの一つです。遊び心を持って、いっぱいいっぱいにならないようにね」。なんでも取り入れてみて、その中から取捨選択しているが、これは岡島選手に合ったようだ。
「いい方向にはきていると思う」と話す表情が明るいのは、かなりの手応えがあるからだろう。技術面で引き出しを増やし、精神面では「すぎない」ようにする。自身のやるべきことは明確だ。
■奥さんの存在
また、昨年結婚したことも、岡島選手を後押ししている。「笑顔がステキだなと思った」というのが結婚の決め手だったと明かし、「家のことを全部やってもらって、肉体的にも精神的にも楽になった」と、大きな支えになっているようだ。
家では「野球の話は一切しない」そうで、「一緒にいて楽」だという。
フィジカル、メンタル両方のサポートを任せられる生涯の伴侶を得て、より野球に打ち込める環境が整った。
■新背番号の「4」は出塁率4割の「4」
今年から背番号が27から4になった。「中学のときも27を着けていたんで27が好きっていうのはあったんですけど、球団から4があるよと。27と4、好きな方を選んでいいと言ってもらったんで『じゃあ、4番でよろしくお願いします』と。多少なりとも考えましたけど、野手だったら1桁は欲しい番号ではあるし、こうやって言ってもらえるのは素直に嬉しかったですね」。球団の期待の大きさが覗えるが、岡島選手自身も「心機一転です!」と、その期待にしっかりと応えていくつもりだ。
今季、目標に掲げる数字は「打率3割、出塁率4割」だ。「背番号4になったからね。出塁率4割は絶対!そういう意味も込めての4番!!」とさらに強調した。
今季のイーグルスは、変幻自在の「背番号4」が常に塁上を賑わせる。
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