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大麻についての冷静な議論と教育を #専門家のまとめ

園田寿甲南大学名誉教授、弁護士
(写真:イメージマート)

1960年代、脳は複雑に配線された電話交換機のような物理的機械だった。70年代に入って、脳神経細胞と神経伝達物質の仕組みが発見され、脳は深淵な化学装置となった。薬物もまた脳内の化学物質に作用して効果を発揮することが分かったが、大麻の長年にわたる汚名のため、その機能についての研究は停滞していた。しかし近年、大麻の精神作用についての知見が深まり、大麻が危険な薬物だという話のほとんどは、恐怖を煽るものであることも分かってきた。ただし、これは大麻がほうれん草のように無害であることを意味するものではない。

ココがポイント

大麻に関する最近の5つの発見、心臓病や脳卒中、依存症など「害」の証拠が続々
出典:ナショナル ジオグラフィック日本版 2025/1/6(月)

知念高校で薬物乱用防止教室開催
出典:沖縄ニュースQAB 2025/1/3(金)

大麻含む液体所持・譲渡したなどの疑いで5人逮捕…友人や趣味仲間で広まったか
出典:Daiichi-TV(静岡第一テレビ) 2024/12/27(金)

エキスパートの補足・見解

最初の記事に書かれていることが科学的に信頼できるものであっても、大麻を単独で問題にすることはまったく意味がない。重要なことは、医薬品はもとより、違法薬物から合法薬物まで、われわれに影響を及ぼす薬物を総合的に比較した相対的なリスク評価である。その上で、薬物使用のリスクを若者に十分に理解させ、かれら自身が自らを守るために、そのリスクを最小限に抑えるための教育をできるだけ早いうちから行なうべきである。

しかし残念なことに社会は、大麻使用を厳しく処罰することが、若者を大麻の誘惑から遠ざけ、使用した者を立ち直らせることができると信じている。こうして、毎年数千人の若者が大麻で逮捕され、烙印を押されているが、大麻のリスクを合法なアルコールやタバコと較べると、このことは理にかなったことではない。

日本の薬物政策は、処罰も治療の一部であるという懲罰的アプローチに固執しており、その一環である薬物教育もまた厳罰主義的で道徳的な法執行の強化につながっている。懸念することは、それが教育というよりも、恐怖や偏見を強調して若者を大麻から遠ざけようとする抑圧的、威圧的な洗脳に近いものとなっていないかである。(了)

甲南大学名誉教授、弁護士

1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。

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