手が洗えない...大干ばつの南米チリに「新型コロナウイルス」の脅威
新型コロナウイルスの感染予防で、手洗い、うがいの重要性が指摘されています。筆者自身も、指の間や手首まで念入りに洗う習慣に徐々に馴れてきました。
しかし考えてみれば、手が洗えるのも水があるからこそ。
記録的な干ばつにあえぐ南米チリでは、ウィルスが拡大を続けている中でも、手洗いが十分にできないという問題が生じています。
チリにおける新型コロナウイルスの現状
日本時間9日(木)現在の、チリにおける新型コロナウイルスの感染者は5,546人、死者数は48人に上っています(米ジョンズ・ホプキンズ大学調べ)。
チリ政府は国家非常事態宣言を発令するとともに、手洗いの徹底を指示しています。
チリ中部の水不足の程度
しかし干ばつにあえぐチリ中部では、手を洗うための十分な水がありません。
伝えられるところによると、40万世帯の150万人が、給水車から供給される1日50リットル以下の水で生活をしているそうです。
日本人が一日に必要とする水の量は、200~300リットルですから、その4分の1から6分の1の量にあたります。
水を1分間流しっぱなしにして手を洗った場合、1回で12リットルもの水が使われてしまうようです。たとえば手洗いの前後に合計10秒だけ水を使うとしても、2リットルになります。
トイレもシャワーも料理も、とにかく人が生きていくためには水が必要ですから、1日50リットルの水だけでは、手洗いなどに回すことなどできないということが容易に想像できるでしょう。
60年来の干ばつ
水不足の直接の原因は、「メガドラウト(Mega Drought)」と呼ばれる、ここ60年で最悪の大干ばつがあります。
上のグラフは、2010年から2019年までの首都サンチアゴの年間降水量を表しています。いずれの年も平年値を下回っており、特に2019年に関しては、例年の4分の1しか雨が降っていません。
「これは干ばつではなく、泥棒だ」
少雨であることに加え、水が民営化されていることもまた、被害を大きくしている原因です。
干ばつの起きているチリ中部では、水は民営化されており、民間企業が水の権利を取得しているそうです。
水の使い道は、この地域の特産であるアボカド栽培。先にも書いたように、住民は1日50リットルの水で生活していますが、アボカドの木は、それよりも多い66リットルの水を必要とするといいます。
住民は、貴重な水が人々の健康や命を守るためよりも、一部企業の利益のために使われていると、怒りを露わにしています。「これは干ばつではなく、泥棒だ。」という声も上がっているのです。