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ハーランドの“移籍先”はどうなる?レアル、バルサ、シティ...稀代のストライカーの去就問題。

森田泰史スポーツライター
ドルトムントでプレーするハーランド(写真:ロイター/アフロ)

誰もが、彼の獲得を望んでいる。

欧州では、2022年冬の移籍市場がすでに閉まっている。だが依然としてアーリング・ハーランド(ボルシア・ドルトムント)の周囲は騒がしい。次の夏に向けて、複数クラブが水面下ですでに動き始めている。

リヴァプールのルイス・ディアス
リヴァプールのルイス・ディアス写真:ロイター/アフロ

この冬のマーケットにおいては、各クラブの財政に回復の兆しが見えた。ルイス・ディアス(リヴァプール/移籍金4500万ユーロ/約58億円)、ブルーノ・ギマラライス(ニューカッスル/移籍金4200万ユーロ/約54億円)、フェラン・トーレス(バルセロナ/移籍金5500万ユーロ/約67億円)と高額な移籍金で選手の移籍が成立している。

例えばプレミアリーグでは、3億3500万ユーロ(約435億円)が補強に投じられた。これは昨年冬の補強費(9675万ユーロ/約125億円)に比べて、およそ3倍だ。2019年に襲来したパンデミックの影響で、多くのクラブの財政が悪化していた。そこから持ち直してきたというのが、数字に表れている。

■ビッグディールの成立

なかでも、注目を集めたのがドゥシャン・ヴラホビッチの移籍だ。

ヴラホビッチは移籍金7000万ユーロ(約91億円)でフィオレンティーナからユヴェントスに移籍。ロベルト・バッジョ、フェデリコ・キエーザと同じように、フィオレンティーナからビッグクラブへの移籍を決断した。

高額な移籍金でユヴェントスに加入したヴラホビッチだが、特筆すべきは彼の決定力だ。2021年を通じて、公式戦43試合で33得点をマーク。カリム・ベンゼマ(38試合30得点)、クリスティアーノ・ロナウド(39試合25得点)、リオネル・メッシ(32試合24得点)、キリアン・エムバペ(35試合24得点)以上にゴールを量産した。

「ゴールにお金が生まれる」というのは、近年の傾向からして間違いない。ゆえに、次のターゲットとしてハーランドをビッグクラブがこぞって狙っているのだ。

ユヴェントスに移籍したヴラホビッチ
ユヴェントスに移籍したヴラホビッチ写真:ロイター/アフロ

ハーランドのプレミアリーグ移籍の可能性で言えば、獲得に近いのはマンチェスター・ユナイテッドやマンチェスター・シティだろう。

ユナイテッドは今季途中にラルフ・ラングニックが監督に就任。ラングニックは、ザルツブルクでスポーツディレクターを務めていた当時、ハーランドをモルデからザルツブルクに移籍させた人物だ。その頃からハーランドの父親アルフ・インジェ氏とラングニックの関係は良好で、それが移籍にプラスに働くと見られている。

シティは今夏、ハリー・ケイン(トッテナム)の獲得を逃した。純粋な9番の選手がガブリエウ・ジェズスのみとなっており、密かにハーランド獲得を狙っている。ゼロトップを好んで使うペップ・グアルディオラ監督だが、最近ではフットボール・ダイレクターのチキ・べギリスタインがミーノ・ライオラ代理人と接触したことが報じられた。

パリSGは、エムバペの去就が定かではない。今季終了時に契約満了を迎えるエムバペは、契約延長にサインしておらず、マドリー移籍の可能性が取り沙汰されている。エムバペの後釜に、ナセル・アル・ケライフィ会長はハーランドを確保する考えだとされる。

■スペイン2強の思惑

また、スペインでは、「2強」がハーランドに関心を寄せている。

バルセロナはストライカーを探している。この夏、フリートランスファーでメンフィス・デパイを獲得。今冬の移籍市場では、アルバロ・モラタ(ユヴェントス)の獲得が検討されていた。モラタの獲得に至らなかったものの、最終的にはアーセナルと契約解除を行ったピエール=エメリク・オーバメヤンが加入した。

マドリーは、トップターゲットをエムバペにしている。エムバペとハーランドの“両獲り“の可能性があるが、問題になるのはサラリーだ。ガレス・ベイル、イスコ、マルセロと今季限りで契約が満了する高年俸の選手を放出するとしても、ハーランドの年俸を負担できるかは確かではない。

2023年夏までドルトムントに残留して欲しいというのがフロレンティーノ・ペレス会長の本音だろう。とはいえ、かつて「絶対に獲得しない」と公言していたデイビッド・ベッカムを、あっさりと前言撤回して獲得したペレス会長である。ハーランド獲得についても、何が起きても不思議ではない。

バルセロナとマドリーの一戦
バルセロナとマドリーの一戦写真:ロイター/アフロ

「ハーランドに関しては、内部で話が進められている。全員が誠実に対応している。彼と移籍について毎日話す必要はない」

「私は日々ハーランドと会話しているよ。選手として、人として、彼に愛情を抱いているからね。彼の契約期間は把握している。決断の時は来る。ハーランドはどこかのタイミングで決断を下す。その時、クラブには準備ができているはずだ」

こう語ったのは、ドルトムントのマルコ・ローゼ監督だ。

ローゼ監督とハーランド
ローゼ監督とハーランド写真:ロイター/アフロ

ハーランドの契約解除金は7500万ユーロ(約97億円)に設定されている。今冬の移籍市場では、ライオラ代理人の健康状態が悪く、その影響もあったと言えるだろう。

この度のマーケットで、5大リーグで最も補強費を費やしたトップ5はニューカッスル、ユヴェントス、バルセロナ、リヴァプール、エヴァートンだった。

バルセロナを除けば、ハーランドに関心を寄せるクラブは“貯金”に努めていた。次の夏に大金が動いてハーランドの移籍が成立する可能性は高まっている。

スポーツライター

執筆業、通訳、解説。東京生まれ。スペイン在住歴10年。2007年に21歳で単身で渡西して、バルセロナを拠点に現地のフットボールを堪能。2011年から執筆業を開始すると同時に活動場所をスペイン北部に移す。2018年に完全帰国。日本有数のラ・リーガ分析と解説に定評。過去・現在の投稿媒体/出演メディアは『DAZN』『U-NEXT』『WOWOW』『J SPORTS』『エルゴラッソ』『Goal.com』『ワールドサッカーキング』『サッカー批評』『フットボリスタ』『J-WAVE』『Foot! MARTES』等。2020年ラ・リーガのセミナー司会。

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