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時間と費用を投じた効果の強い法禁物が利益率を高める(禁止の鉄則) #大麻重罰化#大麻栽培 #専門家のまとめ

園田寿甲南大学名誉教授、弁護士
写真は記事とは直接関係ありません。(写真:イメージマート)

大麻に含まれている数百種類の化学物質のうちで、陶酔感や多幸感をもたらすのがTHCである。また、近年CBDに医療効果が認められたが、拮抗薬のようにTHCの副作用を制御することも分かっている。THCとCBDがバランス良く混合された大麻が安全で良質だといわれている。

日本で摘発された大麻がどのような種類かは分からないが、海外で問題になっているのは2つの系統のハイブリッドで、THCの含有量が非常に高く、CBDをほとんど含まない危険な品種である。なぜ、そのようなことが起こっているのか。

ココがポイント

“組織的に”大麻栽培か 1億750万円相当…会社役員ら逮捕 茨城でなぜ?(テレビ朝日系(ANN))
出典:テレビ朝日系(ANN) 2024/12/17(火)

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出典:中京テレビNEWS 2024/12/12(木)

大麻栽培疑い、福岡県臨時職員ら2人を再逮捕 神埼市内のマンションの一室で栽培か(佐賀新聞)
出典:佐賀新聞 2024/12/12(木)

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出典:FNNプライムオンライン 2024/12/7(土)

エキスパートの補足・見解

大麻に関する典型的な違法ビジネスモデルは、マンションやアパートなどの一室で、太陽光を遮断し、高出力の紫外線ライトを照射し、高温で雌株のみを水耕栽培するものである。大麻は異種間の交配が容易であり、こうすればCBDの量を抑えてTHCを大幅に増やすことが可能なのである。

つまり法禁物である大麻は、ちょうどアメリカ禁酒法時代のアルコールと同じような軌跡をたどっているのである。禁酒法時代に少ない量でより強く酔えるハードで粗悪な蒸留酒が好まれたように、禁止によって大麻がより強力になっていったのである。

法禁物の製造に、時間と費用を投じた効果の強い商品が利益率を高めるのは、「禁止の鉄則」と呼ばれる経済法則である。禁止の度合いを強めれば強めるほど、大麻もより強力にかつ危険なものに変質していく。

圧倒的大多数の国民は、大麻の非犯罪化(禁止ではなく規制)は論外だと思うだろうが、大麻の望ましくない副作用のほとんどは、大麻が非合法市場で入手されているという事実から生じている。薬物に対する国による強力な品質管理こそが、成分のバランスが取れた安全で良質の大麻を提供することができるのである。(了)

甲南大学名誉教授、弁護士

1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。

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